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第三章 蒼獣鬼

 メダルを手に入れた二人。そのメダルは特別なものだった。そんな二人に討伐の依頼が・・・

 相手がどんな奴か、どんなに強いか、知らずに受けてしまった二人はどうなるのか?


 それでは第三章をどうぞ。

 ロイとコンビを組んでから、早くも数週間が過ぎた。

 

 俺らもいろんな意味で有名になってきており、例のあのメダルが目印になっていた。

 ドタバタしながらも何とかやっていたそんな折、あるひとつの依頼がやってきた。

 それは懸賞金ランクAを賭けられた『蒼獣鬼』と呼ばれる化け物の討伐依頼。

 その賞金に吊られた俺とロイは、蒼獣鬼を討伐するために森に向かう。

 

 そいつがどんな化け物かも知らずに・・・

 

 

 

 

 

 

「あん、蒼獣鬼?」

 

 それはロイに隠れてこっそりと酒場に来て得た依頼。

 偶然にもいた王国のお偉いさんが、莫大な賞金を賭けたそうだ。

 その金額は、ランクAとはいえ十分すぎるほど。

 かなりおいしい話だった。

 ちなみに、ランクはF〜Sまであり、単独でクリア可能は実質Bランクまでといわれている。

 普通はC〜Bで3〜6人のグループで当たり、ベテランのチームのみがA〜Sを狙うことが多い。

 大抵A〜Sというのはドラゴン等の、本当の一般人には手も足も出ないようなやつらだ。

 

 しかし、今回の内容は鬼退治。

 

 以前Bランクの鬼を一人で倒したことのある俺にとって、ロイといる今、そう難しい依頼には思えなかった。

 

 とりあえず、討伐に行くかを相談しにロイのところに、目印のメダルを見ながら進む。

 

「まったく、便利なんだか余計なんだかわからん機能だ」

 

 ぶつぶつと一人ごちる。

 

 

 ロイのいる宿屋に着き、部屋に行く。

 

 中に入るとロイが変な本を読んでいたが、かまわず声をかける。

 

「ちょっと話があんだけど、いいか?」

 

 

 

 

 

「仕事ですか?それ以外ならお断りします」

 

 部屋に入って来たクロードに本を読みながらこたえる。

 

 

 

 

 

 

「ああ、仕事だ。しかもかなり良いのだ。蒼獣鬼と呼ばれる鬼を退治するだけで、これだけの大金が手に入る」

 

 そういいつつ、酒場でもらってきた手配書を見せる。

 そこにはゼロがいくつも並んでいた。

 

「ランクはAと高いが、何とかなると思う。実際俺はBまでなら倒したことがあるぞ」

 

 ちょっと胸を張りながら言う。

 

 一人でBランクを倒すのは、結構すごいことなんですよ。

 

 

 

 

 

「ほう、凄いじゃないか」

 

 クロードではなく蒼獣鬼の討伐がである。

 

 本から眼をはなし、クロードのほうを見る。

 

「で、どういうやつなんだ?」

 

 

 

 

 

「・・・知らん」

 

 ギロッと睨まれたのであわてて付け足す。

 

「ちょっと待て、本当にコイツの情報は少ないんだ。例えあったとしてもいろんな情報が飛び交って、どれが本物か判別できなかった。とりあえず、信頼できる情報は、背丈が二メートルほどで体は青い鱗に包まれている。それだけだ」

 

 ほかには、そらを飛ぶだとか首が伸びるだとかもあったが、それはさすがに嘘だと思ったのでいわなかった。

 

 

 

 

 

 

「なら、実際に会ってみないとわからないわけか・・・」

 

 本を閉じ片付ける。

 

「で、そいつは何処にいるんだ?」

 

 

 

 

 

「ここからだと、そうだな・・・北東に150キロ行ったとこにあるでかい街に行って、さらにそっから20キロ歩いた森の中だったな」

 

 蒼獣鬼はその森の中にある道を通る馬車や旅人を襲い、すでに三桁近い人が犠牲になったそうだ。

 

「今からそこに向かうぞ!」

 

 

 

 

 

