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異世界神話奇譚 〜白虎の王様〜  作者: 下弦の月
現世〜異世界へ
6/58

白い虎は王様でした。

‡ ‡ ‡ ‡


《・・う・・ん・・》


(あれ・・?)


ふいに身体が浮き上がる感覚がして、唐突に意識が覚めていく。

軽く眠っていたようで、瞑っていた目を開けると、真っ先に焦げ茶色の天井が見える。


〔あ、目がさめましたか。〕


頭の中の声にふと横をみると茶色い虎がちょこんと座っているのが見える。

そして、私が寝ていた場所の向かい側には見覚えのない小麦色の肌をした青年が木のベンチのような物に腰掛けていた。


〔突然お倒れになったので、こちらに運ばせていただきました。〕


私が寝かされていたのは、四阿のような建物だった。

三角のような尖った屋根に四本の柱があり、柱に沿って長めの木のベンチが二つ並べてあって、どうやらそのうちの一つに横になっているようだった。


そして、私の側には茶色い虎が心配そうに座っていて、もう一つのベンチには私より年上の青年が足をくんで座っていた。


(・・え?・・だれ?)


意識がはっきりしていくにつれ、自分が倒れた事・そして倒れる前に茶色い虎と白い虎の二匹?と会話していた事を思い出す。


(さっきは茶色と白い虎しかいなかったよね? こんな人いなかったよね!?)


いきなり目の前にいる青年に頭が混乱する。


「*€⌘⊂〜〻・」


ふいに聞こえた青年の声に目を向けるが、何を言っているのか全然わからなかった。


頭を傾げる私に、

〔やはり、こちらの言葉はわからないようですね。〕

茶色い虎の声がした。


〔大丈夫か?とおっしゃってるんですよ〕


青年が話した言葉を教えてくれる。


こちらを心配してくれた言葉に青年をじっと見つめる。


こちらを心配してくれた言葉とは思えないほど尊大に手足を組みこちらを見ている青年。


金色に光る髪に小麦色の肌。

瞳はアメジストをはめ込んだようなキレイな紫色をしている。

そして、その容姿は女の子が誰でも振り返るような美形だった。


(うわ〜!すっごい美形!・・・ってなんで半裸!?)


かなりな美形に気をとられて、青年の格好に今さら気づく。

青年はシーツのような布を腰に一枚巻き付けているだけでベンチに座っているのだ。

しかも足を組んでいるため、膝より上のかなり際どい所まで布がはだけている。


(うわ〜! 見える!見えるってば!!)


もう少しはだければ見えそうになる格好に、目を瞑り顔を赤くして頭の中で叫ぶ。


〔ルドガー様。もう少しきちんとお座り下さい。〕


茶色い虎の声に青年は面倒くさそうに組んだ足を降ろす。


〔申し訳ありません。人型をとらなければ貴方をこちらに運べなかったもので。〕


青年の動いた気配に瞑っていた目を開け、茶色い虎を見る。


って、人型?

ルドガーってさっきこの茶色い虎さんが白い虎に対して呼んでいた名前だよね!?


意識を失う前、茶色い虎が白い虎に向かって〈ルドガー様〉と呼んでいたのを思い出す。


(あの、ルドガーってさっき白い虎に呼んでましたよね? で、この人もルドガーって名前なんですか?)


〔はい。さっきの白い虎はこちらのルドガー様の獣型なんです。 今は貴方を運んだ為人型になってらっしゃいますが。〕


茶色い虎はなんでもない事のように説明する。


〔このヴィラハルドは獣人の国なのです。まぁ、人型がほとんどなので変わる事が出来るのは王宮にいる方か、神官である私達のような者だけなんですがね。〕


獣人の国と言う言葉の響きにあまりピンとこない。


獣人? 人間じゃないってこと?


〔そして、この世界には貴方のような方は一人もいらっしゃいません。〕


続く言葉に?が頭に浮かぶ。

しかもその言葉が聞こえると同時に茶色い虎の顔が微かに朱に染まったかのように見える。


〔黒髪・黒瞳、そしてその白い肌の色。どこをどう見ても書にある神に愛された者です!〕


勢い込んで話しかけてくる茶色い虎にちょっと引き気味になる。


(黒髪・黒瞳なんて普通ですよ? それに肌が白いって、そんなに白くもないし。)


日本人の私にとって黒髪・黒瞳は当たり前だし、肌が白いと言われても東北出身ならともかく平均並の肌色なのだ。


〔とにかく、貴方がこちらに来た事が重要なんです。本当にありがとうございます!〕


私と茶色い虎が頭で話していると、ふいに美形の青年が知らない言葉で話しかけてくる。


よく考えたら、私と茶色い虎はただ見つめあっているだけで、周りは静かなのだ。


一応会話はしているが、周りから見たらただ私と茶色い虎が見つめあっているだけの不思議な光景なんだろうなぁとふいに思う。


〔ここではゆっくりとこれからの事を話し合いが出来ないとおもいますので、とりあえず王宮の方へ行かれませんか?〕


王宮!?


一般の私には馴染みのない単語に驚きを隠せない。


(王宮って、私が行っても大丈夫なんですか!? 無理なんじゃないんですか!?)


普通に考えて王宮なんて場所に出入りは出来ないはず。

王宮は王族と臣下だけがいる特別な場所だという認識が彩奈にはあった。


〔大丈夫ですよ。ルドガー様が了承して下さっていますし、貴方は王の客人として扱われますから。〕


王? って王様って事!?


(王様って、私、王様なんて知りませんから!)


いきなりこの世界に飛ばされたらしい私に、この国の王様を知ってるわけもない。


〔王ならいますよ。そこに〕


茶色い虎の言葉と目線の先には、美形の青年。


〔そちらにいるルドガー様が、ヴィラハルド国二十八代目国王、ルドガー・ヴァルシオン様です。〕




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