晩餐会
「二人が生き返ったことだ。お主らも席についてくれ。好きな場所で構わん」
夕登とシェリルは促されるままに、席に着く。
場所は夕登がシャティーの前。シェリルが銀髪の少女の正面だ。
因みに、アリシアはお誕生席に座っており、エルは夕登の右隣りに座っていた。
「あ、そう言えばこの家には五人住んでるんだよね? あと一人は誰なの?」
「なんじゃお主は気付いておらんのか? まぁ、もうじきやって来るから待っておけ。ユウトは気付いておるんじゃろ?」
「まぁな。なんとなく想像はつくよ」
「え、誰? 教えてよ?」
「エルを見れば分かるだろ」
五人目の正体について夕登は感づいており、この場で分かっていないのがシェリルだけで、彼女以外の四人はニヤニヤとしている。
「…………ああ! そっか、エルのお母さんか!」
まじまじとエルを見つめるシェリル。
数秒の沈黙の後、五人目がエルの母親であるアンリということに気付いて、ポンっと手を打ち納得した。
それを見計らっていたのだろう、五人目の住人が扉を開く。
「大正解よ! さぁ、ごはんにしましょう! 今日はお客様がいるから豪華にしてみたわ」
アンリが豪華な料理を三段型の大きな台車に乗せて運びながら、室内に機嫌よく入って来る。
彼女は、一人一人に飲み物を配り、それからコーンスープ、魚介の煮つけ、メインであろう一枚の分厚いステーキを並べる。
台車から生魚の切り身と野菜のマリネ料理とパンが追加で、皆の前に置いてからアンリはシャティーの右隣に座った。
「じゃあ、料理も人も揃ったし、お主らグラスを持てい!」
アリシアが初めにグラスを掲げると、他の卓を囲む者達も次々にグラスを手に取って、自分の胸辺りに持ち上げた。
「よし、準備は良いな? それじゃ、乾杯じゃ!」
「「「「「乾杯!」」」」」
音頭を取るアリシアの合図で七人はテーブルの中央でグラスを割らない程度に、ぶつけると中身を半分近く飲んで、各々好きな料理に手を付け始める。
「お、美味しい! ここ最近はあんまりちゃんとしたもの食べてなかったから、これは感動するよ!」
シェリルがいの一番に簡単の声を上げ、アリシアやシャティーなども口々にうまいうまいと、口にしたいた。
「お口に合って良かったわ。そちらの方もどうかしら?」
アンリはユウトの口に合うか心配して尋ねる。
夕登は魚介の煮つけを食べている最中、しかし、満足そうに咀嚼するのでアンリは彼の返事に期待した。
「もちろん、美味しいですよ!」
「あら、良かったわ。実はおかわりも少しだけあるから、物足りなかったら言って頂戴ね」
「やったぁ!」
アンリのお替りOKというのを聞いたシェリルは大喜びで、料理を口に運ぶスピードを上げる。一刻も早くお替りがしたいようだ。
「あ、そうだわ。私だけは自己紹介してなかったわね。私はエルの母親で、アンリって言うの。これからよろしくね」
「俺は東の果てにあるヒノモトから来ました。ユウト・アサギリです。アンリさん、こちらこそよろしくお願いします」
「私はシェリル・フェンシェンハート。クロス・インペリアルの魔王だよ。アンリ、よろしくね」
「二人ともよろしくね! あ! あなたは人間族なのね。なんだか、あの人を思い出すカッコイイ子ねぇ」
「そ、そうですか?」
急にカッコイイと褒められたが、先刻、アリシアからアンリの夫であるガルファスの話を聞いた後だと、夕登はどう反応していいのか見当が付かない。
とりあえず、聞き返しておいた。
「うんうん! なんだか雰囲気が似てるわ。初対面の人にも堂々としてるし、魚料理から手を付けるところなんて、あの人にとっても似てるわ。あと、目つきも似てるのよねぇ」
「なんじゃアンリ、出会って早速、手を出すのかのう?」
「ぶふぉっ⁉」
「え? お母さん、そうなの?」
アリシアがアンリを性的な話でからかい、夕登は思わずスープを吹き出し、もぐもぐとしながら、ばっと顔を上げ反応したエル。
そのほかのメンツも気になるのかアンリに視線を送った。
「さすがに、そんな節操無しじゃないわよ。ただ、息子がいればこんな感じだったのかなぁ、ってね?」
「なんじゃ、つまらんのう。この家にも若い男が来たんじゃ、誰か相手してやるんじゃぞ?」
「あ、じゃあ、私が相手してあげるよ。その人、見た瞬間から欲しかったし、ギルドの後継者も育てないといけないから、子共が欲しかった。パッと見ただけで何となく、良さそうな遺伝子持ってると分かったもん。だから、結婚しよ。今夜、私の部屋にきて?」
アリシアが夕登をからかう為に放った、言葉無視されるのかと思ったが、真に受けた人物が一人。
銀髪の少女は真顔でとんでもないことを口走った。
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