「ああ」

 

 そう短く返事をし準備する。

 

「さあ、出発だ!」

 

 そう言って、宿の外に出た。そして、風を使った魔法でひとっ飛び。

 

 

 

 

 

 さて、そんなこんなでそのでかい街、メルディアナと呼ばれる街に着いた俺らは、より詳しい情報を得た。

 それは、蒼獣鬼は夜にしか現れないこと。

 人を食する食人鬼だということ。

 幾人ものハンターが殺されていることなど、あまりいい情報ではなかった。

 

「どうするよ、まずこの街でもっと休んでから行くか?それとも、すぐさま森に行ってみるか?お前が決めていいぞ」

 

 

 

 

 

 

 

「それなら、今のうちに行って地形とか把握しておきたいが・・・」

 

 相手はランクAなので一応こっちの有利な状態にしておきたかった。

 

「クロードはどっちなんだ?」

 

 

 

 

 

 

「ああ、それでいいぞ」

 

 そう言って歩き出す。

 

 目的の森にはすぐに着いたが、俺は一つロイに言い忘れていたことがあった。

 それは・・・

 

「だぁ〜!前が見えね〜!」

 

 そう、この森には一日中濃い霧が立ち込めており、薄くなっても晴れることは年に数回しかないそうだ。

 

「どうしたもんかね、こりゃ」

 

 

 

 

 

 

 

「これでは戦い辛いな」

 

 ぶつかったりしないように歩くのでも一苦労だ。

 

「何か対策を練った方がいいようだな」

 

 

 

 

 

 

 

「そうだな、しかもこの地形、敵さんにはかなり都合がいいぞ」

 

 基本的に木々がかなり密集した森なので、今通っている道以外に拓けた場所はあまりない。

 しかも、拓けた場所は崖のむき出しになった絶壁や、底無し沼といった天然トラップといった丁寧さ。

 

「まったくもって厄介だな」

 

(嫌な予感がバリバリしやがる)

 

 この時俺らは、自分達がどんな場所に来てしまったのか知らなかった。

 

 

 

 

 

 

「くっ・・・」

 

 足元がよく見えなかったので躓いてしまった。

 

「ここは動き辛い。なんとかなんないのか?」

 

 いらだちながら言う。

 

「・・・!!」

 

 ロイはあることに気が付いた。そして、パチンと指を鳴らす。すると、ロイの周りに変化が起き始めた。

 ロイを中心に球状に霧が押されロイの周りの霧がなくなった。

 これは、防御魔法の応用だ。

 これで近くははっきりと見えるようになり歩きやすくなった。

 クロードはこのことに気づいておらず、霧に苦戦しているようだ。

 

 

 

 

 

 

「何か寒気までしてきやがった。もしかして・・・」

 

 この感覚はロイが馬鹿を始める前の感覚にかなり近い。

 違うといえば、悪意だか殺気だかが含まれていることだけだ。

 

 

 ・・・

 

 

 ・・・

 

 

「殺気!?何処からだ!」

 

 神経を研ぎ澄ませると、何処からかねばっこい視線を感じる。そこら辺の雑魚では絶対に出せないような殺気は、それだけで精神を圧迫する。

 

「ロイ、お前気づいてるか?」

 

 

 

 

 

 

 

「何かあったのか?」

 

 ロイは、霧を周りから押し出すために使った密度の高い防御魔法によって、壁ができてしまったので、気配などがわかりづらくなってしまっていた。

 わかるとしても近くのクロードの気配だけだ。

 

 

 

 

 

「何処からか解らないけど、めちゃめちゃな殺意を向けられてるぞ」

 

 俺はともかく、ロイの馬鹿野郎なら知らず知らずに敵を作ってしまっていてもおかしくない。

 

「お前、前の街で変ないさかいとか起こさなかったか?」

 

 

 

 

 

 

「ない・・・みにおぼえないな・・・」

 

 そうは言ったが、気になる点がいくつかあるので少し考える。

 

 あの時の横取りしたことか?

 

 気づかず魔法を当てたことか?

 

 酔っ払って絡んだことか?

