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フレームワーク

「結果はすでに確定しているから、そこから逆算するにはどのビジネスフレームワークが良いかな?」


 フレームワークとは骨組みや構造と言う意味である。

 そして、ビジネスフレームワークは業務改善などの企業における問題を考えるときに使う、公式みたいなものだ。

 図式にすることにより、簡潔化させ分かりやすくするものであり、その種類は多岐に及ぶ。

 スケジュールの管理や仕事内容の改善、経営戦略の組み立て、特にビジネスにおいて使用されることが多いフレームワークの事をビジネスフレームワークと呼ぶ。


「ビジネスフレームワークって言うのは分からないけど、逆算するならこれが良いんじゃないかな? それっぽいことが書いてあるよ。この本が何を言ってるのか理解できないけどね」


 シェリルは『魔王のすすめ』の中ほどを開き、右のページを指した。

 その場所には未来確定型逆算法と書かれている。


「なるほど。タイムマシン法か!」


「タイムマシン法って?」


 夕登は自分が知っているフレームワークに置換した。

 シェリルはタイムマシンという言葉に反応する。

 タイムマシンは夕登の世界でも実現していないが、概念自体は広く知れ渡っている。

 一方、科学技術が遅れているこの異世界ではタイムマシンなどという概念すら未到達なのだ。

 それは当たり前の反応だった。 


「タイムマシン法は目標、すなわちゴールを先に決定しておき、そこから少しずつ現在へと戻りながら物事を考える手段のことなんだ」


「へぇ。なんか便利そうなやつだね」


「そうだ。これはとても便利なやつさ。となると、マトリクス図も必要か。どうアプローチをすればいいのか試さないと」


 マトリクス図は簡単に言えば四角い図の事で、縦と横に比較する事象のブロックを作り、それぞれが交差するブロックを出現させる。そこにそれらの重なる事象同士がどう関係しているの示すことによって、問題解決を効率よく進める手法だ。


「何やら、難しいことをやってるんだね。私には見てて、ちんぷんかんぷんだよ」


「あとで、詳しく教えてあげるさ。それでなんだが、聞きたいことがある。少しいいか?」


「なに?」


「あそこの街はファンテ王国の一部なんだろ? それじゃ、あの街は王国にとってどういうところなんだ?」


「あの街の名前は城壁都市ガルバス。王国の首都だよ。ファンテの国王は別の街、いわゆる王都にいるけど、ガルバスは国家の基幹部分で、経済や立法を運営するところがあるんだよ。人口もファンテ王国の中で一番、多くいる。だから、私が攻撃しようとしたんだ」


「なるほど。つまり、ガルバスを押さえれば王国は大混乱となるわけだな」


「そう、まさしくその通り。だから、兵士の数も王都よりも多数、駐留しているよ。聞きたいことはそれだけ?」


「今のところはそれだけだ。ありがとう。あと、紙とペンはあるか?」


「もちろん。これを使って。もし、本当に終戦と平和条項を結べるならそれに越したことはないからね。街を滅ぼそうとした私だけど、出来る限り穏便に事を済ませたいし。平和に解決できるなんて思っても見なかったよ」


 シェリルは国のために、一都市を滅ぼそうとしたのであって本来なら侵略や奪略、殺戮を行いたくないのだ。

 長年、魔王として君臨した彼女の父親が退いた今をチャンスと見て、戦争に踏み切った王国がクロス・インペリアルとの交渉のテーブルに付くことは無いとシェリルは見切りをつけた。

 だから魔王シェリルは一方的な報復行為で敵の戦意をそぐことが目的だったのである。


「………………そうか、こうすればいいのか。じゃあ、ここはこれでどうだろうか? いいや、ダメだ。まだ甘い。これじゃ条件は満たせない………………。シェリル、また質問したいんだが? いいか? 王国についての事でな………」


「…………うん、たしか、あそこは………」


 夕登は質問に対するシェリルの答えを纏め、彼女から貰った紙にマトリクス図を書き込み、別にはタイムマシン法の図式を作り上げる。

 そして、息詰まったらまた新たに質問をして、深く掘り下げていく。

 複雑化した問題もこうやってフレームワークを使うことにより、簡略に状況を把握でき、次に何をしたらいいのか次第に見えてくるのだ。


 そして、三十分が経ち、


「よし、王国に即時終戦締結と平和条項を結ばせ、賠償金を支払わせる妙案を思いついた!」


 夕登はペンを放り投げ、書き過ぎて黒くなった紙を掲げて、立ち上がった。


「お、早かったね! で、どうするの?」


 シェリルもそれを見て、興奮気味だ。

 まさか本当に理想の結末が訪れるとは思っても見なかったのだ。

 輝いた目で夕登へ肉薄した。


「聞きたいか?」


「うん! 聞きたい! 聞きたい!」


 もったいぶる彼の顔は第三者から見れば、ウザイと言われても仕方のないものだったが、シェリルはそんなことなど気にしなかった。

 むしろ感動でイケメンに見えたほどだ。


「よし! なら、まずはガルバスを襲撃するぞ!」


「え……?」


 微かに見えるガルバスの城壁を指さして、とんでもないことを言い出す夕登。

 それに対して、「何言ってんの?」と言いたげなシェリル。

 両者の温度差は一瞬にして、天と地ほど離れた。 


ここまでお読み頂きありがとうございました。

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