動き出した闇
少し長めです。
神域から帰ってくると、ルドガーは大臣に連れられてお昼も食べずに執務室へ戻っていった。
カルナックも神殿でお務めがある、と言って神域からそのまま神殿へ直行している。
私はメイランさんが部屋へ食事を用意してくれていたのでそのまま食べていた。
「お昼はダント鳥を焼いてパンに挟んだ物です。 スープと一緒にお召し上がり下さい。」
ダント鳥は元の世界での鶏みたいな鳥だった。 王宮を見学していた時に鶏舎があり、そこで放し飼いで飼われていた。
元は魔鳥だったらしいが、攻撃も嘴で突つくくらいではっきり言って弱いらしい。 繁殖も簡単だったらしく、この王宮では鶏舎を作ってダント鳥だけは必要な時に必要な分だけこちらから調達するようにしていたようだ。
卵は鶏の卵より大きくて、目玉焼きにすると一つでお腹いっぱいになってしまうくらい。こちらでも目玉焼きはあるが、やっぱり味付けは塩と胡椒っぽい物だけだった。
(ソースとまではいかなくても、やっぱり醤油をかけて食べたいよね・・。)
かろうじて醤油は“きく”のおかげであったので最初に食べて以来、それからは醤油を用意してもらっている。
(そういえばソースって手作り出来たっけ? 確かハーブがいるんだよねぇ。)
海外にいる従姉妹の為、ソースの作り方を検索して送った覚えがあった。 その際、自分でも手作りしていたので、材料があれば作れる。 この世界は今まで食べた物では洋食のような食べ物が多いのだが、ハーブを使った食べ物があったかどうか記憶にない。
かろうじてサラダにかけたドレッシングが思い浮かぶが、そのドレッシングもハーブを使っていたような味がしなかったのだ。
(あれって多分柑橘類とビネガーと塩の味だったよね。)
お酢があるかどうかは調味料を見せてもらってもわからなかったが、ドレッシングの味から多分似たような物はあるだろうなと感じた。
食べ物自体は本当に塩味が主流だったので、ハーブを使った物は無いのかもしれない。 ただ、元の世界でもハーブは自生している物もあったので(パッと見は雑草っぽかったな)探せばあるだろう。
“きく”のおかげで醤油も味噌もある。 とりあえずは和食中心で料理は作ることにして、暇を見つけてハーブを探しソース系の調味料を作るのを目標にしている。
(このサンドイッチみたいなのも味はやっぱり塩味なんだよね。 間にある野菜を塩漬けしてるみたいだから味は美味しいんだけど。)
とにかく鳥肉入りのサンドイッチを食べスープを飲んで、今日これからする事を決めた。
(よし! 今日はハーブ探しをしよう!! もしかしたら噴水のある庭園とかに雑草に紛れて生えてるかも・・だし。 料理はその後!)
私が食べた物を片付けているメイランさんにこの後庭園へ行きたいと告げる。
「庭園ですか?」
「はい! ちょっと探してみたい物があって。」
私が探したい物があると聞いてメイランさんにそれが何かを聞かれたが、探し物が葉っぱだと聞くと「葉っぱ・・ですか?」と不思議そうな顔をされた。
「はい。 葉っぱとか草とか私の欲しい物があるかちょっと見てみたくて!!」
「葉っぱと草・・。」
そんなに不思議なんだろうか?
メイランさんの顔にはいくつもの?マークが浮かんでいた。
「正確にはハーブがあるのかが知りたいんです。 あれは木の葉っぱや草なので。」
「はあぶ?でございますか。」
やっぱり料理にハーブは使わないのかメイランさんには分からないようだった。
私がハーブというのは料理に使うちょっとした調味料だと言ったらメイランは驚いたような顔をしていた。
「料理に草や葉を使うのですか・・。 異世界は食が盛んなんですねぇ。」
と、不思議そうにしながらもわかってくれた。
「わかりました。 ただ、本日サーシャとセリーヌが用事で出ておりますので、私が付き添わせて頂きますね。」
「わかりました。」
サーシャとセリーヌは現在実家にいるらしい。披露目の儀の時のパーティーを抜け出した件で呼び出しをうけたようだった。 サーシャとセリーヌは私の側付きメイド兼護衛だ。 美人なのに強いなんて凄い!