 

 それともさっきのあのことか?

 

 考えてみるといろいろと思い当たる。

 

 だが・・・

 

「クロードのほうじゃないのか?」

 

 自分のことではないとクロードのほうを疑う。

 

 

 

 

 

 

「身に覚えね〜・・・」

 

 以前酒屋で気にくわないグループを潰したことでは無いだろう。

 かといって、街で女に絡んでいたチンピラグループを潰したことでは無いだろう。

 はたまた、変な宗教に強引に誘ってきて、うざかったから潰したグループでもないだろうし、まったく身に覚えが無かった。

 

「ん〜、考えてもやっぱ俺も無いな。つーか、普段から紳士的な俺が敵を作るわけが無い!」

 

 

 

 

 

 

 

「そうだな。・・・紳士的なクロードならな」

 

 聞こえないくらいの大きさでボソッと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 ものすご〜〜〜〜く、嫌味に聞こえるのは俺の気のせいではないだろう。

 何かムカつくが、まあいい。

 

「って、和んでる場合じゃねぇ!何か近付いて来てますよ!」

 

 ゴゴゴゴ、と音を立てて近づいてくる物体がいた。

 

「・・・うそでしょ。何で上からドラゴンが!!!」

 

 こちらに真っ直ぐ向かってきていたのは、ドラゴンの巨体だった。

 

「よ、避けろ!!!」

 

 

 

 

 

 

 ロイは横に避ける。

 ドラゴンが起こした風によって霧が吹き飛ばされ、この辺りの霧が消え見えやすくなった。

 

「くっ・・・なぜここに・・・」

 

 

 

 

 

 

 ロイも俺も紙一重でその巨体から逃れ、すぐさま迎撃体制に入る。

 

 

 ・・・

 

 

 ・・・

 

 が、落ちてきたドラゴンは死んでいるのか、ピクリとも動かなかった。

 

「どうなってんだ?」

 

 見た目からして、下級のドラゴンのようだ。

 タイプは巨体で温厚な性格のアースドラゴンのようだが、そもそもアースの場合、空を飛ぶことはできない。

 

「これはどういうことだと思う?」

 

 

 

 

 

 

 

 こいつは飛ばない。ということは誰かの仕業だろう。しかも、このドラゴンより強い誰かが。

 

「誰かが飛ばしてきたのだろう」

 

 そう言って、ドラゴンの近くに行く。

 

 

 

 

 

 

「おい!ちょっと待てって・・・うわぁ」

 

 近づいてみると、そのドラゴンには頭が存在していなかった。引きちぎられたような断面の傷痕と、体の所々の肉が削がれていて生々しい。死後時間がたっているのか、臭いは凄いものの血は流れていなかった。

 

「何かの警告、または挑発か、ただのアピールか判断に迷うところだな」

 

 少なくとも相手は下級ドラゴンを倒せるくらい強いことになる。厄介だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、警告か・・・」

 

 ドラゴンを観察しながら考える。

 

「もしかしたら、俺らが相手にしようとしている奴の仕業かもしれないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 グチャリ

 

 飛び散る肉片、巻き上がるのは血風

 そこに立ち上がるのは蒼獣鬼

 

「な、何つータイミングのよさだ。噂をすれば影ってやつかね」

 

 そいつはまさしく怪物だった。

 魚のような蒼鱗を身に纏い、それはぬめぬめとした光沢を持つ。体の所々には鋭い突起が数本、見るからに堅そうなそれは強力な武器にもなりえるだろう。頭髪は一本も無く、あるのは額の角。長身長躯のその肉体は見る者を萎縮させ、あるいは恐怖させる。

 

「酷い臭いだな」

 

 十数メートルも離れたこの位置からも臭う悪臭は、一呼吸ごとに吐き気をもよおす。

 そして、やつはその赤銅色の瞳でこちらを睨んだ。

 

「何だか睨まれてますが、いかがなさいましょうか・・・」

 

 本当は討伐しなければならないのだが、あまりの威圧感にしり込みしてしまう俺。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだな・・・」

 

 相手の情報が足りない。

 これではうかつに行動できない。

 まずは情報を集めなければ。

 

 それなら・・・

 

「行け!クロード!あいつの情報を集めてこい!パンチでも入れていろいろさぐれ!」

 

 まるでクロードが手下のような感じで命令する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アホか!ありゃどう見ても素手じゃヤバイ相手だぞ!!!」

 

 アイツと目が合った瞬間背筋が凍りついた。

 この気配はどう考えてもランクA以上の強さを誇っている。

 そんな相手に素手で立ち向かえというのか、この馬鹿野郎は!

