神域にて。
「ふぁ〜、よく寝たぁ!!」
披露目の儀式の翌日、前日の睡眠不足を補うかのように寝倒した。
目覚めて今がいつ頃だろうと辺りを見回すが、まだそんなに部屋が明るくなってないのを見て恐らくは昼にはなっていないだろうと予測をつけた。
ーーーコンコン
扉を叩く音が聞こえ、起きた事を伝える為に入室を促すと扉から入ってきたのはメイランさんだった。
「おはようございます、彩奈様。 朝食には少し遅い時間ですが、何かお食べになりますか?」
挨拶をしながら寝室の薄いカーテンを開け、私に話しかける。
「あ〜、少し寝過ごしちゃいましたか? みんなに心配かけちゃったかなぁ。」
私の言葉に「まだ昼には早い時間くらいです。」と部屋の中に置いてあった昨夜着たドレスを片付けながら答えてくれた。
「昨日はお疲れになったでしょうから・・とルドガー様から彩奈様が起きるまではそのまま寝かせてやってほしいと聞いておりましたので大丈夫です。」
「? ルドガーが?」
「はい。 昨夜遅くにこちらへ来ましたが、彩奈様はもうお休みになられていたので。」
早目にパーティーを抜けてきたので、ルドガーに部屋へ帰る事を告げていなかったのを思い出した。
「ルドガー何か言ってた? 早目にここへ帰ってきちゃったけど・・。」
さすがに何も言わないでパーティーを退室した事に対して何かを言いにきたのかとメイランさんに聞くと、
「いぃえ。 疲れているだろうからそのまま寝かせてあげて欲しいと。 あと、翌日は目覚めるまではそのままに。とおっしゃっておいででしたよ。」
ドレスを腕にかけ、片付けたものを両手にもちながらルドガーが言っただろう言葉を伝えてくれた。
「サーシャとセリーヌに言って何か食べる物を用意いたしますので、少しお待ち下さい。」
そう言うと、メイランさんは両手に片付けたドレスやアクセサリーを持って部屋を出ていった。
その後、サーシャとセリーヌが朝食を持ってきてくれ、着替えを手伝ってくれた後に朝食を食べた。
「彩奈様。今日から神域への通いが入っておりますので。」
「神域っていいですねぇ! 私も入ってみたいです!」
サーシャが今日から神域へ行く事を予定として入れている。と話してくれた後、セリーヌが神域の事をキラキラした目で羨ましがる。
「ん? セリーヌは神域へ入った事ないの?」
私が聞くと「神域には決められた人しか入れないんですよ。」と、サーシャが説明してくれた。
何でも、神官か王しか神域には入れないらしい。
たまに迷い込んでくる人もいるが、神域では本来の姿になる為、好んで入る人はいないらしい。
セリーヌは本来の姿に戻ってもいいから入りたいようだ。 何でも子供の頃に神域へ迷い込んだらしいが、その時とても楽しかった記憶があるようだった。
貴族となると、小さい頃から自由がなかったようで、たまたま迷い込んだ神域で本来の姿になり、どうやらそこで散々遊びまわったらしかった。
「家にいても自由がなかったから。 その時親にもバレずに草原を走り回ってすごく楽しかったんですよね!」
楽しそうに過去を話すセリーヌにサーシャは怪訝そうな顔をしていた。
「私はごめんですね。 神域は本来入ってはいけない場所ですし、本来の姿になるのもあまり好きではありませんから。」
サーシャはそう話すと「お膳を下げてきます。」食べた皿などをもって部屋を出た。
「あちゃー。ちょっとマズかったですね、この話題。」
ぼそっと漏れ出たような言葉にセリーヌを伺うと、
「サーシャは本来の姿があんまり好きじゃないんですよ。」と、話してくれた。
サーシャの本来の姿は蛇なんだそうだ。 だけと、サーシャは自分が蛇になる事がどうしても許せないらしい。
「蛇は名門なんですけどねぇ。」
そういうセリーヌは本来の姿は熊らしい。 セリーヌは「熊より蛇の方が私は好きなんですよ」と苦笑しながら話してくれた。
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朝食を食べた後、早速神域に行く為カルナックが迎えに来てくれた。
ルドガーも行くはずだったのだが、まだ各国の王様達が滞在中の為身動きがとれないようだった。
この王宮に最初に来た時、外から王宮へと入ったので神域に行くにもまず外へ行くのだろうと思っていたのだが、神域には別に入口があるとカルナックが教えてくれた。
最初にルドガーとカルナックに会った時は二人とも神殿からの帰りだった為、外から神域に入り、そのまま外から王宮へと帰ったらしかった。
「本来は違う道を行くのです。 神域まですぐの所に道を繋いでありますので。 神域に行くのはこれから毎日になりますので、遠いと疲れますしね。」
そう言ってカルナックは中庭へと出る。
中庭の噴水の所へ行き、何かを唱えると噴水の手前にあるアーチのようにのびた植物が薄く光り始めた
「ここに手を触れて下さい。」
そう言って植物の一部を指さす。
カルナックに言われるまま植物に向かって手を伸ばし軽く触れると、少し頭がクラクラしてきていた。
眩暈のような症状に目を瞑るとフッと一瞬体が浮いたような感じがしたが、それはすぐに消え去った。
そして目を開けると、最初に来た時と何の代わりもない風景がそこにあった。
最初に目が覚め、この景色に驚いてから何日たったのかわからないが、まるで昨日のことのように感じている。
目の前の風景を感慨深く眺めていると、横〈というより殆ど下?〉から「ぐるる・・」と唸り声が聞こえてきた。
(あ、そっか本来の姿に戻るって言ってたっけ・・)
唸り声の持ち主がカルナックな事に気づき、軽く虎の頭を撫でると少し奥にあるベンチのような物に座ろうと歩き出す。
私に付いてくるように虎のカルナックも隣を歩く。
四阿のように屋根のあるベンチに腰を降ろすと、カルナックもおすわりをして近くに座る。
最初に来た時には気づかなかったが、この神域にいると何だかホッとする。 いつまででもここにいたいと思わせる何かがあるような気もする。
(ん〜〜! すごくいい感じな気分!!)
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