各国の王が数名滞在している中、わたしの護衛役の二人がいない事がメイランさんは気になっているようだ。王宮の中にあるとはいえ外にはなるべく出ないように。とルドガーから言われているらしい。 でも、メイランさんも腕は立つようだから大丈夫だろう。
「じゃ、行きましょう!!」
何の心配も無く、メイランさんと共に庭園へ向かった。
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「・・と、やはりバルサは禄でもない事を考えるなあ。」
「我もバルサがあのような事を考えるとは思わなかった。 我ら竜人は耳が良いため普段は意識的に聞かぬようにしておるが、バルサには注意しておったから今回は全開にしておいたのだ。」
「知らせてくれてありがとう、竜王。 とにかく彩奈の身辺を固めておくことにする。 この会議が終わった後に彩奈にもそれとなく注意をしておくよう言っておくよ。」
大臣に呼ばれ執務室へと来たルドガーは、そこにオルライドのジークヴァルトと、竜王コンラッドが居たことに何かあるのだとすぐに大臣を下がらせ二人の話を聞くことにした。
そこで聞かされた話はとんでもないことだった。
元々竜王コンラッドからバルサの事について言われていたこともあり調査を進めていたが、まさか稀人である彩奈を狙っているとは思ってもみなかったのだ。
書にもあるように稀人に対して乱暴に扱ったガトールドが地図上から消えた話を知る者は多い。だから、稀人である彩奈には何もしないだろうと言うのがここにいる三人の意見だったのだ。 それが竜王から齎されたバルサの企みはその三人の意見を覆すものだったのだ。
「稀人に言うなら早い方がいいね。 “きく”もそうだったけど、異世界の人はあんまり危険だと言う意識がないみたいだし。」
前回稀人が現れたオルライド国のジークヴァルトは“きく”も危険意識が無かったと話す。
「そうだな。 あの娘も危険意識は無さそうに見える。」
披露目の儀で出会っただけの竜王コンラッドも彩奈は危機意識が低いと思っているようだ。
「我が国に誘った時、すぐにでも頷きそうな様子だったぞ? 我が国とこのヴィラハルドがどのくらい離れているか、我が国には竜でしか行けないと言うことも知らぬのにな。」
「確かに。 知らないが故恐らく旅行気分で考えていたのでしょう。 ともかく私は急いで彩奈の元に行きます。」
ジークヴァルトとコンラッドに礼を言うと、直ぐに執務室を出て彩奈の元へ急ぐ。
「何も起こっていなければよいが・・」
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「うーん、やっぱりそう簡単には見つからないのかなぁ?」
彩奈は庭園に生えている木や草を一つずつ見て回っていた。
そしてその様子を後ろからメイランが興味深そうに見ていた。
「あの木は? 違うなぁ。 これも違うし。」
そう言いながら時々取った葉を擦り合わせ匂いを嗅ぎながら確かめている。
似たような物はあっても、擦ってみても匂いはまったくしないので、違うものなのだろうと推測しながら探しているのだ。
「うーーん・・・ん?あれは?」
その時、二本並んだ木の葉に見覚えがあるような気がして急いで確かめる為その木へ向かった。
「あ! これそうかも!!」
それは洋食によく使われるローリエに似ていた。 よく確かめようと手を伸ばすが届きそうな所に葉が無い。背伸びしたりして手を伸ばすがやっぱり届かない。 その様子を見ていたメイランが彩奈に話しかけた。
「アギランの木の葉っぱがほしいのですか?」
どうやらこの木はアギランと言うらしい。 アギランの葉は編み込み冠にも使われる事があるとメイランが話す。
「冠ですか?」
「はい。 武闘大会の優勝者に送られたりしています。」
元の世界でも昔の神様の頭に月桂樹の葉で作った冠を被ったのを見たことがある。 メイランの言葉でこれがローリエだと彩奈は確信する。
だが、葉っぱをまずは確認したい。
「あの葉っぱがほしいんですけど。」
そうメイランにお願いすると、少し先にハシゴが置いてあるとのこと。それを聞いた彩奈はメイランにここに居てもらい、ハシゴをとりに行く事にした。
「すぐに戻ってきますね。 メイランさんは待ってて下さい。」
そう言うと、メイランに教えてもらったハシゴの置き場所へと急ぐ。
「ハァハァ。 あ!ハシゴだ!」
ハシゴの置いてある場所へと走ってきた彩奈はハシゴを見つけて早速持って行こうと手をかけた。
「こんにちは、稀人様。」
ハシゴを持とうとした瞬間に声をかけられそちらを向くと、披露目の儀で見た顔がそこにいた。
「? あの?」
「あぁ! 私はバルサの王オルテンです! 稀人様である貴方に一言ご挨拶してから帰国を・・と思っていたのです! ココで会えるとは幸運です!」
「はぁ。」
いきなり声をかけられたが、それが帰国前の挨拶と聞き、稀人である自分に丁寧に挨拶をしているのだと彩奈は思った。
「帰国するんですね。 バルサは地下都市と聞きました。 道中気をつけて下さいね。」
「はい! 是非稀人様もご一緒に!!」
気をつけてと言ったはずなのに一緒とはどういう意味なのか?
その言葉に不思議に思っていると、後ろから手が伸びてくる。
「?? ・・・!!」
口を塞がれたと同時に薬のような匂いがする。
その事に気づいた時にはすでに彩奈の意識は無かった。
「オルテン様。 急ぎヴィラハルドを出立しましょう! 稀人は荷に紛れて運ぶよう既に指示しております。」
ソルダンの言葉にすぐここを出るよう王宮に伝える為オルテンは庭園を後にした。
ソルダンも彩奈を大きな箱に入れ、運ぶよう頼んでおいた人物に指示する。
誰もいなくなったそこにはハシゴが倒され、その下に彩奈の髪を飾っていたリボンが残されていた。
この前の(密談)と(暗躍)の内容が少し被っていたみたいです。
ここに繋がる伏線なので、ご了承下さいm(_ _)m