 

「まずはてめぇの魔法で・・・うぉ!」

 

 何の予告も無く、蒼獣鬼は俺に襲いかかってきた。

 その動きは俊敏で、とても二メートルを越す巨体の動きではない。

 黒光りする鍵爪をすれすれでかわし、急いで鉄鋼を手にはめる。

 

「どっせい!」

 

 カウンターで放たれる拳は確かに蒼獣鬼の横っ腹に食い込んだが、

 

「くっ・・・つぅ」

 

 とても生き物の体を殴ったとは思えない衝撃が、拳から全身に響き渡った。

 そして、蒼獣鬼は何事も無かったかのように鍵爪を振るい続ける。

 

「ロイ、てめぇも手伝え!一撃でも当たったらしゃれにならんぞこれは!」

 

 

 

 

 

 

 

「こういうタイプのやつは大抵の魔法が効かないんだよ。試しにやってみるか?」

 

 ランクAにもなると大抵の魔法に耐性を持っていることが多い。

 しかも、相手のことがわからないのでどういう属性や形状、効果が効くかわからない。

 

 試しにパチンと指を鳴らし魔法を使ってみる。

 相手の腕を狙った。

 その部分が急激に冷える。範囲が狭いためいつもより低く、空気中の水分が一瞬に凍りつき分厚い氷が腕に付く。

 相手の腕も凍っていれば関節が凍っていて動かせなくなるはずだ。

 見た目では効いているように見えるがまだわからない。

 

 

 

 

 

 

 

「おお、効いて・・・ねぇし!」

 

 凍りついたのは一瞬。

 動揺に俺の目の前まで来たのも一瞬。

 突き出される鍵爪、何とかかわすも俺の左肩の肉が持っていかれた。

 

「ぐっ、痛ってえな!」

 

 右拳で奏獣鬼の顎を殴るが揺るぎもしない。

 

「何で効かねえん、だ!」

 

 振り切った拳の先に魔力を集中させる。

 以前ロイに向かって放った技だ。

 

「火竜衝!!!」

 

 轟音と爆炎が蒼獣鬼を包む。一度俺は大きく離れる。

 

「これも効かなかったら本当に化け物だぞ」

 

 徐々に晴れていく爆煙の中に立つ

 一体の鬼

 数枚の鱗がはがれた程度しか変わった様子は無い。

 

「あー、コリャどうしたもんですかな、ロイ先生様」

 

 俺は完全にお手上げだったので聞いてみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほとんど防がれては何もできない。それをどうにかしなければ・・・」

 

 考える。

 相手を見てみると鱗がほぼ全身にあり、体を守っているようである。

 そうか・・・

 

「鱗だ!鱗を何とかすれば倒せる」

 

 

 

 

 

 

 

「鱗だぁ?んなこと言っても、近付くのもやっとだってのに、そんなもんどうやって剥ぐんだよ?」

 

 油断無く構えながら言う。

 左肩から流れる鮮血はそれほどの量ではないが、痛みで拳が強く握れない。

 

「片手一本じゃ、やつの攻撃をいなすので精一杯だ」

 

 蒼獣鬼は今のところ衝撃で動きが鈍っているようだが、すぐに回復するだろう。

 

 

 

 

 

 

「狙いやすいところの鱗を、少しでいいから剥がしてくれ」

 

 少しでも剥がれればそこからダメージを与えられる。

 

 

 

 

 

 

「・・・あれを相手にか?この仕事請けるんじゃなかった」

 

