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異世界神話奇譚 〜白虎の王様〜  作者: 下弦の月
活動開始
26/58

披露目の儀式 2

扉を開き部屋に入ると、部屋の真ん中で軽く光っている場所を見つけた。

近づいてよく見てみると床に文字が描かれていて、その文字が光っているようだった。


(もしかしてこの光の中へ入るのかなぁ?)


恐る恐る足を踏み出して光の中へ入って行く。


その直後、辺りを眩い光が覆っていく。


(眩しいっ!)


あまりの光に目を開けていられなくて思わず目を瞑った。





「やっと来たか。」


ルドガーの声が聞こえ、瞑っていた目を恐々と開く。

目を開いて見ると、そこはさっきまで居た部屋ではなく、白い壁に囲まれた殺風景な場所だった。 そしてその場所にはルドガーとカルナックの他に数人がこちらを向いて立っていた。


「彩奈様。こちらはこの神殿の大司教様と祭祀様方です。」


カルナックの言葉に大司教と呼ばれた人の方を向く。

「お初にお目にかかります、稀人様。 こちらの神殿を預かっております大司教のホズローと申します。 本日、披露目の儀を行うにあたり、総主事を務めさせていただきます。」


ルドガーとカルナックの側にいた一番年配であろう壮年の男性が挨拶をする。

大司教と呼ばれるだけあって、他の人とは違う神服に身を包み穏やかな笑顔を見せているが、その纏うオーラはルドガーともカルナックとも違い、軽く畏怖を感じさせる。


「・・あ、あの、彩奈と言います。 今日はよろしくお願いします。」


そう挨拶をするが、私の様子に気づいたホズローさんは軽く目を細め二度頷く。


「彩奈様にはお気づきになられたようで。 私も神からの恩恵を受けし者でございます。 代々の大司教はその座に着く時、神からの審判を受けます。 神から認められた者だけが大司教の座に着く事が許され、その際恩恵を受けます。 そして、稀人様のように神に愛されし者だけがわかるようにオーラを身に纏います。 ですが、それは稀人様を守る為であり、決して怖い物ではございませんので心にお止めおき下さい。」


私が一瞬抱いた畏怖の念がホズローさんにも届いたらしく、それを安心させるように話しかけてきた。


「ごめんなさい。 こんな感じは初めてだったので。 次からは大丈夫です。」


私の言葉にホズローさんは安心したかのように一つ頷くと

「それでは、お時間になりますので広場へご案内致します。」

そう言って歩き出す。


私もホズローさんの後を追うように足を踏み出した。


「神殿の中で待っている。」

「いってらっしゃいませ、彩奈様。」


ルドガーとカルナックの声を背に白一色の部屋から出ていった。




部屋を出てすぐの扉の前にホズローさんが待っていて、

「では参りましょう。」

その言葉と同時に開け放たれた扉から外に出る。


わあああああああああ!!


いきなり聞こえた大歓声に耳を塞ぎたくなるが我慢し、前を見据える。

私の目の前には大きな広場があり、その向こうには幾つもの段差が見える。

そしてその段差の上には荘厳な空気の漂う建物がみえた。


後ろを振り返ると私の出てきた建物があり、それは広場を囲むようにこの神殿が立っていて、私の出てきた場所も神殿の一部であるのがわかった。


そしてその広場は人、人、人で埋め尽くされており、先ほど聞こえた大歓声はその人達から発せられたようだった。


「稀人様の降臨である! この先この国の栄華は保証されるであろう! 稀人様に敬意をもって接するべし!!」


後ろからホズローさんの声が響き渡る。


その声に導かれたように、人々の歓声が徐々に収まっていくのがわかった。


「彩奈様、前にお進み下さい。」


小さく囁かれたホズローさんの声に、一歩一歩神殿前に向かって歩を進める。


そして、階段の手前で止まると歩みを止めた。


ここからは昨日までの特訓の成果を見せるだけだ。


後ろからついてきていたホズローさんの足音ももう聞こえない。

今この場所には私一人で立っているのだ。


静かで清廉な空気を身に纏い、太陽に向かって頭をたれる。

右手は胸に左手は真下に。

今まで習った事を思い出しながら、動作を進めていく。

一歩後ろに下がり頭を下げたまま両手を広げる。 元の世界にいた時に見た神楽のような動きだが、それよりは単調だ。

だけど、一つ一つの動きには意味がある。

右手を胸に、は自分の心を指し示し、左手を真下に、は大地を示す。

両手を広げるのは世界を表し、太陽に頭を下げるのは私がこの地に来た事の喜びを表す。


そうやって動きでこの世界に稀人たる私が来た事を表現しているのだ。



長いようで短い神殿前での儀式が密やかに終わる。


「稀人降臨の儀式を見届けたるはヴィラハルドの民!! それに相違ないか!!」


わああああああああああ!!!


直後に響き渡るホズローさんの声。


それに答えるかのように、広場にいた人々が歓声をあげた。


「彩奈様、神殿前での儀は終了でございます。 そのまま神殿の中へお進み下さい。」


ホズローさんの声に我に返ると頭を上げ、階段を上がり神殿の中へと入って行った。


未だ歓声が聞こえる中、神殿の奥まで進むと大きな扉の前で止まる。


扉の前で一礼して、扉が開くのを待つ。


「稀人様のお越しである! 開門!!」


ホズローさんの声と共に大きな扉が徐々に開いていく。


扉が完全に開いたと同時に、中にいた多くの神官やルドガー、それに賓客なのだろう人達が一斉に祭壇に向かい頭をさげる。


私はその真ん中に空いた通路をゆっくりと祭壇に向かって歩いていった。


祭壇に着くと一礼し、その祭壇を回り込むようにして進み皆が見渡せる位置につく。


同時に頭を下げていた全ての人達が頭を上げこちらを見つめる。


練習でも思ったが人前に出た事のない私が、こんな大勢の前に出て話す事にかなりの緊張が走る。


それでも、勇気を出して言葉を紡ぐ。


《我、異世界より選ばれし者。名を神崎彩奈。 今日この時よりこの世界に根付き、我の全ての力を発揮せん》


昨日まで頑張って覚えた古代語での言葉を祭壇から皆に向かい話す。


その言葉を聞き、ホズローさんが答える。


《異世界より現れ出でたり稀人の永久の幸せを約束す。》


その言葉と同時に目の前にいた皆が一礼し、両手を上げた。


この儀式での両手を上げる意味は(全力でもって約束は守ります)というものだ。


そしてこの両手を上げる事によって儀式は終了となり、同時に鐘の音が響いた。


そして儀式終了の合図と共に祭壇から降り、祭壇近くの扉からその部屋を出る。


(無事に終わった!)


部屋を出て神殿での披露目の儀式は終了した。


評価をいただきました。

ありがとうございます!

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