この世界は。
「やっと出てきた。」
そこにいたのは、私とあまり年のかわらない男の子。
でも、私はそれが誰なのか知っている。
(え? どういうことだ?)
念話を飛ばしてくるルドガーに向かって手を掲げる。
と、同時にルドガーの姿が人間の姿に変わっていく。
「え!? 」
【君ねぇ。 色々とやらかしすぎだよ。 ・・ったく。】
ルドガーが人間の姿になったのを見て男の子は頭を抱えてため息をついた。
「そう? できるからやっただけなんだけどな。」
私と男の子の会話に焦ったような顔でルドガーが話しかけてきた。
「彩奈・・ 君は一体誰と話してるんだ?それにこの姿は。」
ルドガーには男の子は見えないらしい。
それに聖域で人間の姿になっているのもあり、かなり混乱しているようだ。
「はぁ。 姿見せるのが嫌なわけ?」
そう言って男の子をジッと見つめる。
【そういうわけじゃないけどね。 色々とマズイんじゃないかなぁとか思ったり?】
男の子はそういいながら右手をふると、薄ぼんやりだった姿がはっきりとした形で見える。
「え?」
いきなり現れた男の子にルドガーが目を瞠る。
「あ、この人神様だから。」
【よろしくー!】
あっけらかんとした私と軽い男の子の挨拶にルドガーは目を丸くしている。
だけど、ルドガーにかまってる暇はない。
私はこの神様ときちんと話しあわなきゃいけない。
「で。 話があるんだけど。」
切り替わった私の雰囲気に男の子は何かを感じたらしく、真面目な顔でこちらを向いた。
【なにかな?】
「あの病のこと。」
私が地下から出てきてすぐに治まるはずだった疫病。
なのに、私がルドガー達に助けられた後に神域へ行ったのに広がり続けていた。
これはどう考えてもおかしい。
今までの神子の日誌を見ても、確かに私みたいに私利私慾で攫われた神子も少ないがいた。
その時も今回みたいに病がひろがり、神域に異変が起こり、草木は少しずつ枯れ始めなど色々な異常が起こったことがあった。
だが、神子が助け出され神域に行けばその異常はすぐに治ったと書いてあったのだ。
だから私は助けられたあとすぐに神域へ行った。
なのに、病のひろがりは治ることが無かった。
だから私はあの時怒鳴ったのだ。
「どうして?」・・と。
私はその事を問い詰めた。
「今までの神子のようにきちんと神域に行ったよね? なのにあれはどういうこと!? それにあの時の光はなに?」
私の問いかけに男の子は目を閉じたままその場に佇んでいた。
【・・・・】
そして何も答えようとしない。
「あと、その姿もやめてもらえますか? いい加減ムカつくので。」
そう言った私の言葉に男の子は目を見張り、信じられない顔でこちらを見た。
【・・なんで・・】
「夢の中に出てきましたよね? あの時はもっと背が高かったし、子供じゃなかったもの。 大体その姿って似てるんですよね。元の世界の知り合いの弟に。 だから余計に腹立つんですけど。」
元の世界に帰れないのに、元の世界を思い出させるようなその姿に苛立ちを感じる。
私の睨んだ目に諦めたのか、右手を軽く振るとその姿は夢の中で見た人と同じ人になる。
【前代未聞だと言っただろう? 私と会った記憶も無くなっていたはずなのに・・。 君はこの世界をどうしたいんだ。】
確かにあの時、私の記憶は無くなっていた。
そして夢の中で見た事も忘れ去っていた。
だが、あの病が治った光。
あの光を見て思い出したのだ。
記憶ではなく夢の中でこの人に会った事を。
そして私は記憶を無くしても、思い出しても夢の事を思い出さないといけないとずっと感じていた。
「あの光のおかげでね。 地下都市に行く前に夢の中で会っていた事を思い出したわけ。」
【あの光・・ね。 あれもこの世界において起こってはいけない現象だったんだよね。】
神が言うにはこの世界に魔法はあってもそれは一部だけ。
みんなが使えるわけじゃない。
ましてや病気を治すなんて力はこの世界の理を乱す力らしい。
【流行り病は確かに神域に行った事で終わる。 だが、すぐに終わるわけではない。 徐々に無くなっていく物だ。 そして、あの病にかかっていた者は病が終焉に向かっても本来は治るものではないのだ。 世界が神子を愛し、そしてその神子を不当に扱ったからこその病なのだから。 それはどこで神子が不当な扱いを受けたとかは関係ない。 世界が神子の為に怒るのだから、その責任は全世界に及ぶのだ。 そして、神でさえもそれは介入できない。】
ようするに、あの病はこの世界が起こしたこと。
そして一国が起こした事であろうとも、責任はすべての国でとれ。ということらしい。
【神が介入できるのは、この世界に神子を呼ぶことだけ。 それ以外は世界が神子の為だけに何かをする。 そして神はそれを見ていることしかできない。 そこにいる獅子の王が人型をとれているのも、世界が神子の為にそれを許したからだ。 神域だとて神がどうこうできるものでもない。】
とりあえず、世界=神子>神>王>国民ってことらしい。
世界に意思があるのかどうかは知らないけど、神子を守るためならこの世界は滅びを選ぶことも容易いそうだ。
【そしてここまで世界に愛された神子も今まで一人としていないだろう。】
この世界は私が幸せか、不幸せかで色々な事を起こすとまでいわれた。
(なにそれ? 世界がストーカーとかありえないんだけど。)
【まぁ、普通にしてもらえればこれまで以上にこの世界は栄えるだろう。 だが、神子に危害を加えることがあればまた流行病がおこるかもな。】
そう言ってルドガーを見る神様。
「彩奈はこれからは幸せになります。 この間のような事は決して起こさせません。」
神様を見据えて話すルドガー。
(やだなぁ。 せっかく帰ってきたんだから旅とかしたいし、これからもっと色んな事をしようとか思ってたのに、ますます動きが制限されそう。)
【神子の行動を妨げてはならない。 世界はもっと神子に愛されたいのだから。 】
ルドガーに向けてそう言うと今度はこちらをむいた神様。
【これから色々な場所を見るとよい。 世界はそれを望んでいる。そしてこの世界をもっと好きになってやってほしい。 そうすればこの世界はもっと豊かになるだろう。】
私にそう言うと一瞬で辺りが光で眩しくなり、そして光が収まった時には神の姿はそこには無かった。
【我からの助言はそれだけだ。 この世界は神子の為に存在している】
そして、何処か遠くからそんな言葉が彩奈の耳に聞こえた。
ここでバルサ編は終了です。
次からは新章に入るので少しお時間をいただきます。
何編にしようかと思案中なので。
新しい小説を投稿中です。
名前も変えているので見つけた方だけお楽しみください。