 いまさら愚痴をこぼしても仕方が無いので、気合を入れなおす。

 動きが鈍っているうちに今度はこちらから攻めた。

 迎撃に蒼獣鬼は鋭い鍵爪を振るう。

 

 ゴォッ

 

 旋風を巻き起こしながら薙ぎ払われる爪。

 それを危なげなくかわしつつ魔力を乗せた拳を当てる。

 

「火竜掌」

 

 ボソッと、人間相手なら必殺の一撃を放つ。

 火竜衝よりは派手さの無い技だが、近接戦闘では無類の威力を発揮する。

 小規模な爆発は肉を焼き、衝撃を全身に響かせる。

 しかし、蒼獣鬼はいまだ反撃してくる。

 繰り出された回し蹴りをしゃがんでかわし、火竜掌。

 もう一度もう一度もう一度、剥がれ落ちていく鱗。

 いいペースでダメージを与えていたが、同時に俺自身にも疲労が蓄積されていた。

 

「ハアハアハア、ろい!でかいのぶちかませ!」

 

 

 

 

 

 

 

「おう!・・・」

 

 そうこたえ前に伸ばして構えていた手をその部分に向け狙いを定める。

 

「光炎!」

 

 そういうと炎がまとまり凝縮され、レーザーのように鱗の剥がれたところに向かう。

 それは外れることなく一瞬にして狙った場所に到達した。

 思ったとおりそれは皮膚を貫き、そして、爆発した。

 その爆発によって相当のダメージを与え相手はふらつく。

 

 だが、胴体の半分を吹っ飛ばしたはずなのにまだ立っている。

 

「くそっ、威力が足りなかったか?」

 

 

 

 

 

 

 確かに、かなりのダメージを受けたのか蒼獣鬼はふらふらして・・・

 

「いやいやいやいや、それはないでしょ!」

 

 蒼獣鬼は吠えた。天に向かい吠えた。

 ビリビリと周囲の空気が振動し、俺たちの鼓膜を直撃する。

 しかし、驚いたのはそのことではない。

 奴の千切れかかっていた腕が傷口から黒いコルタール状の液体により再びくっついたことだ。

 しかも、その上にはまた鱗が生えていた。

 

「詐欺だ、絶対詐欺だ!懸賞金の額と強さが吊り合ってないだろ!!!」

 

 蒼獣鬼は一、二度腕の動きを確認すると、右手左手を己の二つの突起に当て、いっきに引き抜いた。

 それは自身を傷つけたのではなく、武器を確保したらしい。

 その証拠に両手にある物は、鋭く鋭利。

 切味は抜群に見える。

 

「あのー、ロイさん。正直俺、疲れてるんですけど、まだ戦えとか言わないですよね?」

 

 

 

 

 

 

「くそ、一旦引くしかない」

 

 そういって、パチンと指を鳴らす。

 すると、相手の足元で爆発が起き足止めをする。

 そのうちにパチンと鳴らし、風を集めクロードとともに空に逃げる。

 

 

 

 

 

 

 

 いつも俺を置いて先に行ってしまうロイだったが、さすがに空気を読んだか俺も連れて行ってくれた。

 

「これで一安心か」

 

 物理的にも精神的にも安心しきっていた。この油断が命取りになるとも知らずに。

 

 下方に位置した蒼獣鬼はロイたちに向かって右腕を突き出し、掌に作っていたものを放った。

 それは俺の技、火竜衝だった・・・

 爆炎が俺とロイを撃ち落した。

 空中から地面に叩き付けられる前に、俺はわざと木の枝に左腕をぶつけ衝撃を殺す。

 嫌な音と衝撃がしたが、何とか着地できた。

 

「・・・まったく、骨折り損のくたびれもうけってか」

 

 ひとりごちるが生きているだけましか。

 ロイとはぐれてしまったが、それは蒼獣鬼とて同じだろう。

 問題は奴よりも早くロイと合流しなければ、おそらく命はないだろう。

 

「あの馬鹿は、何処に、落ちた、かな」

 

 

 

 

 

 

 

 ロイは風の力によって衝撃を和らげ着地する。

 

「くっ・・・はぐれてしまった」

 

