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ウィンズロー男爵の屋敷の前は村人が沢山集まってた
領主とハーディガン卿が到着しただけでこれ程
騒がしいのも不自然だ
ヒューゴの事が気がかりだった
村娘達も珍しくほぼ全員が集まっている。
「あっメアリきたきた!」
「何か大きな決め事をするってビアンカが言ってたわ」
「ビアンカのやつ気取って中に入っていったけど
村長の娘だからっていい気になりすぎよ
自分が何をしてきたか忘れたのかしら!」
「メアリ今日は何かあるか知ってる?」
自分も訳が分からなまま男爵夫妻の
執事に通された。
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客室に案内されると、メイド達が一堂に挨拶した
パット夫人がその様子に頬を上気させていた
「ハーディガン様がメアリに素敵なイブニングドレスを
御用意してくださったのよ~
私は晩餐の準備で忙しいから手伝えないけど
彼女達の指示に従ってちょうだいね」
「あっあの、ヒューゴ様は・・・」
「彼もウィンズロー様の晩餐に免れてるわ、彼いい男ね」
何かとても嫌な予感がする。
屋敷に到着するなりハーディガンが連れてきたメイド達に捕まり
部屋で服を脱がされ
香油入りのお湯が入ったバスタブに浸かり
髪を丁寧すきアップにし
背中が空いた萌黄色のシックなドレスを着せられた。
粉をはたかれ、紅を引き
お姫様のように扱われたが
メアリには分不相応で居心地が悪く落ち着かない
仕上げにイミテーションだが目と同じ色の翡翠色の
硝子のネックレスとイヤリングをつけられた
「メアリ様のお姿を見たら
ハーディガン様もきっとお喜びになります」とメイド達も
満足げだ、田舎娘がここまで変身を遂げれば
彼女達の技術の高さに賞賛したいと思った。
「えっと、今日は何か特別な事があるのでしょうか?」
「今日はお祝いですのよ」とメイド長らしき女性がニッコリと笑う
準備が整うと部屋がノックされ
ハーディガン卿が入ってきた
「久しぶりだねメアリ、元気だったかな?
もっと早くこちらに来る予定だったが
隣村に用事ができた為予定が狂ったのだ
逢えて嬉しいよ・・・」
彼は全身隈無くメアリを見つめて
「私が見立てたドレスはとても良く似合っている、美しい」
彼はとても満足げな表情を浮かべた
口ひげに長身のハーディガンは
燕尾服に白蝶ネクタイのフォーマルなスタイルだ
親子ほどの差はあっても渋い中年の魅力がある
だが自分は彼に惹かれてない
このドレスも美しいが似合ってなんかいない
萌黄色の大人びたドレスは自分を年齢を高く見せる事で
彼と並んでも年の差を感じさせない為の
配慮の気がする
「お久しぶりです、ハーディガン様
奥様は今日もいらしてないんですが?」
「意地悪な事をいうね、どれほど君に逢いたかった
それとも寂しかった腹いせかい?」
軽く腰に手を回してきてメアリは鳥肌が立った
今までハーディガンの求愛には
ピンときてなかったが今では触られるだけで悪寒がする
「ウィンズロー夫妻がお待ちかねだ
行こうか」と腕を差し出され躊躇するが素直に従った
紳士が差し出した腕を無下にするものではないと
いつか母が教えてくれたからだった。
「そうだ、今宵は特別な客人が来ていてね
君が世話になったヒューゴ・パトリオット氏と
村長と娘のビアンカ譲を招待したのだ」
「なっ何でですか?」
「特別な日にだからさ」