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ジャリ・・・その時洞窟の奥から小石を踏む音が聞こえた
最初は微かな音で気のせいかと思ったが
ジャリ、ジャリと連続して小石の上を歩いてくる音と確信した
どうしよう、何かいる!小動物ならいいけど熊だったら
ひとたまりも無い。
逃げなければ!
でも足がすくんで立ち上がれない。
ジャリ、ジャリとだんだん近ずいてくる
洞窟の奥を見ると微かに灯りが見えた
どうやらランタンの明かりのようが
だんだんと二つの長い影が伸びてくる
あれは、人だ!誰か来る。
ランタンの光源が逆光になってて顔はわからない
村の人やハーディガンの従者だったら連れ戻されてしまう
メアリは身体を小さくして目立たないよう隠れる事にし
恐ろしくて目を閉じた
「メアリちゃん?」
「ひっ!」
「怖がらなくてもいいよ!メアリちゃん」
「もう大丈夫だからね!」
顔を恐る恐る上げるとそこに見慣れた顔があった
「ディルタさんとカヴァルさん!?」
一昨日会ったヒューゴの部下たちだ
「俺たちの名前覚えてくれて光栄だな
その様子では大変だったみたいだね」
メアリは自分の服を改めてみると
泥だらけで裾は所々大きく破れていた
首を隠す立ち襟のフォックはハーディガンに壊されて
だらし無く首筋が見えていた
そんな様子を見てすぐさまカヴァルはメアリに上着をかけてくれた
「あっありがとう。
でもお二人はどうしてここに!?ヒューゴ様は?」
「殿下の命令でこの奥の洞窟を調べてたんだ
殿下はもうすぐ来るよ心配ない、それまで奥に入ってみるかい?」
「この場所は数年前に村の長老様が亡くなって以来
危ないから入るのは禁じられているわ!危険じゃないの?」
「ははは、大丈夫だよ、それよか素晴らしい景色だ」
メアリはディルタに肩を借りて奥まで入ってみるとこにした。
最奥までは結構歩いた、所々梯子がかけてあり
登るところもあったが何とかたどり着いた
最奥は石壁で行き止まりだったが爆弾で人一人入れる程に
一部が壊されていた
「中は高温多湿だから長居はできなけどね、
気分が悪くなったら教えて、足元に注意してね」
小さな入り口を潜ると熱気に汗ばんだが
簡易ランタンで灯りで照らされた内部の美しさに
不快感を忘れた。
水晶洞窟だ
だが桁違いに結晶が大きく純度も高い
まるで氷の中にでも閉じ込められたようだ
「僕たちの仕事は罰金の徴収ではなくて
新種の動植物や細菌やウィルス採取なんだ」
「珍しい鉱物も採取するよ、新薬になるかもしれないからね」
サンプルを持ち帰り研究するんだ
殿下の思いつきの百合の採取は失敗だったけど
お陰で大きな成果が上がったよ」
そう言ってカヴァルが手に大きな結晶を
持ってきた、結晶の中に何か入ってる
中にはエビとノミをを足したような
殻で覆われた見たこともない生物が入っていた
「結晶から未知の古代生物が沢山見つかったんだ
遺伝子も調べられれば病気に役立つかもしれないし
金も少しだが見つかってる」
「それに一番あれが凄い」
指を指した方向に洞窟中央に一番大きな結晶があった
結晶の中に翼が生えた巨大なトカゲが眠っている
結晶化してるのだから生きてはいないだろうが
まるで眠ってるようだ。
「アースドラゴンだよ、化石は見つかっているが
僕らもこれだけ状態のいい物は初めて見る
ドラゴンは太古から不思議な力があると言われているから
この洞窟の水晶は彼が作り出した物かもしれない。
大発見だよ」
「私もこの奥がこんな風になっていたなんて
知りませんでした、ドラゴン始めんて見る
長老はもしかしたら知っていたのかも
だから祈りを捧げるため洞窟に入っていったんだわ
でも何でお二人が私がここに来ていると解ったんですか?」
その時洞窟の入り口付近から大きな轟音がきこえた