 クロードとは別のところに落ちたようだ。

 今いる場所がわからないので動きがたい。

 またアイツと出くわしてしまったら厄介である。

 

「早めに合流したほうがいいな」

 

 そう言ってまた空を飛ぼうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 フラフラと霧に包まれた森の中を歩く。

 変に曲がった左腕は激痛を走らせ肉体を疲労させる。

 

「なん、だかな・・・」

 

 痛みと疲労で言葉も途切れ途切れになっている。

 見つかるかどうかわからないロイを探す気力もなくなってきた。

 諦めかけたとき、それは突然光り始めた。

 

「あ、忘れてた」

 

 それはメダル。

 瞳が輝き、ロイのところまで導いてくれる。

 

「こういう、時だけは、ありがたい機能だな」

 

 

 

 

 

 

 飛ぼうとしたロイはメダルに気づき飛ぶのをやめる。

 メダルは目の前の木の間を指し示している。

 

「歩いてさがすか」

 

 歩くのは疲れるが飛んで相手に見つかるよりはましだ。

 ロイは導かれるとおりに進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 メダルに導かれるままに歩く。

 その間、この蒼獣鬼に対する対策を練るがいい案は浮かばない。

 

「せめて、あの鱗を全部剥がせれば・・・」

 

 あの強固な鱗を剥がしロイが奴の頭部、もしくは全身を破壊すればさすがに絶命するだろう。

 しかし、そのためには俺が奴の鱗を剥がさなければならない。

 

「もう少し、力と速さがあれば・・・ん、力?」

 

 そういえば、このメダルにはまだ能力があったはず。

 

「試してみる価値はあるか」

 

 メダルに魔力をこめると力が得られる、だったか。

 ロイの奴のメダルにも何か力があったはずだが、なんだったか。

 

「合流したら、試してみるか」

 

 満身創痍の体を引きずり、森を歩く。

 しばらく歩いていると、メダルの光が突然強くなった。

 

「ロイか?」

 

 

 

 

 

 

 ロイは周りに気を集中させ歩く。

 今あいつに会ってはかなわない。

 

「いたっ・・・」

 

 アイツの殺気ばかり気にしてしまい木の枝にぶつかったり木の根につまづいてしまったりしている。

 つまづき体勢を整えようとして木につかまる。すると、その木の向こうから気配を感じた。

 木の陰から確認する。

 そこにはクロードがいた。

 

 クロードもこっちに気づいたのか声をかけられた。

 

「おう、大丈夫だったか?」

 

 ロイはそういいながらクロードの前に出る。

 よく見るとかなり負傷しているようだ。

 

「大丈夫か!・・・そうだ!魔法で回復してやろうか?」

 

 今のところあいつの気配がない。

 今なら回復に集中できる。

 どうするかクロードに決めてもらうために尋ねる。

 

 

 

 

 

 

 何とか無事にロイと合流し、ロイが回復の提案をしてきて思い出す。

 

「そっか、そっちのメダルは癒しの効果だったな。それじゃあ頼む」

 

 ロイに左腕を見せる。そこにメダルをかざすと淡い光が生まれ、傷がみるみるうちに癒えていった。

 

「おお!初めて傷を治してもらったけど、すごい効果だな!」

 

 あっという間に折れた骨はくっつき、裂傷も跡形もなくなった。

 

「これがメダルの力か」

 

 その効力はかなりのもので、驚嘆するものがある。

 これなら、俺のメダルにも相当な期待ができるかもしれない。

 

「なあ、ちょっと俺のメダルの力も試してみようと思うんだ。もし失敗したら蒼獣鬼の餌食になるかもしれないが、試してみる価値はあると思う。どうだ、伸るか反るかはロイしだいだぞ」

 

 

 

 

 

 

 

「お前に任せるよ」

 

 少し考えたがすぐにこたえた。

 こっちの攻撃は鱗を何とかしない限り全て軽減されてしまう。

 強力な魔法は消費が激しく発動にも時間がかかる。

 なので、鱗がある限りロイは役に立たないだろう。

 というわけでクロードに任せた。

 

