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最終話 本当は盛ったんじゃないの?

 ◇ ◇ ◇


 夢を見ていた。

 僕が世界を救う夢だ。

 書いたキャラクターたちと僕は一緒に旅をして、最後に魔邪王を倒して世界を救う。

 そして、この世界の本当の主人公に、僕はその体を返して、みんなが幸せになってハッピーエンドだ。

 その夢をノートに書いて、そしてそれは思春期を過ぎて、奥の方に仕舞った。 


 ふかふかのベッドの上で、ゆっくりと寝返りを打つ。

 あれ、僕がこの前買ったのって低反発のベッドマットじゃなかったっけ…?

 違うか、ふかふかのやつだったっけ? 寝返った先の掌に、ふかふかの感覚がある。知らない感覚だ。ふかふか…ふにゃふにゃ…ぷにぷに…?


「あんっ」

「んん…?」


 僕が目を覚ますと、そこにはユウナがいた。初めて会った時に着ていたベビードールを着たユウナが。そして、僕の掌はユウナの胸の上にあった。

 慌てて手を離す。


「!? ユッ、ユウナ!?」

「今度こそ、既成事実を作りに来ましたわ。今なら、みなさん寝静まっていますし…」 

 

 豪華な天蓋付きのベッドで、僕は装備を外されて眠っていたらしい。

 全部終わったのは夢か! 夢だったのか!! 夢落ちとかいまどき流行らないだろ…!!

 

「タカアキ様、サンダードラゴンの件を収めて国を救っていただいたお礼を、まだしていませんでしたわ…。わたくし、サント王国第一王女のユウナ・デ・サントーニュ・ベールが、今回の任務の報酬ですわ」

「」

「タカアキ様、わたくしとちぎりを交わしてこの国の王になってください。お爺様に言われたからではありませんわ。タカアキ様がわたくし達のためだけではなく、サンダードラゴンの為に戦い魔法を使う姿を見て、わたくし…あなたの事が好きになってしまったのです。わたくしは、心からタカアキ様の子どもが欲しいのです」

 

 ユウナは僕に抱き着いて、胸を押し付けてくる。

 潤んだ瞳で下から見上げられ、手は僕の腰に回されている。

 どうて、…僕にはこれはちょっと刺激がきつすぎる!

 リーン! おいリーン!! どこにいるんだ!! 邪魔しに来て!! おい! ツッコミ妖精!!


「皆さまは、隣の部屋でぐっすりと眠っていますわ。だって今日は…大変でしたものね…」

「ぼ、僕もほら…食堂で寝落ちしちゃって…、疲れてるから…」

「セバスが、男性は疲れている方がすごい、今日は絶好の子作り日和だと言っていましたわ」

 

 あの爺!! ほんっとにあの爺は!!

 そういえば、僕の席は最初から決まってたみたいな口ぶりだったな…? もしかして薬を……いや…まさかな…。

 

「タカアキ様…わたくしでは…あなたの妻には不満ですか…?」

「ひょえ?」


 ユウナの唇が、僕に近づいてくる。

 心臓の音が大きい。僕だけじゃない、ユウナも…緊張しているのだ。 


「あなたの望むような妻になります。ですからわたくしを…タカアキ様の…「だめー!!」


 大きな音を立てながら部屋のドアを壊して、入ってきたのは…ノワール!! 続いてイロハ! そして最後にめっちゃダルそうにリーン。

  

「アキ! まだ童貞!?」


 息()き切りながら、イロハは僕にそう尋ねる。

 確かにまだ童貞だけど、その聞き方はないと思う。


「良かった、リーンが私たちを起こしてくれなかったら、あやうくタカアキの体の童貞をユウナに奪われるところだったわ…」

 

 あ、いつもの通り僕の心配じゃなくてタカアキの体の心配ね…。

 ていうか、リーン起きてたなら返事してくれたっていいだろ!


「眠かったし、アキの声にびっくりしたしで…返事をするの忘れてたわ…。あと、誰がツッコミ妖精よ…」


 イロハがユウナにつかつかと詰め寄る。

 ノワールはすでに僕に後ろから抱き着いている。 


「ユウナ! 何を考えてるの! 一国の姫が!」

「一国の姫だからですわ! この国の王にふさわしい人に体を捧げることの何が悪いのですか?」

 

 んぐぐ、とイロハは口ごもる。


「タカアキ様には、サント王国の国王になってもらいたいのです。その為にできることはなんでもしますわ!」

「だめっ! だめったらだめ! タカアキはノワールの恋人になるんだから! ユウナにタカアキはあげないからね!!」

「ノワール、わたくしはなにも別にタカアキ様を独り占めしようとしているわけではないのですわ」

「えっ?」

「王に第二妃、第三妃がいるのはよくあること。とりあえず、わたくしと結婚して王になってから、お二人が第二妃第三妃として…」

「それって、一番はユウナってことでしょ!? ノワールが一番じゃなきゃやだ!」

「……なかなか鋭いですわね…?」


 そうこうしている内に、城を守っている衛兵…ではなく、セバスが到着する。

 ドアを壊したのだ、そりゃ誰か来るに決まってる。

  

「何の騒ぎですか? おや、また…失敗ですかな?」

「リーンに、タカアキ様が救助を要請していたみたいですわ」

「タカアキ様、こんなにお美しいユウナ姫様に何か不満でもあるのですか? 男は美しい女性に誘われたら黙っていっぱ「ちょいちょいちょーい! だから、ほら! もう!! そういうのは! もうっ!!」

「ちょっと! 聞き捨てなりませんよそれは! 黙って何するつもりよアキ!!」

「しないってば!!」

「部屋に帰って寝てもいい…?」

「タカアキは!! ノワールの!!」


 なるほど、これが混沌。

 混沌を収めし、ツッコミ妖精は《《おねむ》》ときたもんだ。


「もう、いいから…僕も寝かせて…。疲れてるんだよ…」


 僕の冒険は、まだ終わりそうにない


―完―

今まで読んでいただきありがとうございました。

他の作品も読んでいただけると幸いです。


また、簡単に画像ってあげられるものなのかと思って地図を作成していたのですが、みてみん?というところに画像をあげないとだめらしいという話ですので、断念します。申し訳ありません。

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