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「メアリー様おはようございます、お着替えをお手伝いに
参りました」
ハーディガン卿が連れてきたメイド隊が
颯爽とメアリの部屋に入ってきた。
身体を拭くホットタオルを準備し
メアリネグリジェ脱がそうとしてメイドの1人の手が止まった
「メアリ様これは・・・」「えっ何?」
振り返ると姿見の前で首筋や胸元に至る所に鬱血の跡ができていた
昨晩のヒューゴのがつけていったキスマークだ
キス以上は何もなかったのだが他人に見られたのが急に恥ずかしくなった。
「・・・虫ですかね、お部屋の手入れが行き届いいていなかったですわ
不快な思いをされたでしょう、申し訳ありません」
「違うの!これは」
言いかけた時メイド長がメアリの唇に人差し指を
指した。
「メアリ様、ハーディガン様はとてもロマンチストな方です
貴方の為にも黙ってるのが一番利己です
旦那様を怒りを買えば
あなた自身この村にも居られなくなりますよ
って私ごときが余計な事申し訳ありませんが・・・」
真面目なメイドの顔に驚いて声も出なかったが
すぐいつもの声色に戻る
「確か首を隠すペールピンクの
スタンドカラーのドレスがあるので
今日はそれにいたしましょう」
そういって何事もなかったかのように着替えを終わらせた
今までメイドに世話になった事はないが
主人の愚行も承知で尽くしているメイドという
職業は大したものだと思う
他のメイド達も馴れてるようにも見えたが
メイド長は少し顔が困惑していた。
それよりか早くヒューゴに逢いたい。
食堂に降りていくとハーディガン卿が甲斐甲斐しく
迎えてくれた
「おはよう、メアリ!昨日は心配したが
今朝は顔色が良さそうだ。頬もバラ色で美しい」
頬が赤いのは昨晩のヒューゴの事を思い出したせいだ
ハーディガンに心配されるのが逆に辛い
席にはウィンズロー夫妻ビアンカの父の村長が食卓についていたが
ヒューゴとビアンカの姿は見えない
彼の顔を見えないのでガッカリした。
そんなメアリを夫妻も心配そうに見ていた
「メアリ、昨日は心配したわ、もう大丈夫かしら」
「馴れないところで眠れなかったのではないのか?
私達が去ったら君がこの屋敷の主人になるのだ
居心地がいいように改装でも好きにしていいんだよ」
???
自分がこの屋敷の女主人?
意味がわからない
「ハーディガン様これはどういう事でしょう?」
「私には本宅があるのでここに留まることはできないんだ
なのでメアリがここの女主となって守ってくれ
なるべく顔をを出すしメイド達も全員置いていく
心配するな。特にリリーは良く出来たメイド長で
お前付きの侍女にするから君に不自由はさせないよ」
あのメイド長はリリーという名なのか
振り返り後ろの彼女を見ると
リリーはニッコリと微笑んでスカートの裾をつまんで一礼をした。
突然村長が席を立ち上がって近寄ってきた
「田舎の薬局店の主人が領主代行なんて凄いじゃないか
いろいろわからない事もあるだろうから
村長であるこの私が相談に乗るぞ!」
村長は目を見開いて興奮してる
大方自分の利益に利用する打算を
考えているところだろう。
「あの、いろいろ突然すぎて混乱しちゃって」村長に手を握られ
困ってるとすぐリリーが来て丁重にあしらってくれた。
「メアリ様、朝食のお飲物はオレンジジュースでよろしいですか?
卵料理の調理方法はどうなされますか?」
「オレンジジュースでいいわ、卵料理は要らないです。
ところでヒューゴ様は何処でしょうか?」
「朝早くにお立ちになりました、ビアンカ様もご一緒で」
そうビアンカが耳元で囁くとハーディガンが怪訝そうに見ていてた
「しかしあのヒューゴという若者は誠に無礼だな
主人の挨拶も無しに出て行くとは」
「ですがビアンカ嬢もあの若者にかなりご執心ですわね
追っかけて行くなんて情熱的で素敵ですわ」
「誠に若い者同士良くお似合いのカップルだ」
男爵夫妻が話しがはずむと村長が誇らしげに言い放った
「まぁ父親としては微妙なところですが
娘もたいそう気に入ってるようですし
王都の役人なら嫁に出しても構わないと思っております」
「カップル成立ですわね!」
談笑しているが、メアリの心は一人沈んでいた。
ヒューゴが何も言わずビアンカと駆け落ち同然で
出て行くなんて酷すぎる
昨晩は君を守るといってくれたのに・・・
指輪がはまっている薬指が疼いた
「やはり体調が少し休みますので失礼します」
メアリが席を立つと尽かさずリリーが付き添った。




