披露目の儀式 1
ルドガー達が出ていってすぐに、メイランさんが朝食を持ってきてくれた。
「お時間もありませんので、これくらいしか用意できませんでしたが。」
メイランさんの言葉に持ってきてくれた朝食をみると、卵をパンに挟んだ一口サイズのサンドイッチがいくつかとカップに入ったスープだった。
「これだけあれば充分です。」
元々がよく食べる獣人国の人達。
皿の上には8個のサンドイッチがのっていた。
一口サイズのサンドイッチでも、私には2個もあれば充分な量だ。
カップに入ったスープさえ、お代わりができるようにポットが用意されている。
そのサンドイッチを手に取り食べ始めるとメイランさんが部屋を出て、応接室に呼んでいたのだろう侍女の人を二人連れてきた。
「彩奈様。申し訳ありませんが、お食べになったままお聞き下さいませ。」
メイランさんはそう言うと、その侍女さん二人の紹介を始めた。
「なかなか決まらなくて今まで時間がかかりましたが、この二人が今後彩奈様の身の回りのお世話をすることになりました。 赤茶色の髪をした者がサーシャ、グレーの髪をした者がセリーヌと申します。」
「お初にお目にかかります。 コランドが娘サーシャ・コランドと申します。 この度稀人様付きになりました。 よろしくお願い致します。 サーシャとお呼び下さい。」
サーシャと名乗った人は、赤茶色の髪を後ろでキッチリ纏め清楚な雰囲気を持つ女性だった。 その瞳は濃い茶色でどこかの貴族なのだろうと思わせるような佇まいだ。
「初めまして!稀人様。パドウィークが娘セリーヌ・パドウィークと申します。 サーシャ同様稀人様付きになりましたのでよろしくお願いします。 セリーヌとお呼び下さいね。」
次にセリーヌと名乗った女性はグレーの髪を半分だけ纏め、残りは後ろに流している。
瞳は緑でこちらを見る目には初めて合った私に対する興味が浮かんでいるのがわかった。
それにしても・・ルドガーの側近や調理場の人達もそうだったのだが、何故にこうも美形ばかりなのだろうか。
新たに紹介された二人も恐らくは私より年上なんだろうが、それでもそうは離れていない気がする。 だが、二人とも貴族なのだろう。そこに立っているだけでもオーラが違う気がしていた。
その事を二人に問うと
「はい。父バドウィークは男爵を受爵しております。」
「私の父コランドは子爵です。」
やっぱり・・な答えが返ってきた。
メイランさんに聞けば、この王宮で採用される侍女はどの人も必ず父親か後見人が爵位持ちとの事だった。
身元がはっきりしていない者を侍女として王宮で雇う事はしないそうだ。
ただし、調理人や掃除の人はその限りではない。
侍女以外は推薦状があれば王宮で働く事が可能らしい。
「侍女はどうしても側近や王様に出会う確率が高くなります。ですので、貴族の女性が殆どを占めます。 」
王宮で働く人は子爵や男爵の子供が多く、伯爵やそれ以上になると働く事はしないのがこの国なんだそうだ。
産まれてきたのが男の子であれば跡継ぎとして領地の世話をまかされるが、女の子なら将来的に格上の相手に嫁がせるため働かないのが基本らしい。
だけど子爵や男爵の子供は違うのだ。
「彩奈と言います。 これから色々とよろしくね。」
「「はい!」」
サンドイッチを摘まみながら自己紹介を終える。
行儀が悪いとは思ったが、時間が無いらしいので仕方がない。
私がサンドイッチを食べ終わると同時に神殿へ行くための準備がはじまる。
神殿へ行くための服は真っ白な神官服に似た物だ。
だけど服の裏に飾りボタンがあったり、脇の下辺りにも隠れてボタンがあったりするので、自分一人ではとてもじゃないが着られない。なのでメイランさん、セリーヌ、サーシャの三人がかりであちこちにあるボタンをとめていく。
サンドイッチを食べ終わってからおよそ一時間はたっただろうか、やっと着替えが終わる。
「彩奈様。もうすぐ刻がフィーアになります。 神殿前での拝礼までお時間がありません。」
確か、神殿の拝礼時間がフィーアちょうどだったはず。
「もうそんな時間なの!?」
ここから急いでも神殿まではかなりかかる。
ヤバイ!!
マズイ!!
そうは思ってもこのドレス姿で走る訳にもいかない。
どう考えても遅刻だぁ〜・・と悩んでいると、
「そろそろお部屋を出ましょう。」
メイランさんがゆっくりした動作で私と部屋を出る。
背後ではセリーヌとサーシャが「いってらっしゃいませ。」と頭を下げていた。
部屋を出て、白金に茶色の廊下をゆっくりと歩く。
いつも調理場へ行く時や中庭へ行くのは白金にオレンジのはず。ここへ来た時も、廊下は白金にオレンジだった。
「メイランさん? こっちはルドガーの執務室の方ですよね? 神殿は外なので、オレンジの方じゃないんですか?」
行く方向が違うんじゃないか?と思いメイランさんにそう聞くと、
「お時間がありませんので、転移を使います。 ルドガー様に許可はもらってありますので。」
答えが返ってきた。
私の朝の様子を見て、時間が間に合わないようなら転移を使うようルドガーから言われていたらしい。
その転移の場所もルドガーの執務室近くにあり、ルドガーが外へ行く時はそこを使っているらしい。
(だから、外での用事があってもお昼はいつも一緒にできたんだ。)
メイランさんについて執務室の隣にある隠し部屋へついた。
「この扉を抜けるとすぐに神殿への転移が始まります。 彩奈様、いってらっしゃいませ。」
どうやら神殿へは一人で行かなくてはいけないらしい。
メイランさんの言葉に頷くと、扉を開いた。




