12
店が燃えている・・・。
懸命に消火にしている村人や燃え広がりを
防ぐため家屋を壊してる村人、心配そうに見つめる大勢の
村人が沢山集まっていた。
メアリーは見つからないよう物陰にかくれた
「火の消し忘れてだったそうだよ」
「メアリーは無事なのか?」
「男爵のお屋敷に避難しれるから無事だけど
この店は全壊だね、畑にも火が回って薬草園は
めちゃくちゃだよ」
「火の消し忘れて・・・あっ!」
昨日慌てて出て行ったから暖炉の火がちゃんと
消えてなかったのかもしれない。
なんて事をしてしまったんだろう
両親の大事にしていたたった一つの思い出の店を
自分の火の消し忘れで灰にしてしまうのだ
それに住むところと、全財産失ったメアリは
もう他に帰るとことは無いのだ
あの屋敷で一生飼いならされて暮らすしかないと思うと
身体が震えた。
おーいこれだけは救出できたぞ!!
農夫のモーリスの腕の中には写真立てらしき物が抱えられていた
頭から水をかぶり燃え盛る炎の中から
メアリの一番の宝物の両親の写真を持ってきてくれたみたいだ
モーリスの勇敢な行動に村人達は口々に賞賛するも
彼女にはいつも世話になってるから当然だ、と
言ってるのがここまで聞こえた。
他の村人も少し焦げているも使えそうなものを
運び出していた。
女達はメアリが帰ってきてもいいよう
食べ物や衣服は提供するよう近隣の家々に声をかけていた
涙が溢れて御礼を言いに出て行こうと思った瞬間
ハーディガンの従者達が現れた。
どうやら所在を聞いてるようだ
このままでは連れ戻される!追っ手迫る危機的状況で
メアリはヒューゴと散策した山道に自然と足が向いていた。
山道に入ると昨日からあまり食べていなかったので
空腹と疲れがどっと出てきた。
まだ日が高いし山葡萄や山菜が見つかればいいが
火を起こせば居場所がばれてしまうので
どこまで逃げ切れるかが問題だ。
いっそ諦めてハーディガンのいいなりの一生を送ろうかと
思うほど疲れが出ていた
裸足には山道は田舎育ちのメアリでもキツイ
このまま夜を迎えたら歩く事はできないから
何処か休めるとこを探すことにした。
3時間ほど山道を歩き続けると
ヒューゴが気にしていたあの洞窟が見えてきた
結構中は深いそうだから村人の間でも
危険なため最奥まで行くのは禁じられていたが
雨露を凌ぐなら入り口付近で充分だ
中に入ってメアリ適当な岩に腰を降ろした。
この付近は地熱地帯の為他より暖かい
立秋でも夜は寒いため防寒具が無くても辛うじて
夜を越せるかもしれない。
落ち着くと足の痛みと空腹がまた襲ってきた
料理が好きで普段は朝食を抜かさない主義のメアリが
食事が喉を通らないなんて
あり得ない事だった
山中歩き回ってもきのこ類はあったが
そのまま食べれそうな果物や
生で食べれそうな山菜はあいにく見つからなかった。
そうえいばヒューゴと探した百合も根は食べられる
百合根をグラタンにするのがメアリは一番好きな食べ方だ
ヒューゴにも作ってあげたかったなと
彼の顔が浮かぶといっそう寂しくなった
このまま明日までここで過ごして村を捨て山を越そうか
けどこの先に村は無いのだ。
山の中で隠者のようにひっそりと暮らすか
観念してハーディガンの元に戻るか決めなければならない。




