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異世界神話奇譚 〜白虎の王様〜  作者: 下弦の月
現世〜異世界へ
9/58

帰る事はできません。

カルナックの名前が一部カトリックになっていました。

お詫びして訂正致します。

メイランさんから色々な話を聞いていると、用事を終えたカルナックが部屋に入ってきた。


「すみませんでした。メイラン様にお任せしてしまって。」

私とメイランさんが座っているイスの近くまでくるとメイランさんに何かを話かける。

「いえ。この世界の仕組みなど、必要なことはお話させていただきました。」

メイランさんもカルナックの言葉に返すように何かを話す。


『あぁ〜っ!全然わかんない! せめて言葉がわかるような設定とかしといてよぉ神様ぁ・・』


二人が話している姿に、こちらに来てからあまり声を出していなかった事に気づき、つい小さな声だが独り言を言ってしまう。

さっきまでのメイランさんとの会話も全て念話。頭の中で考えるだけとはいえ、やっぱり普通に会話もしたいのだ。


小さな声とはいえ、近くにいたカルナックとメイランさんには聞こえていたらしく、

〔〔どうなさいました?〕〕

二人からの念話が重なり私に問いかける。


ふと、言葉がわからないなら教えて貰えばいいと気づく。


でも先にカルナックに聞かなければならない。元の世界に帰れるのかどうかを。

多分帰れたとしても、よくて病院のベッドの上だとは思う。悪ければ・・・そんな考えを振り切りカルナックに問いかける。


(私、元の世界に帰ることは出来ますか?)


私の言葉にメイランさんはカルナックの方を向き、カルナックは何処か青ざめた顔で私を見た。


少しの間、カルナックからは何も言葉が無かった。

周りは静か過ぎるほどで、時々知らない言葉が遠くの方から聞こえてくるくらい。


やがて、カルナックが意を決したかのように念話で話しかけてきた。

〔こちらに来た稀人様は幾人かおります。そしてその方達について残された書もございます。稀人様方のこちらへ来た時の最後の記憶はいずれも[生命の危機]となっており、水に溺れた者・刃物に切られた者・高い所から落ちた者と様々ですが、恐らく元の世界では命を落としていると思われます。ですので、帰る事は叶わぬものと・・。〕


生命の危機。

確かに私も事故にあっている。

そして、元の世界での最後の記憶は自分でも死んだんだろうと思っていたほどの事故だった。


帰れない。


その言葉に元の世界の家族や友人の事を思う。母親とケンカしたまま学校へ向かったこと。登校途中に出会ったトーコの事。家の事に無関心だった父親。 皆のアイドルだった妹。私に唯一優しかった兄。

あの日事故にあった私は、あの世界ではもう死んでいるのだ。


〔神に愛された者である稀人様は、不慮の死を神に惜しまれその身体をこちらの世界に移したのだとされています。若くして死を迎えた稀人様がもう一度心穏やかに過ごせるように。そして、神域で稀人様が穏やかに過ごされているのを神が感じる事によってこの世界を安定させる。それがこの世界の決まり事なのです。〕


元の世界では既に死んでいる私が、この世界に飛ばされこの世界の安寧をもたらす。

死んでいたはず。と頭の中で覚悟は決めていても、やっぱり元の世界に帰れないと改めて聞くと心が悲鳴を上げる。


お母さんケンカしたまま死んじゃってごめんなさい。

トーコあの朝に会ってて良かった。

花梨、皆のアイドルだったあんたがいつも羨ましかったよ。

慎兄、いつも優しくしてくれてありがとう。

お父さん、もっと家族に関心をもってね。


いつの間にか涙が零れる。

子どもが親より先に死ぬなんて親不孝をしてしまった。

あの世界では死んでいる私、多分皆が泣いてくれているだろう。

でも私はここにいる。

その事を教えられない辛さにどうしようもなくただ涙が出るのだ。


〔稀人様はこの世界では大事なお方。元の世界に大事な方もいらっしゃったとは思いますが、新しくこの世界で大事な方を見つけていくこともできるのですよ。私がそのお手伝いもいたします。〕

その言葉と同時にメイランさんが私を抱きしめる。


まるで母親に抱きしめられているような感覚に心が落ち着いていく。


この世界で新たな人生を貰った私はここで生きていこうと思う。

元の世界では平凡で何も出来なかった私がこの世界に安定をもたらす事が出来るなら、それを精一杯やればいいんだ。


(ありがとう。メイランさん。)


涙もとまり落ち着いた私にカルナックとメイランさんが穏やかに微笑んでくれる。


〔さぁさぁ、お腹もすきましたでしょうから食べ物を用意いたしましょうね。〕


メイランさんの言葉に外からの光が赤くなっている事に気付く。

色々な事があったので、朝食を食べただけだったのを思い出す。


(はい。お腹すきました。)


私の言葉にメイランさんがにっこり笑う。


〔そういえば、稀人様のお名前を聞いていませんでしたわ。〕


王宮にきてからメイランさんにこの世界の事を聞いているだけだった私は、自分の事を話していなかった事に苦笑する。


(神崎彩奈といいます。これからよろしくお願いします。)






神崎家の事を。


神崎慎一:

彩奈の兄。25才。彩奈をとても可愛がっていた。


神崎花梨:

彩奈の妹。13才。ご近所のアイドル的存在。 彩奈とはいつもケンカばかりしていたが、実はかなりのシスコン。


後、メイランが念話できる事について。

王様の乳母であったメイランは神官の位ももってます。

後々に出てくるメイランの夫のマイクスも同じです。


ちょっとお詫び。

王様の名前が間違っていましたので編集しております。

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