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10話「ヘイムの問答 後編」

*1

 メノスは原初神。強力な無効化と異次元の強さを持っている。オリジンとは別格の存在。

 一般人が勝てるなんてありえない。一矢報いることぐらいで精一杯か。



「どうだ?」


「……勝てません」


「だろうな」


「……それでも!」


「?」


「それでも、それでも……母さんを殺したあの神を許せませんッ!」


「……」



 歯を噛み締めながら私はヘイムに伝えた。私はどうしても許せない。たとえ母さんが悪人であろうとせめて、せめて、せめて一撃をメノスにくわえたい……。



「……お前に渡したいものがある。倉庫だ、ついてこい」



*2

 私はヘイムについていく。歩いて数分後、大きい倉庫が見えた。ヘイムは暗証番号を打つ。



「ここはどうやって発電を……」


「太陽光だ。それも自家製だ」



 扉を開き中にあったのは大量の武器だった。銃、剣、槍、爪、杖とたくさんの武器が置いてあった。



「お前、得意武器は?」


「杖?」


「……本当か?」



 え、私は魔法使いだから魔法をこなせるから魔力を強くするために杖を使っているから。



「杖を見せてみろ」


「ええ」



 私は白い杖「百合の華」をヘイムに渡した。ヘイムは細部を見渡した。



「……お前は接近戦は得意か?」


「ええ……」


「刀か? 剣か?」


「刀」


「……この杖は刀とかになるか?」


「いえ……」



 まさか、杖を刀にするの? 確かにそういう魔法使いは見たことがある。

 用途に応じて形を変えて戦う。適材適所と言わんばかりの戦い方をするらしい。

 特に剣、杖の他に短剣、銃、槍と幅広い変更が可能な杖も存在する。



「時間を借りる。いい武器にし直してやる」



 ヘイムは私の杖を持って倉庫の奥へと向かった。



*3

 ヘイムが奥に入ってから1時間経過した後、私の杖を持って帰ってきた。表情は普通だった。



「持ってみろ」



 私は杖を持った。



「心のなかで“刀”と思え」



 刀……! 杖が白く光り変化した。杖が白い刀となった。



「お前が心のなかで思えば刀となるよう設定を変更した。刀、杖と思えばそうなる。

 ただし、形になるのは“刀”、“杖”の2つだ」



 強調して言わなくてもいいのに……。でも、これで接近戦も簡単におこなえる。いくら打撃に転用可能な武器とは言え斬撃に比べたら斬撃の方が強い。



「ありがとうございます!」



 こんな心強い武器をくれるなんて……。



「ああ。ついでにそいつの名は法則を斬る刀「法伐」。法則によって偽りの生命を作られた生物に対して有効だ。

 簡単に言えば法則を無効化にして法則生物を一刀で葬れることか」



 なるほど、法則生物に対して有効なんだ。

 法則生物は法則にそって生きている生物で何より法則に定められた命。しかも、法則に「人々に悪のある心ある限り永遠に不滅」みたいな法則をこの刀で振れば無効化させて殺すことが可能。

 なんとも心強い味方だ。



*4

 外に出てガラガラへ会おうとした向かった時だった。倉庫の前に老婆がいた。ヘイムの形相が一変した。



「げぇ! ジバのババア……」


「同じ世代のクセにババア扱いか。このジジイ」



 ヘイムは思わず口を閉じた。ここは私が言うしか無い。



「なにかようですか?」


「ああ、お前さんがどういう人間か見に来てね。まあ、見たところは悪人じゃないね」


「え、ええ」


「へへへ。まあ、ちゃんと良い子でよかったよ」



 ジバのおばあさんはそう言って笑った。



「……お前よかったな。ジバのババアの敵にならなくてな」


「どういうこと?」


「ババアを敵に回したら俺でも勝てない。ババアが若返ったらこっちの反応速度が追いつかない。

 時止める前に殺される。筋力どころか思考も若返っているから余計に速度が上昇しているしやばい。今の姿は生活しやすいようにしている。

 若い姿だと反応速度がすさまじいからああしてババアの姿になっているんだ。

 副団長をしているが、団長と名乗っていいほどの実力だ」



 私はジバのおばあさんに視線を合わせた。すると、ジバのおばあさんは左手に斧を持っていた。



「クソジジイ。それ以上、ババアというと頭かち割るぞ」


「……わかったよ副団長」


「ここでは副団長、ジバ、婆様ならいい。ババアっていうと頭をかち割りたくなる」



 そうとう厳しんだこの人。



「ユリカ」


「はい」


「ガラガラが家に前で待っているよ。ささ、行きなさい」


「ありがとうございます!」



 なんて怖くて優しい人なんだろ。ああやって怒るときには怒り、優しいときにちゃんと優しさを振りまくなんていい人だ。

 走っているとガラガラと会いガラガラとともに歩いた。



「ユリカ!」



 私は声を出したヘイムの方へ振り向いた。



「いい言葉を送ってやる。「出る杭は打たれる」があるならば……「ふりかかる火の粉は払うべし」。

 邪魔があるなら乗り越えろってことさ!」



 私はヘイムの言葉を受け止めて答えた。



「ありがとう! 受け止めておきます!!」



*5

「おーい、ユリカ!」



 ガラガラが荒野のまっただ中にいた。



「行くぞー!!」



 私は声を上げた。



「はーい!」



 私はガラガラと合流し歩いた。この先、何があるのかわからない。とりあえず歩くだけ。

 荒野を歩いていると遠くに誰かが立っていた。



「おい、嘘だろ?」



 ガラガラの顔から冷や汗を流した。どうしたんだろう? 私たちは歩いて近づくとそこに一人の男が立っていた。

 ガラガラと同じく黒い服を着ている。

 ガラガラはその人を見て青ざめた。



「てめぇ……」


「おやおや、相変わらず口が悪い。ダメでしょう、第一世代にそんなこと言ったら」



 ガラガラが震えている。どうしたんだろう。



「あ、名乗っていませんね。

 私は異常紳士のタバト――オリジンです」



 オリジン!? 今日はやけに会う……。



「やばい……気をつけろユリカ」



 ガラガラの挙動がおかしい。



「やれやれ、能力を知っている身内がいると困りますねえ。

 そうだ、私に提案があります」



 タバドが何か提案してきた。



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