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アリシアの過去7-断罪

「おねーちゃん、どうするの?」


「兵達がうじゃうじゃおるの。強行突破するしかあるまい。どうせこやつ等を退かねば避難も出来はせん。エル、防御の魔法をかけるがワシから離れるでないぞ?」


「うん!」


「付いて来るのじゃ」


 エルに注意をしてから、アリシアは先に木の陰から出て行く。すると、エルも一歩後ろを付いてきた。


「おい、そこを通らせてもらうぞ」


 彼女らは門の前まで歩き、門を守る兵士二人の前に堂々と立った。

 ここの兵士は人間のようである。ガタイの良いむさい男とひょろりとした男とのアンバランスな二人組だった。

 王国の直属の施設だけあって、人間で固められているらしい。


「なんだ、お前達は! なっ、こいつ! 狐族の子供と女を連れているぞ!」


「慌てるな。獣人を連れて来たんだろ?」 


「そ、そうか。よし、お前よくやった。そいつらを我々に引き渡してくれ。すぐに処分する。ああ、なんならお前が処分するか?」


「ははっ! そうだな、こいつの手柄を奪うのは忍びないぜ!」


 エルとアンリをゴミでも見るような目で、二人の兵士はアリシアの肩に手を置きながら笑っって、門を開く。


「怖いよ、おねーちゃん」


「………………」


 兵士達の会話を聞いて、エルは震えてアリシアにしがみつく。


「おいおい、お前まさか、この人外を騙して連れてきたのか? 優しいねぇちゃんを装ってさ! 割と外道だなぁ! まぁ、この害悪人外どもにはお似合いの末路だぜ!」


「全くだ」


 あッはッはッ! と笑う二人の兵士。


「どうしたんだ? お前達?」

 

 門の向こうにいた兵士の殆どが、此方へとやって来る。


「ああ、同胞が獣人を連れてきてよぉ。いまから処刑タイムだぜ」


「そうだったのか。庭を汚すなよ? 獣人の血とか草や花が枯れちまうぞ?」


「ちげぇねぇ!」


 集まった兵士らはどっと一斉に大笑いだ。

 どうやら、アリシアの外見から同じ人間だと思われているらしい。

 しかも、王国側の陣営に所属する女性であると。


「外道は貴様らじゃろうがッ! 黙って聞いておったら、エルやアンリを害悪やなんだと! 腸が煮えくり返るとはこのことを言うのかのう!」 


「おいおい、何キレてんだよ。頭でもおかしくなったのか?」


「待て、そいつにそれ以上近づくな! そいつは俺達の仲間じゃねぇ!」


 ガタイの良い男はもう一人に制止を掛けたが、完全に遅かった。


「え?」


 瞬間、ひょろりとした男の首が飛んだ。

 そして、アリシアの左手にはわずかな血が残るばかり。

 彼女が手刀で男の首を切ったということだ。


「くそっ! 侵入者だ! 殺せぇ!」


「エル、少し目を瞑っておれ。少しばかり、アンリを預けるぞ」


「う、うん」


 先ほど、男の首が宙を舞うという衝撃的な場面を見せてしまったアリシアだったが、これ以上、血みどろな場面を見せるわけにはいかないと、エルに目を瞑らせた。

 そして、担いでいたアンリを地面に優しく寝かせた。


「ガキの心配してる場合かよっ! てめぇはこれだけの数を敵に回してんだ。ただじゃ置かねぇぞ!」


 ガタイの良い男が端を発すると、背後にいた全ての兵士は武器を構え、アリシアに向かって魔法を放った。


「失せよッ!」


 その一言で、アリシアの全身から紫色の波動が放たれ、彼女に打ち込まれた魔法は一つ残らず消滅した。


「な!?」


 兵士達はその光景に目を剥き、唖然としてしまう。


「この場から早う失せよ。ワシが貴様らのようなクズを生かしてやると言っておるのだ。ワシの気が変わらん内にこの街から、ガルバスから、王国から出てゆけっ!」

 

 アリシアは容赦なく、殺すことが出来る冷徹な人間ではあるが殺人鬼ではない。

 兵士達を育てた環境が悪いと、解釈するすることにして、逃がすことにした。

 罪を憎み、人は憎まずというものである。

 

 だが、


「てめぇ! 舐めてんのか! この国は俺達、人間の国だ。人外共に味方するお前に何故、指図されなきゃならねぇんだよっ! お前ら、怯むな! 連携して、攻撃すれば倒せるはずだ! 我々、ファンテ王国軍の誇りを見せてやれ!」


 男が吠えると、周囲の兵士も覇気を取り戻し、雄叫びを上げた。


「何が、誇りじゃ。何故その心を、全ての民に向けられんのだ」


 俯きながら、アリシアは悲しそうな目で呟やく。


「なに、ぶつぶつ言ってんだよ! このクソアマがッ!」


「仕方あるまい。お前達は大罪を犯した。ワシの前で友人を愚弄したばかりか、他人を尊重せず、偏見で差別するなど言語道断ッ! ワシがこの場で断罪する! せめて死にながら懺悔するがよい。消えよッ!」


「だから、うるせぇって言ってんだよ! お前ら、左右、正面、頭上へ魔法を打ち込め! 俺がこの女の魔力を封じるッ! やれ!」


 ガタイの良い男の兵士は相手の魔力を封じる魔法を、アリシアにぶつけた。


「これがアンチマジックか」


「ははっ! これで形勢逆転だ! 懺悔するのはてめぇの方だったな! あばよ」


 男は勝ち誇って、汚い笑みを浮かべた。


「こんなもの、くだらんわっ!」


 アリシアの直前までに迫った魔法は、彼女がつい数十秒前に魔法を打ち消した時と同じように消滅した。


「何故だ! 確実にアンチマジックは発動したはずだ!」


「だから、くだらんと言ったじゃろう? 貴様如きの魔法でワシを止められるものか。もういいじゃろう。貴様が望んでおった、処刑タイムの始まりじゃ」

 彼女はおもむろに男の背後にいた、兵士達に向かって走りだし、その中へ飛び込む。


「こいつ! ぐぁぁああ!」


 まず、槍を持った兵士の腹部に掌底。

 その兵士は腹に穴が開き、死亡した。


「次はお主か」


「ひぃっ、ゆるし、あああ」


 すぐ近くにいた魔法を発動させる途中の女の兵士に向かって、アリシアは容赦なく、手刀で肩口から切り裂く。女は体が殆ど千切れそうになって仰向けに倒れた。

 また、アリシアが攻撃をした隙を狙って、懐に飛び込んだ者がいたが、いつの間にか跡形もなく消え去っている。

 高出力の魔力を浴びせたことで、体が耐え切れず細胞レベルで分解されたのだ。

 もちろん、アリシアに躊躇いなど見られない。


「くそぉおぉおおお!」


「ふんっ!」


 仲間が次々と確実に絶命させられる様を見て、発狂した一人の大柄な兵士が二メートルはあろうかという両刃剣を振りかざすが、アリシアに止められるばかりか、大剣を奪い取られ、喉を切り裂かれる。

 この四人を皮切りにアリシアは断罪を始めた。


ここまでお読み頂きありがとうございました。

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