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王子の婚約者

今書いてる作品が重い展開続きすぎたので補給するために書いた、私の好きを詰め込んだ作品です笑

 自国の王子と隣国のお姫様が婚約した。


 そう告げられたのは一ヶ月ほど前。

 とある国の伯爵令嬢、リーナ・エルヴァスティは自室で深くため息をつき、ベッドに寝転んだ。

 リーナがため息をついた理由にはとある噂が関係しており、その原因となった噂の内容はこうだ。

『隣国のお姫様は、100年間眠り続けていた。そのお姫様はたいへん素晴らしく美しいと言われており、たくさんの国の王子たちが彼女の姿を一目見ようと、その国を訪れた。だが、そのお姫様のいるお城はイバラで覆われており、誰も入ることができなかった。

だが1ヶ月ほど前、我が国の第一王子がその国のお城に訪れた。王子もまた中に入ろうとしたが入れず困っていると、イバラが突然開いたために王子はそこから中へ入り、塔の中の一つの小さな部屋を見つけ中に入った。その中にはベッドに横たわったとても美しい女性がいた。100年眠り続けるお姫様だった。

王子は吸い寄せられるようにキスをした。王子がキスをすると、お姫様は目を覚ました。

彼らは恋におち、お姫様と一緒に目覚めた王たちに祝福され、婚約をした』

 というもので、それを省略したものが最初の一文だった。


 まるで物語のような話だ、と始めて聞いたときに思った。実感が湧かなかったのだ。

 なぜならその噂の的になっている自国の第一王子である、セドリック・バルニエ。彼が彼女の婚約者だったためだ。

 セドリックと隣国のお姫様が婚約したと聞いたときは、まさかと思った。自分たちの婚約は解消されていなかったし、何も言わずに勝手に別の人と婚約ができるはずがないのだ。

 彼女は家に帰り、両親に問うた。


「セドリック様と隣国のお姫様が婚約をしたと聞いたのですが、本当なのでしょうか」


 リーナはそんなわけないだろう、と返されるだろうと思っていた。だが、両親の発した言葉はリーナの想像していたものとは違っていた。


「……本当は直前まで言うつもりはなかったのだけれど…その話は本当よ。陛下によると、隣国は自国よりもかなり大きくて、あちらから申し込まれた婚約だから断ることができなかったらしいのよ。

セドリック殿下にもご兄弟がおられるでしょう?だから他の方ではダメなのかと聞いたら、セドリック殿下でなければならないと言われてしまったらしくて……。

ごめんなさいね。本当はもっと早くに伝えるべきだったのでしょうけど、貴方とセドリック殿下の仲はとても良かったみたいだったから、なかなか話出せなくて…」


 リーナはその言葉を聞いて、固まってしまった。ありえないと、絶対にそうではないだろうと思っていたのだ。

 大丈夫だと一言告げると、リーナは自室へこもった。

 誰にも会いたくなかった。

 愛してやまない、セドリックにさえも。



 なぜ、なぜなの?

 愛していると言ってくれたじゃない。



 ベッドに倒れ込み、泣き続けた。

 リーナは深く、深くセドリックを愛していた。セドリックもまた、その気持ちに応えてくれていた。

 なのに彼は、彼女を裏切り、美しい姫君のもとへと行ってしまった。


 リーナは信じたくなかった。セドリックが別の女性を愛し、キスをしたことなど。

 だが、リーナとセドリックの婚約はもうなくなっている。セドリックは隣国の姫君と婚約を結んだ。

 その事実を両親から告げられたのだ。信じざるを得なかった。





 そして食事もあまり口を通らぬまま一ヶ月ほど経った今日、リーナは少し落ち着きを取り戻し、ベッドに寝転んでいたのだった。

 何もする気が起こらず、ただぼーっとしていたがこの一ヶ月ほどの間、ずっとそうしていたわけではない。

 勉学などに関してはもうすでにほとんど終わらせていたし、セドリックの婚約者ではなくなったのでその勉強もなくなりそちらの方には手をつけなかったが、あまりにも暇だったが故に、料理や掃除などに手を出していた。

 もともと幼い頃から興味はあったので、ちょうど良いと使用人たちに色々と教えてもらいながらしていたのだ。

 もちろん最初は全力で断られていたが、何度も必死でお願いし、許しをもらえたのだ。両親も好きにして良いと私を気遣ってか言ってくれている。

 それをしていた理由はすることがないという理由ももちろんだが、セドリックについて考えなくても良い時間が欲しかったという理由も大きい。何かをしていれば、他のことを考えずに済むと思い始めたものだが、とても良いものだった。

