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新入りの歓迎

 屋内をシャティーに連れられ、数分歩いたところで通路の最奥に到達した。 

 そこには石で出来た内装には似つかわしくない、豪奢な木の扉がある。

 シャティーは歩みを止め、振り返ってニコリと二人に笑みを向けた後、扉をノックした。


「さぁ、着きましたよ。……わたくしです、例の方々をお連れしました。入りますよ」


 彼女は中からの返事を待つことなく、取っ手を掴んで押し開いた。

 シャティーが先に部屋に入って、その後を一列になり夕登とシェリルは付いていく。

 この場に三人しかいないのは、途中でアンリとルルーナが飲み物を準備するということで、別行動しているからだ。

 道中ずっと、シャティーとルルーナが喧嘩していて随分と姦しかったのでアンリが気を利かせたのだった。


「ようこそ! レジスタンスの拠点へ!」


「おお! 随分と若えな」


「アリシアさんの推薦だからな期待してるぜ!」


 二人が入室した途端、拍手と多くの視線、夕登やシェリルに声がかけられる。

 待っていたのは約三十人くらいの男女。

 七割は男だ。

 しかも、大体が筋骨隆々の身体の持ち主ばかり。

 まさに戦う男といった感じだ。

 残りの女性陣は胴体にプレートアーマーをつけている女性がいたり、アンリのように普通の女の人もいる。

 種族に関しては本当にまばらだった。


「皆さん、ご紹介します。こちらの方がユウト・アサギリさん。東にある国、ヒノモト出身の人族ですね」


 彼らがざわざわしている中、シャティーが澄んだ声で話し始めると、皆は静かになる。

 彼女には自然に人を引き付ける力があり、これは勇者としての一つの資質とされているものだ。


「今日からよろしくお願いします。微々たる活躍すら出来ないかもしれませんが、同志として仲良くしていただけたらと思います」


 夕登は斜め45度のに腰を折り、指はしっかり伸ばして腿にピタリとつけながらお辞儀した。

 会社へ新人が入社する光景と全く同じだ。

 彼もそれを意識しての動作で、夕登が入社した時を思い出していた。


「おいおい、新入り! よそよそしいぜ! 俺達は同志なんだ。もっとフランクに行こうぜ! お前みてぇな奴はモテねぇぞぉ?」


「まったくだ」


 男達がそう言ってガハハと笑う。

 彼らは余計なことを言っているが、畏まっている夕登を気遣ってのことだ。


「良かったですね。気に入られたようですよ? まあ、彼らは新しい仲間が増えたときはいつもこうなんですけどね」


「そうなのか?」


「ええ。だから、改まって話す必要はありませんよ」


 日本じゃ絶対にありえない新人の迎え方に夕登は戸惑うが、彼らがそれでいいと言うのだ。

 むしろ、よそよそしく感じる行動は控えるべきで、関係を構築するには相手に合わせるのも大切なのである。


「それで、隣に立つのはわたくしの友人でもあるシェリル・フェンシェンハート。フェンシェンハートという名から分かる通り、クロス・インペリアルの王族の一員。今は魔王ですね」


 夕登の時はただ、見守っていただけだったが今度はどよめきが起きた。

 おそらく、いや確実に魔王という単語のせいだ。

 この場所に先に到着したシャティーやエルはサプライズの意味を込め、シェリルがレジスタンスに加わるということを話さなかったのだろう。


「あ、いやえっと……」


 シェリルもどうしていいかわからない様子。

 歓迎されてないのかと不安になった。

 だが、今ここにいるメンバーはレジスタンスの中でも、中核的な立場の者達ばかりで、心持も人並み以上。

 驚愕に染めていた表情をすぐに元に戻した。

 そして、


「おおお! ま、魔王がレジスタンスに加わってくれるとはな! 頼もしいなぁ!」


「いいねぇ! こりゃあ革命に向けて波に乗るようだぜ!」


「魔王はこんなに可愛い女の子だったのね! 私たちも歓迎よ!」


 少し、ぎこちなさはあったものの、夕登の時と変わらない歓迎っぷり。

 魔王だろうが何だろうが、これから仲間になるのだ。

 そこに差別意識はなかった。


「驚かせちゃったかな? でもレジスタンスのリーダー、アリシアと私は協力関係にあるから、よろしくね!」


 シェリは出来るだけ、彼らに気を使わせないよう笑った。

 彼女が自国の王として、敵意を向けるのは戦争を仕掛けた国王だけだ。

 彼らには恨みがあるどころか、国を取り戻すために戦わんとするレジスタンスに敬意を払うほどだった。


「では、自己紹介も終わりましたし、アリシアさん達が来るまで待ちましょうか。さて、暇をもてあそびそうですね。どうしましょうか」


 シャティーはすっかり、手持無沙汰だと悩んだが、それはすぐに解消されることになった。


「おっしゃああ。新入りィ! 俺達と飲もうぜ!」


 夕登をはるかに超える上背の男が丸太並みに太い腕を彼の肩に回し、男達の輪の中に連れて行く。

 そこにはいつの間にか、酒樽が用意されていて、他の男達も盛り上がっていた。


「私達はこっちでおしゃべりでもしようかしら?」


 シェリルは双角を頭から生やした竜族の女性に、誘われてシャティーと一緒にソファにに座って女子会を始める。

 それから、三十分。

 アリシアとエル、アンリやルルーナが部屋に到着した頃にはすでに皆、酒で出来上がっていた。


ここまでお読み頂きありがとうございました。

よろしければ、評価を付けていただけますと作者は大喜びします!

どうぞよろしくお願い致します!


前話で投稿頻度が二、三日程度になると言っておりましたが、色々とありまして週間連載になると思います。

出来るだけ、間隔を開けずに投稿いたしますのでこれからもよろしくお願いします。

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