「で、どうするつもりだ?」

 

 

 

 

 

 

 ロイの承諾を得ることができたので、作戦内容を話す。

 

「基本的にはさっきと同じだ。まず、ロイの魔法で蒼獣鬼の動きを鈍らせて、俺が火竜掌で鱗を剥がす」

 

 単調な手ではあるかもしれないが、俺の近接戦闘においてこの技が一番威力がある。

 つまり、これ以外の攻撃は奴に通じないことになる。

 

「違うのは俺がメダルの力を使うことだけだが、さっき少し試しに使った代償がこれだ」

 

 そう言って右手をロイの前に突き出す。

 普通に出したつもりなのだが、その手は小刻みに震えていた。

 

「慣れていないせいか、ちょっと使っただけでこれだ。いつ限界が来るかわからないけど、そのぶん身体能力は格段に上がるみたいだ」

 

 ゆっくりと拳を握り力をこめる。

 

「ロイは奴の頭部、もしくは原形を保てないくらい強力な魔法をぶち当ててくれ。作戦内容はそんなもんだ」

 

 

 

 

 

 

 

「ああ任せろ」

 

 作戦を理解し頷く。

 

「後はあいつの居場所だな」

 

 

 

 

 

 

「そんなのは簡単だ」

 

 ロイから少し離れ、大きな木の下に立つ。

 

「ふぅ〜・・・ハッ!」

 

 力をためた右拳で力いっぱい殴り、さらに魔力を放つ。

 

 ドッゴッッ!!!

 

 爆音とともに倒れる大木は、轟音をあたりに轟かす。

 

「これで奴に俺たちの居場所を伝えたも同然だろ」

 

 ニヤリとした笑みをロイに見せる。

 大分俺も余裕が出てきたらしく、いい傾向だった。

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

 ロイは何も言わない。いや、思いつかない。なんと言ったらいいのだろう。

 これではいつ来るかわからない。でも、待ち伏せすれば・・・いやこの状況では危険も伴う。良い点を見つけてもすぐ打ち消されてしまう。

 

 まあこれがコイツのやり方だから仕方がないか。

 ロイは周りに気を集中させる。

 

 

 

 

 

 

「んだよ、そんなブスッとした顔して。これでどの道運命共同体だ、腹くくれよ」

 

 この森に入ってからずっと気を張り詰めていたが、それが悪かったみたいだ。

 今では気楽に、いつも通りに振舞うとテンションもあがってきた。

 対決の前に背中に吊ってあった剣をはずし、木に立てかけておく。

 

「しゃっ、やってやろうか。せいぜい賞金で美味いもんでも食ってやる!」

 

 無駄に吠える俺だった。

 

 

 

 

 

「ああ、終わったら俺もお前の金で食ってやる!」

 

 そう言って、ロイはクロードの近くで構える。

 

 

 

 

 

 

「ちょっ、お前そこはワリカンだろ!つーか、タイミング良すぎ!」

 

 ロイが構えた方向を見ると、蒼獣鬼が武器を持って佇んでいた。

 

 

「しょうがない、行くか!」

 

 メダルを強く握り締め、魔力をこめた。

 土を蹴るとそこに小さなクレーターができた。

 風を切り裂きながら蒼獣鬼に肉薄する。

 奴は俺のスピードに驚いたのか、馬鹿正直にその手に持つ武器を横になぎ払った。

 そんな攻撃があたるはずもなく、地面すれすれまで体を倒しかわす。

 そして、立ち上がるときに膝をばねの様に伸ばし、勢いをつけて顎を勝ち上げる。

 

「火竜掌!!!」

 

 大爆発が起きた。

 今までの威力の数倍はあろうかという一撃。

 それでも、蒼獣鬼は顔がただれただけで、頭部はいまだ存在している。

 

「・・・だろうな」

 

