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異世界神話奇譚 〜白虎の王様〜  作者: 下弦の月
アルカーレン編
57/58

旅に出るために。

短めですが。


よろしくお願いします。


 ルドガーの執務室で軽く一悶着あったが、(主にルドガーの引き止めのせいで)なんとか旅に出る事を認めさせた彩奈はメイランに手伝ってもらって荷造りをしていた。


「結構多いんですね。 旅に出る為の荷物って。」


 着替えや、飲み水の為の水筒、携帯食料やテントなど。

メイランの指示の元、旅に出る為の道具が彩奈の部屋へと運ばれてくる。


 サーシャやセリーヌも身体の状態が良くなった途端に彩奈の元へと戻ってきたが、彩奈が旅に出ると知って暫し呆然としていた。


「また彩奈様のお世話ができると思っておりましたのに!」


「彩奈様が旅に出るなんて・・。」


そう言いつつも彩奈の旅の支度を手伝ってくれる二人に礼を言い、まずはどこに行くのかをメイランの持ってきた地図で確認することにした。


「う〜ん。一番近いのは隣国のオルライドなんだよね。」


「そうでございますね。ですが、現在バルサの事がありまして、禁術で攻撃された場所の修復中だそうです。」


 彩奈の言葉に返してくれたのはメイラン。

彩奈が地下都市に攫われた時、ドルーガが行った禁術でかなりの打撃を受けたオルライドは、その修復の為魔術師が総動員されているそうだ。


「じゃあ、近くてもオルライドは今はやめておいたほうがいいかもね。」


「残念だよ。 是非我が国に最初に来て欲しかったんだけどね。」


 オルライドは別の機会にしようかと彩奈が話した時、そこに割り込んできたのはオルライド国のジークヴァルト王子。


何故か彩奈が覗き込んでいる地図を彩奈の隣で一緒にみている。


「ジークヴァルト様! すみません。お出でに気づかず!!」


メイランが焦ったようにジークヴァルトの名前を呼び、セリーヌへとお茶の用意を命じる。


「ああ、かまわないよ。 勝手に来たのは僕だからね〜。 あ、お茶ならエルドラド産のにしてほしいな。」


 かまわないと言いながらもお茶の指定をするジークヴァルトにセリーヌとサーシャはエルドラド産の茶葉を取りに部屋を出て行く。

と、同時にその扉からルドガーが入ってくるのが見えた。


「ジークヴァルト! 用があって呼び出したのに何故私の部屋では無く彩奈の部屋にいる!!」


ノックもせずに入ってくると、ルドガーはジークヴァルトに向かって怒鳴り声をあげる。


「ルドガー様。 ここは彩奈様のお部屋です。 せめてノックをしてからお入りになってはいかがでしょうか!?」


そんなルドガーへと注意を促したのはメイラン。

用事があるにせよ、神子である彩奈の部屋にノックもせず入ってくるのが、ジークヴァルトに続いて自分の国の王であるのを、笑顔なのに額には筋が入っているという背筋が凍るような怒り方をしていた。


「あ・・すまん。メイラン。」


「ごめんね、メイラン。」


ルドガーもジークヴァルトも、そんなメイランを真近で見てすぐに謝る。


「謝るのは私にではございません!彩奈様にです!!」


「わかった! すまない!彩奈!」


「ごめんね!彩奈ちゃん!!」


またもやメイランの怒りに触れた二人は彩奈を見て頭を下げて謝ってくる。


「クスクス・・ かまいませんよ。 メイランさんも。もういいですから。」


メイランの様子に青ざめて謝ってくる二人に思わず笑みが零れる彩奈。


「それで? 何かご用だったのでは?」


 いきなりやってきたジークヴァルトにそれを追いかけてきたルドガー。

彩奈が旅に出る事に関しての訪問なのだろうと思い口にする。


「ああ。 旅に出るには荷物がたくさんだろう? だからジークに言って魔道具を貸してもらおうと思って来てもらったんだ。」


「そうそう。 旅に出るには必需品だろうと思ってね。」


そう言ってジークヴァルトは懐から腕輪のような物を出す。


「これはね、マジックアイテムでアイテムボックスなんだよ。」


ジークヴァルトが出してきた腕輪は中心部に青い宝石が嵌った、銀色のシンプルな腕輪だった。


「オルライドは魔法の国だと言ったろ? 彩奈が旅に出るなら荷物を入れられるようなマジックアイテムが無いか相談したら、良いものがあるって。 しかも、その通信がいきなり切れたと思ったら彩奈の部屋にいるんだからな・・。」


ジークヴァルトが出した腕輪を見ながら話すルドガー。

どうやらルドガーとの通信後すぐにジークヴァルトはこの部屋へと転移してきたらしかった。


「だって既にもってたからね。 普通はこんなマジックアイテムはすぐには用意出来ないんだけど、一つ余ったやつを王子権限でちゃんと確保しておいたんだよねー。」


ニコニコと笑顔でルドガーの持ってる腕輪を見ながら話すジークヴァルト。


「さっすが僕だね〜! こういう事もあるかもって用意しておいたんだから!! もしかして未来視の才能もあるかも!!」


「どーせ、出来た知らせを受けて研究所から黙って一つ持ってきただけなんだろうが!」


「そこはホラ!研究所のボスだからね!」


 どうやら出来たばかりのこの腕輪を黙って持っていたらしいジークヴァルト。


「え、そんな大切な物持ってきて大丈夫なんですか?」


「大丈夫大丈夫! 神子様への献上品なら研究所の奴等も喜んでくれるって!! だから貰ってやってね!」


その腕輪は彩奈へと持ってきたと聞き、余計に遠慮する彩奈。


「え!? 私にですか?? もらえませんよ!」


「貰ってやってくれ。 この様子を見るとかなりの荷物になってるんだろう? それにこの腕輪には持ち主の危険を知らせる機能も付いているんだ。」


「そうそう! 本元の機械はオルライドにあるから持ってくるわけにはいかないんだけど、彩奈ちゃんに何かあったらオルライドにわかるようになってるし、僕ならすぐに転移でルドガーへ知らせる事もできるしね。」


 この腕輪には腕輪を登録した人の状態がわかるようになっているらしい。

怪我や、病気にかかるとその度合いによって中心部の宝石が黄色や赤に変化するようになる。

そしてその色はオルライドでもわかるようになっているとのこと。


「ま、使うには登録しなきゃいけないし、魔力も持ってないとダメだけどね。 彩奈ちゃんって魔力検査とかしたことある??」


「魔力検査??」


「あ、したことないんだね。 ま、この水晶でわかるからちゃっちゃとやっちゃおうか。」


そう言って水晶を用意するジークヴァルト。


「魔力検査くらいやっときなよねー。 これはルドガーの怠慢だよー?」


 水晶を用意しながらルドガーへと注意するジークヴァルト。


それに「すまない。」と答えてジークヴァルトが用意する水晶を見るルドガー。


「じゃ、この水晶の上に手を置いてね。」


その言葉に水晶へと手を翳す彩奈。


 すると、段々と水晶の中で白い煙のようなものが渦巻いてくる。

その煙は光を浴びながら赤、緑、青、黄、白、黒、透明と、順に色を変えていた。


「え!?」


その煙を見ていたジークヴァルトは次々と色を変える水晶の様子に啞然としていた。





 

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