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今後に向けて

「値段を市場いちばなどの組合で決めると、どの店で商品を買っても当然ながら値段は同じ。確かに良心的な値段なら客は嬉しいだろう。どの店で買っても一緒であれば、一つ一つ、安い店を探さずに一店だけで買い物は済むし、店も他の商品とまとめて買ってもらえるならありがたいはずだ。だがもし、全ての店が高い値段で設定すれば、先ほどの商人の話と同じように高い値段で物を買うしかなくなるだろ?」


「た、確かにその通りじゃ。ならば、法律はどのように制定するのじゃ? 聞いておると見極めは難しいと思うのじゃが?」


「とりあえず、明らか不当に値段を下げている店への罰則や、価格の協定をさせないように組合を見張る機関を作るしかないだろう」


 日本では公正取引委員会という市場の取引を見張る機関が存在していた。

 この王国においても、それに準じた公的機関を直ちに発足させることが早急であろう。

 革命後、アリシア達、レジスタンスが国を運営するというのであれば、行政機関の見直しを行わなければいけない。

 国を運営し庶民の生活を守るためだ。


「了解じゃ! 新しい王国の官僚や王には必ず伝えるぞ。と、言いたいところじゃが、お主はあまり知識が無いと言っておきながら、随分と詳しいではないか? やはり、革命後、ワシらを助けると思って、王国で官僚を任されてみないか? こういうのもなんじゃが、お主ほどであれば、それなりの地位は約束されるし、将来も安定するはずじゃ。富や名誉、なんなら綺麗な嫁ももらえるかもしれん。これほど成り上がれるチャンスはそうそうないと思うがな」


「それはそうだが、俺は外の世界を見てみたかったんだ。だから、まだもう少し旅とかやってみたいんだ」


 と、断ってみるものの、夕登は箱入りではなく旅をしてみたいとは思ってなかったし、それは異世界に来て都合のいい嘘を付いただけではのものだ。

 しかし、今ではせっかく異世界に来たのだから、もっとたくさんの国や文化を体験してみたいという気持ちが湧いている。


 問題は自身が実際この世界について無知すぎるため、安心して一人で旅が出来ないという点だ。

 それだけを除けば、自由に行動できるのだが今は身を任せるしかない。

 革命後、シェリルは国へ帰るだろうし、シャティーがどうするのかは知らないが、ルルーナはギルドへ戻ると聞いている。

 アリシアは国のために数年間、王国に居座るそうだ。

 夕登一緒に旅をしてくれる者は見つかりそうにない。

 なので、革命後に何をするのかはまだ決めていないから、そう易々と彼女の依頼を受けることが出来ないのだ。


「そうか。お主がそう言うのであれば、無理強いは出来ん。だが、気が変わればいつでも言ってくれ。大歓迎じゃ」


 アリシアは両手を大きく広げ、にっこり笑う。

 夕登も路頭に迷いそうになったら頼る先が出来て安心し、ふっと笑みをこぼした。


「ああそうだ。聞きたいことがあったんだが。いいか?」


「なんじゃ?」


「俺でも魔法が使えたり強くなれるのか?」


 夕登は以前から気になっていたことだ。

 魔力が自分に存在していて、アイテムポケットが使えることも判明しているが、魔法などは全く知らない。

 ここへ来る前、神がチートな武器やスキルをあげられないと言っていたから、彼に初期から能力があるはずもなく、夕登はどうやって異世界で生き抜く力を身に着けようか模索していた。

 本当に異世界の人間と同じように魔力が使える空になったことは、すでに証明できているから、後はどれだけ強くなれるか知りたかった。


「もちろんじゃ。この世界の生命には魔力が宿っておる。ならば、魔法が使えて当然じゃな。まぁ、使えぬ生き物も居るが、今のところワシらのように人型で言語が話せる種族は皆、魔法が使える。お主は人族じゃろ? なら、問題あるまい」


「そうか、それは良かった! で、俺は強くなる見込みとかあるか?」


「うーむ。見たところ、魔力がケタ違いとかそう言ったことは無いからの。いくつかテストして、確かめるしかあるまい」


 彼女は夕登の体を、頭の先から机の下をのぞき込んだりして、まじまじと観察する。

 彼の体にはどこからも、魔力が異常に流れていたりしない。

 いたって普通の男といったところだ。


「どんなテストなんだ?」


「方法は簡単じゃ。魔力を魔法紙、試験紙ともというのじゃが、魔力をその紙に向けて放出するだけ。そして、紙の色が変わるのじゃが、それでお主がどの魔法に適しているか確かめる」


 魔法紙を使用する場面は、主にギルドに職員として就職する時で、魔法をどの程度使えるかにより、職場や職種が決まるのだ。

 後は魔法を使う仕事、兵士や傭兵、冒険者も自分の適性を確かめるために使用する。


「今から、出来るのか?」


「ワシは試験紙を持ってなくての。ルルーナが持っておるはずじゃから、帰って来た時にでも頼めばよいじゃろう」


「なら、そうしようか。しかし、自分に全く適性が無かったらと思うと、不安だな」


「気にしても仕方あるまい。無ければ無いで諦めるしかないじゃろう。というか、一切魔法の適性が無い者など今までワシは見たことない。誰しも、多少は使えるはずじゃ」


「そういうものなのか?」


「そういう者じゃ。まぁ、ルルーナが帰って来るまで待つしかないじゃろ?」


「ああ。そうだな」


 夕登は心配をしているが、魔法という前世界ではありえなかった未知の領域に触れようとしていると思うと、実のところ楽しみではあるのだ。

 アリシアも誰でも少しは魔法が使えると言ってるから安心していた。


「お主の話はそれだけか? まだあるなら聞くが、ワシもまだまだ聞きたいことがあるのじゃ」


「今のところは、それだけだよ。また、追々尋ねるから」


「では、ワシに分かりやすく経済の仕組みを教えてくれんか?」


「俺が知っている事は全て答えるよ。なんでも聞いてくれ」


 そうして、夕登はアリシアにアンリ達が帰って来るまで軽く経済の授業を行った。


ここまでお読み頂きありがとうございました。

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