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アリシアの過去8ー再会

 そうやって、確実に殺していくこと一分。

 兵士らが庭と呼んでいたこの場所は血に塗れ、いくつもの死体が転がっていた。

 そして、アリシアはニヤリとしながら振り返る。


「どうじゃ、貴様らがやったことと同じ事をしてやったぞ? 死んで行った罪無き者達の気持ちがこれで分かればよいがの。さて、最後は貴様じゃ」 


「待ってくれ! 分かった、分かったからっ! もう十分に理解した! 許してくれ! もう二度とこんなことはしない。神に誓う! だから、頼むから殺さないでくれぇ!」


 先ほどの威勢は何処に行ったのか、男は半泣きでアリシアに命乞いをした。

 そんな、男の姿をアリシアは蔑んだ目で見やる。


「そうか、死んで行った者の苦しみが理解出来たか。それは良かった。それと、二度としないと神に誓うのだな?」


「ああ、勿論だ! 絶対に獣人も天使も悪魔もエルフもドワーフも殺さねぇ!」


「よし、分かった。ワシも鬼ではない。ならば、助けてやろう」


「た、助けてくれるのか!」

 

 男は九死に一生を得た思って、喜んだ。

 先までアリシアに泣き付いていた情けない顔が嘘のようである。


「うむ、やっぱりダメじゃ」


「え? なんでだよ。助けてくれるって言ったじゃないか! いや、言ったじゃないですか! お願いします! 何でもしますから殺さないで下さい!」


「ダメじゃと言っておる。往生際の悪い奴じゃのう。どうせ、貴様も命乞いをする者をこうやって殺してきたのじゃろう?」


「そ、そんな!」


「それに、いい加減、貴様の顔も見たくない。さらばだ。あの世で反省するがよい。それと神に誓うのなら、こんな場所ではなく、あの世の方が神に近いじゃろう? ワシのせめてもの情けじゃ。じゃあの」


「いやだぁぁぁぁぁ! 死にたくないっ!」


 地を張って、逃げ出そうとする男だったが、


「ぴぎゃぁ!」


 アリシアは風の魔法を操り、鋭い刃物のようにして男の足を付け根から切り落とす。


「ああ、外れてしもうた。いかんいかん」


「こ、この鬼めッ! いたぶってなにが楽しいんだ!」


「ワシは吸血鬼じゃ。そろそろ、その首を落とすかの」


「や、やめろおおおおおおお! 痛い痛い痛い痛いっ!」


 アリシアはもう一度、風の魔法で両手を切断し、男からは悲鳴があがった。


「はぁ、またミスってしまったのう」


「もう、許してください。お願いしますから、早く殺してください」


 男は命乞いから一転、自分を殺すように願った。

 拷問に近い残虐な殺し方なのだ。

 殺される方はどうせ死ぬならと、苦しんで死にたくないのは当たり前である。

 男は四肢を切り落とされ、身動きすらも出来ず無様に芋虫状態で、もぞもぞとするくらいだ。


「仕方ないのう。今度は殺してやろう。さらばだ」


「あ、ああ。やっと死ね………………」


 アリシアは三度、風の魔法を発動させ、今度は男の首を胴体と切り離した。


「なんてな。お前達など殺す価値も無いわ。エル、もう目を開けてもよいぞ」


「うん。…………あれ? 誰も死んでないよ?」


 エルが目を開けると、兵士達は泡を吹くなり、白目になって意識を失っているだけだ。

 誰一人として死んでいない。


「ああ、殺したところで意味はない。ならばせめて恐怖くらいはと思うてな。この辺りに幻術を掛けて、あやつらには自分が死んだと思わせたのだ」


「おねーちゃんは優しいね」

 

 アリシアは幻術がエルに見えないよう目を瞑らせたのは、流石に防御の魔法と併用しつつ、幻術魔法の調節をするにはこれまで魔力を使いすぎて余裕が無かったからだ。

 それに、アンチマジックが彼女に効かなかったのも、その時すでにアリシアの幻術が発動していたからである。


「本当に自分でもそう思うのう。本音を言えば殺してやりたかったが、それをしたところで何が変わるわけではないからな。まぁ、そんなことより建物の中に入ろう」


「そうだね」


 アリシアはアンリを担いで、エルと共に建物の中に入って行く。

 中央管理局の中には殆ど敵がおらず、アリシアは肩透かしを食らった。

 てっきり、中央管理局のトップ、ガルバスの首長は人間であるため、その守りをガチガチに固めていると思ったからだ。

 しかし、それならばアリシアにとってもガルバス中央管理局から、国王の命令を受けた者共を排除しやすくなる。

 一応、何かの罠かとも考えたが、それは杞憂だったようでいつの間にか管理局局長室の扉の前までやってきていた。


「エル、ワシのすぐ後ろに付いておれ」


「わかった」


 エルはアリシアの言葉通り、彼女の背後、腰の辺りに隠れるようにしている。

 それを確認したアリシアはゆっくり扉を開いた。


「失礼する! ガルバス中央管理局局長はお、ぬし、か。は?」


「一体何者だ! あっ!」


 立ち入ったアリシアは部屋の主を確認しようとしたが、椅子に掛けている人物を見て仰天。

 その人物は見知った顔で、ここにいるはずの無い人物だった。

 そして、相手も驚いている。


「まさか、お主はあの時の衛兵か!」


「あなたはあの時の吸血鬼なのですか?」


 彼女の言うように、椅子に座っていた人物はアリシアがガルバスに到着して、始めて出会った人間で、アリシアを検問したその人である。


「ど、どうしてここにおるのじゃ。いや、そんなことはどうでもよい。この中央管理局を民の避難場所とさせてもらお「ああ! やっぱり、お父さんだっ!」」


「エ、エル!?」


 アリシアの言葉を遮り、エルは彼女の後ろから飛び出して、男のとこへ走って行き、飛びついた。


「会いたかったよ、お父さん!」


「私もだ! 無事で良かった!」


「一体どうなっておる? 訳が分からん」


 本来ならば、敵対していたであろうその男をエルはお父さんと呼び、二人が抱き合っている。

 しかも、男は初めて会った時は衛兵で、この部屋にいるということは今は管理局長らしい。

 この劇的な展開の所為で、アリシアに飛び込んできた大量の情報を彼女は処理しきれず、フリーズしてしまった。


ここまでお読み頂きありがとうございました。

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