 俺は手を休めずにひたすら連打する。

 ギリギリとミシミシと軋む体。心臓は早鐘を打ち、血液は濁流となって体を駆け巡る。

 悲鳴を上げる肉体は、動くことを止めろと急激な疲労を全身に送る。

 そんなことは気にしない、意識しなければ耐えられる。徐々に、確実に剥がれていく鱗は、再生する数よりも圧倒的に多い。

 時折繰り出される凶刀はかすりもしない。

 それほどまでに肉体は強化され、地上を文字通り駆け巡る。

 蒼獣鬼は大きく口を開けた、そこから放たれる火竜衝。

 

「またパクリかよ!!!」

 

 避けられない一撃は、同様に避ける必要のない一撃だった。

 

「本家に勝てると思うな!!!」

 

 一瞬で魔力をため、それを解き放つ。

 せめぎあったのもまた一瞬。

 爆音とともに吹き飛ぶ蒼獣鬼。

 

「今だ!殺っちまえ!!!」

 

 

 

 

 

 

「おう」

 

 両手を前に伸ばす。

 クロードがやってくれたおかげで的の範囲は大きく狙いやすい。

 

「くらえ、光炎!!」

 

 先ほどより光り輝く炎がレーザーのように蒼獣鬼に向かう。

 炎は二つに分かれ頭部と胴体に一瞬にしてあたった。

 炎は皮膚を貫き威力が落ち内部で爆発する。

 高温の炎だったので爆風もかなり熱い。

 離れていなければ火傷しそうなくらいだ。

 

「終わったか?」

 

 

 

 

 

 プスプスと煙を上げながら地面に倒れふす蒼獣鬼はまだ生きていた。

 

「ハア、ハア、これでも、まだ、死なない、のか」

 

 膝を突き呼吸を整えようとするも

 

 肺が痛い

 

 足が痛い

 

 腕が痛い

 

 体が痛い

 

 全身を駆け巡る痛みが邪魔をした。

 蒼獣鬼は腕だけの力で這って、こちらに近づいてくる。

 

 ズルズル

 

 

 ズルズル

 

 と少しずつ。

 しかし、一度力なく震えると、二度と動かなくなった。

 

 

 

 

 

 動かなくなった蒼獣鬼を確認する。

 

「・・・大丈夫か?クロード」

 

 そう言って近づく。

 

 

 

 

 

「いや、もう無理。この力、やば過ぎ」

 

 息も絶え絶えでこたえる。

 普段ならどれほど疲れようとも、こんな醜態をさらすような真似は絶対にしないのだが、もう体が限界のようだった。

 

「へへ、疲れたけど、やったじゃんか。二人の、大勝利ってな」

 

 これで蒼獣鬼の首をギルドまで持っていけば大金が手に入る。

 

「しっかし、このメダルはいったい何なんだろうな?」

 

 

 

 

 

「何なんだろうといわれても誰かが誰か二人に造ったものとしかわからないな」

 

 前におとずれた遺跡に記されていた。

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、そうだよな」

 

(役に立てばそれでいいか)

 

 何か引っ掛かるものがあったが、それがわからない。

 どうせたいした事ではないだろうと、見切りをつける。

 

「んじゃ、蒼獣鬼の首でも持って帰りますか」

 

 ズルズルと地面を這うようにして剣を回収し、蒼獣鬼の首を皮袋につめ、まだまだ痛む体を引きずりながらロイのところに向かう。

 

「じゃあ、帰りますか。相棒!」

 

 

 

 

 

「ああそうだな。風で運んでやるよ」

 

 そう言ってパチンと鳴らす。

 風が二人を包み込む。

 

 

「それとも歩くか?」

 

 

 

 

 

 

「いやいや、今回ばかりは勘弁してくれって」

 

 苦笑いしながら冷静な相棒を見る。

 

(まあ、結果的に助けられたしな)

 

 少しはロイのことを認め始めた、そんなお話。

 

 

 クロードとロイは風に乗り空高くまで浮かび上がる。

 彼らは次は何処に行くのだろうか。

 それを知る者はいない。

 

 今わかるのはどんなことがあろうとも二人は相棒で、次の冒険にも危険が待ち構えていることぐらいだった。


 長かった。約八時間くらいかけてやっと書き終わりました。

 一ヶ月以上していなかったものがこれで更新できる。

 この調子でどんどん行くぞ〜!

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