虎と会話しました。
〔驚かせてしまっているみたいで申し訳ありませんが、お話を聞きたいのですけど。〕
頭の上から聞こえる声と同時に目の前の茶色い虎が座ってクビを傾げる。
所謂、犬のオスワリ状態だ。
なんだか可愛らしい仕草に心の中で(うきゃーー!何あれ! 触りたいっ! ナデナデしたい!)と思わず叫ぶ。
〔ウルサイ‼ 少しは大人しく出来ないのか!〕
〔まぁまぁ、ルドガー様。落ち着いて。〕
やっぱり心の中で思った事が誰かに聞こえているらしく、でも目の前には虎二匹しかいなくて。
(もしかして、さっきから聞こえてくるこの声って虎からだったりするの!?)
〔ようやく状況を飲み込めたみたいですね。
〕
〔フン! 神域に勝手に入ってくるわ、大声で叫びまわるわ、一体どこの種族の物なのか。
わかった時には長に言って厳しく処罰してもらわねば。 ただでさえ今は皆が耐えているというのに。〕
目の前の虎が目配せをしているのを見て、やっぱりさっきから聞こえてくる声はこの虎達だったのだと確信する。
〔さて、そろそろ落ち着いてお話が出来るかと思いますのでお聞きしますが、あなたはどこの種族の方ですか? この神域には普通立ち入りが出来ないはずなんですが。〕
その問いに答えられるはずもない。
種族で言えば人間としか答えられないし、どうやってここに来たのか知るはずもないからだ。
(あの・・・気がついたらここに立ってたんですが。 って、ここはドコなんですか? さっきから言ってる神域ってなんなんですか?)
とりあえず言葉より思っていることに声が返ってくるので、心の中で話しかけてみる。
〔神域を知らない? 一体どこのバカなんだ。 子供でも知っていることだぞ。〕
偉そうな声がすると同時に白虎が軽く頭をふる。
あぁ、この偉そうなのはやっぱり白い虎の方なのね。
と、なんとなく納得する。
〔これは・・、ルドガー様、とりあえず私が話をしますのでちょっと黙ってて下さい。〕
もう一つの優しそうな声が聞こえると同時に今度は茶色い虎が前脚?を少し前にずらす。
〔私は、カルナック・シトリンと申します。 まずは貴方のお名前をお聞きしたいのですが。〕
自己紹介をしてくる虎に、【頭いぃんだなぁ】と思いながら私も自分の事を話す。
(えっと、神崎彩奈です。 実は自分がなんでここにいるのかわかんなくて・・、私多分死んだ?はずなんですよね。最後の記憶が事故だったし。)
私の言葉に茶色い虎が軽く目を瞠った。
〔死んだはず・・ですか、ではヴィラハルドと言う言葉に聞き覚えは?〕
ヴィラハルド?はて? まったく聞いた事もない言葉に頭を傾げる。
(ヴィラハルドってなんですか? なんかの名前?)
〔やっぱり。 ルドガー様、この方はこの世界の者ではありません〕
私の答えに納得したかのように、茶色い虎が白い虎の方を向く。
白い虎も目を丸くして私を見つめている。
(ちょっと待って下さい! この世界って? 私って死んだんですよね? でもって、ここは夢の中とか、死後の世界とかとにかく死んでから来る場所なんですよね?)
この世界っていう言葉に思わず問い詰めるようにまくし立てる。
(私って一体どうなってるんですか? 事故にあったのは確かだし、でも体はなんともないし・・、あ!やっぱりこれって夢みたいな幻みたいな感じ?)
話ながら自分の頬を抓ってみる。
《痛っ!》
今更ながらこの状況が夢ではないと、確信する。
(やっぱり夢じゃないんだ・・)
〔何をやってるんだ・・〕
いきなり喚きだしたかと思ったら、いきなり自分の頬を抓る私の行動に呆れたような声がする。
こんにちは。
初めての投稿で色々と試行錯誤しながらなのでおかしな点があるかもしれませんが、よろしくお願いします。
パソコンでの投稿じゃないので、書くのに時間がかかりますが、頭の中の構想を少しでも小説に反映させたいと思ってます。