披露目の儀式 〜王宮〜 2
扉から中に入ると、真っ赤な絨毯が見える。その絨毯の終わりには数段の段差があり、その階段の上にはヴィラハルド国王ルドガー・ヴァルシオンが豪奢な椅子に座ってこちらを見ている。
そして真っ赤な絨毯の脇にはたくさんの人。
恐らくはこの国の貴族なんだろう。 ドレスを着た貴婦人や正装をした紳士が並んでいる。
私はそのたくさん人が注目する中、絨毯の上をゆっくりとルドガーの元へ歩いて行く。
数段の階段を登り、ルドガーの座っている椅子の側まで来るとその手を取られ、ルドガーの隣に設えてある椅子に座らされる。
私が座ったと同時に儀式を進行するであろう人が大きな声で叫ぶ。
「300年の時を経て、再び稀人様がこの世界に降り立ちました! これより披露目の儀を開催致します!!」
その声と共に広間にいる人達が拍手をしているのが見える。
その中には、侍女のサーシャとセリーヌの姿もある。
貴族達の目に浮かぶのは殆どが稀人である私に対する期待だ。 だけど、そればかりではない視線もチラホラと感じる。
その筆頭は、ツェリーナと名乗ったあの貴族だ。 その隣には少し壮年の男性が並んでいる。 恐らくはこの男性がツェリーナの父親なのだろう。 外務長をしているとツェリーナが言っていたが、その外見は悪徳政治家のような顔をしている。 つり上がった目には好色そうな雰囲気を感じるし、少し曲がった鼻には脂汗が光っている。 体型もメタボ感満載でそのお腹を揺らしながら隣の人と歓談している。
そんな父親の近くで目をギラつかせながら私の方を見ているのだ。
そして、その視線はツェリーナだけではない事に気づいた。
少ないながらもあちらこちらから同じような視線を感じるのだ。
その煩わしい視線に内心ため息をつくが、表面上は笑顔を貼り付けて皆の顔を見る。
進行役の人は先ほどの宣言で終わったのか、声が聞こえて来ない。
すると、ルドガーが立ち上がり階下に向かって声を掛ける。
「この度、このヴィラハルド国に稀人たる人物が降り立った。 その者の名を彩奈と言う。 これから先神域にてその役目を果たすが、ヴィラハルドの名において稀人たる彩奈を守る事をここに誓おう! 何人においても彩奈を傷つける事罷りならん! その事を頭においてヴィラハルドの民としての行動をするよう申し渡す!」
そのルドガーの言葉に、目の前にいる全員が頭を下げ了承する。
このルドガーの言葉により、ヴィラハルド国では私を傷つける者がいなくなるそうなのだ。 その為の披露目の儀式であり、宣言の場でもあるのだ。
カルナックから王宮での披露目の儀式の役割をそう聞かされ、この披露目の儀式をもって私がヴィラハルドの民になった事を各国に知らしめるらしい。
実際、ルドガーの側には見た事のない服を着た人が幾人か立っている。
恐らくはその人達が各国の王族なのだろう。
ルドガーの宣言で披露目の儀式は終了となるがまだまだ終わりではない。この後は各国の王族から挨拶を受けるのが私の役目だ。
階下にいる貴族の殆どは食べ物、飲み物をもってあちらこちらで雑談を始めている。
その中を私の方へ向かってまずは一組の男女がこちらへ向かって歩いてきた。
それに気づき目を向けるが、その背中にある物を見て軽く目を瞠る。
その男女の背中には薄く透けるような羽があるのだ。
「お初にお目にかかります。フィルトゥーレ国国王エルフィン・ロサンドと申します。 稀人様のご出現を心より嬉しく思います。 末長くこの世界の安寧をよろしくお願い致します。」
「フィルトゥーレ国王妃アルミーナ・ロサンドでございます。 お目にかかれて大変光栄に思います。 フィルトゥーレは妖精の国、この世界の自然は私達にとってとても大切な物。 この世界の為にご尽力よろしくお願い致します。」
フィルトゥーレの国王は青い瞳に青い髪をしていて、髪は肩まで垂らし、その頭には月桂樹のような冠が乗せられている。 美中年って感じなのだが、鼻の下に少し伸びたヒゲのおかげか威厳がある。
国王妃は瑠璃色の瞳に水色の髪が腰まで水が流れるかのようにサラサラと流れている。国王と並んだ姿は本当に綺麗で、物語で読む妖精そのままだ。
二人がならんで挨拶するのを聞き私も挨拶を返す。
「彩奈・神崎と言います。 私の出来うる限りの事をしてきちんとお役目を果たしたいと思います。 お力をお貸し下さい。」