 この一ヶ月ほどの間で、料理や掃除などもかなり上手くなった。将来貴族から落とされ平民になっても生きていけるかもしれない、とリーナは思った。


 気がつくと外は暗くなっていて、就寝時間になっていた。お風呂やらお手入れやらをさっさと済ませると、リーナはベッドに入った。

 ベッドに入り温まっていると、セドリックの姿が頭をよぎった。


 会いたい、と思ってしまった。

 一度そう思ってしまえば、セドリックへの欲はたくさん出てきてしまい、最後に、セドリックはリーナの婚約者ではないのだから、もうそんなお願いはできないのだと思い出してしまう。

 泣きたくなった。

 全てのお願いを叶えてくれなくても良い。

 でも、せめて、一度で良いから会いたいと思った。


 泣きそうになり、布団の中で体を丸めていると、部屋の窓がコンコンとノックするような音が聞こえた。

 気のせいかと思いそのまま動かないでいると、もう一度コンコンとノックの音が聞こえた。

 鳥か何かかと思い窓を見ると、人影があった。夜の暗闇と月の逆光で姿ははっきりとしていない。

 でも、リーナはその人影が誰か、すぐにわかった。


「……セドリック様?」


「そうだよリーナ、夜遅くにごめんね。話をしに来たんだ」


 その声はたしかに、リーナが愛してやまないセドリックの声だった。

 もしかしたらセドリックを装った別人かもしれないと普通は疑うべきなのだが、リーナには、彼が王子であるという確信があったのだ。

 リーナは窓を開けて、セドリックを部屋の中へ入れた。


「……どうしてセドリック様がここにおられるのですか?だって、セドリック様は隣国の姫君と婚約をして、こんなところにいるはずじゃ…」


「婚約は破棄してきた。あと、僕はもう第一王子じゃない。この国に住む平民の1人だ」


 リーナは耳を疑った。セドリックが婚約を破棄して、王子ではなくなったと言うのだ。

 どういうことだろうと、頭が追いつかない。


「ごめんね、時間があまりないから丁寧に説明する時間がないんだ。簡単に言うとね、僕はさっき、陛下から僕の王位継承権を消してもらって平民にさせてもらったんだ。

隣国ってかなり大きい国だろう?なのにそのお姫様が、隣国のただの平民と結婚できるはずがない。だから僕は王籍から出たんだ」


「……なぜ」


 リーナは驚きで上手く出すことのできない声を絞りだし、一言問うた。


「僕がリーナを愛しているからだよ。リーナと結婚できないのなら、一緒にいられないのなら、王位でもなんでも捨ててやる。

僕が必要なのは、リーナだけなんだ」


 信じられないと首を何度も横に振った。

 リーナはセドリックが、王子として頑張ってきた姿をずっと見ていた。辛そうにしている姿も何度も目にした。

 そこまで頑張ってきたことを、私1人とのことで棒に振ってしまって良い訳がない。


「第一王子として無責任なことをしたっていうのは、よくわかってる。でも、それでも、僕はリーナがいないと生きている意味がないと思うほど、君を愛してる」


 セドリックは手を、リーナに差し出した。


「ねえリーナ、こんな僕だけど、僕は君にずっとそばにいて欲しい。たとえどんなに苦しいことがあっても僕はリーナさえいれば幸せだし、リーナが苦しいときは必ず守ると約束する」


「……王家に戻るつもりは、ないのですか」


「ないよ。もしあり得るとしたら、リーナとの婚約を戻してもらえるときだけかな」


 セドリックの言葉はきっぱりとしていて、もうはっきりと決まっていることのようだった。


「…ならば、私の答えは、ただ一つです」


 リーナはセドリックに差し出された手に、自分の手を重ねた。セドリックはその手を離すまいと、ギュッと握る。


「良いの?君はここを出れば、もう伯爵令嬢ではなく、ただの平民だ」


「当たり前です。それに、嫌だと言っても、セドリック様は手を離してくださらないでしょう?」


「そうだね」


 リーナとセドリックはお互いの顔を見つめ、ふっと笑った。

 聞きたいことは山ほどある。でも、これから一緒にいる時間はとても長いのだから、その間にゆっくり聞いていけばいい。とリーナは思った。


「愛していますわ、セドリック様。私も、貴方なしでは生きられないと思うほどに」


「僕もだよ、リーナ。愛してる」


 セドリックは嬉しそうにリーナに微笑みかけると、唇を重ねた。

読んでくださり、ありがとうございます‼︎

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