私が作る物 2
調理場を借りて作った最初の日から一週間。
私は色んな物を作っていた。
一番最初に作ったのは味醂だ。
あれから色んな調味料を見せて貰ったが、やっぱり味醂は置いていなかった。
しかも、調理場の人に聞いても見たこと無いと言われたのだ。
恐らくこの世界の何処にも無いと思う。とバルクシュさんに言われ、手作りする事にしたのだ。
幸い、味醂は作った事があったのだ。
それは従姉妹が結婚して海外へ行った事が発端だった。
従姉妹が海外に行って一番苦労したのは食べ物だったらしい。
元々日本食大好きな従姉妹。 だけど、海外で日本食を作ろうとするとお金がかかるらしかった。 中でも味醂は酒に分類される為醤油に比べると高い。 しかも売ってない所もあるようだった。 だけどどうしても味醂の欲しかった従姉妹は自分で作る事にしたのだ。
色々な人から聞き、祖母にも聞き、従姉妹は味醂を作った。 それは今までとは違うものだったが、それでも味醂なのだ。
その従姉妹から味醂の作り方を聞いていた私はこの世界でも味醂を作る事にしたのだ。
味醂を作るにはお酒が無くてはダメなのだが、それは意外とあっさり見つかった。
米があるならもしかして?と思い聞いてみた所、日本酒に似たようなアルコールがあるらしいので早速取り寄せて貰った。
そして味醂を作る為の甘味。
砂糖でもいいのだが、ハチミツがあったので今回はそれを使う事にした。
きちんとした物では無いが、とりあえずお酒とハチミツで作った味醂が完成する。
味醂が出来るとすぐにいろんな煮物を作ってみた。
ジャガイモに似た野菜で肉じゃがを作ったり、カボチャの似た物を煮てみたり、根菜類と鶏肉を纏めて煮て筑前煮風にしたり。
一通り作ると、今度は麺にも挑戦してみた。
小麦粉はあるので、最初にうどんもどきを作ってみた。
小麦粉と塩と水を混ぜて練って。
素人なので切り方は不揃いだったが、それでもうどんらしき物も出来た。
薬味はバルクシュさんに聞いてみると色々持ってきてくれたので、味や匂いを確かめて使う事にしていた。
すると、ネギや生姜大葉などあちらにある物と同じような物がたくさんあった。
それぞれ名前は違うが、それはどうみても普段使っていた薬味そのものだった。
今はお味噌汁や、うどんにそれをいれて使っている。
私はこの一週間毎日調理場に行き、そうやって色々と物を作っていた。
そして、出来上がる頃になると何故かやってくるルドガーに作った物を食べてもらっていた。
それは、一度作ったある物が原因だった。
その日、私はいつものように調理場へ行き今日は何を作ろうか?と考えていた。
いつも作っているのは煮物などが多い。
だけど、その日は和風の気分では無かった為、別の物を作る事にした。
「バルクシュさん。 小麦粉とバターとミルクはありますか?」
この世界のミルクは牛の乳ではない。
牛に似た生き物で、薹[トウ]という生き物がいるのだが、その乳から作っている物らしい。
王宮の近くに大きな広場があり、どうやら薹はそこで飼われているらしいのだ。
バルクシュさんに用意して貰った物を鍋に順番にいれて行く。
まずは薹の乳で作ったバター。
弱火にかけながらバターを溶かして、そこに小麦粉をいれて混ぜ合わせていく。
そしてかき混ぜながら薹の乳をいれ、ゆっくりと馴染ませていく。
ここまで書いてわかる人もいるだろう。ホワイトソースを作る。
いつも煮物を作っていた私。
その日はたまたまそんな気分だったのだが、ホワイトソースを使ったグラタンを作っていた。
いつものようにルドガーが来るはずだったのだが、たまたま入った会議でその日ルドガーは調理場に来なかった。
そのルドガーからの伝言を届けに来て、そのまま私の作ったグラタンを食べたウェイン。
どうやら、パスタはあってもグラタンを作った事のない調理人達。
皆でグラタンを食べ、和気藹々と過ごしていた。そこにルドガーがやって来たのだが、まだ食事をしていなかった。
けれど、私の作った物は既に無い。
しかも煮物では無く、ルドガーも食べた事のないグラタンという名の食べ物。
それを調理人達から聞き、唯一ルドガーだけが食べられなかったもの。
それ以来ルドガーは料理が出来上がる頃になると調理場にやってくるようになっていた。
そうやって、色んな物を作っていた私。
こちらの野菜もバルクシュさんに教えて貰ってわかるようになった。
そうなると、メイランさんの言った食堂の事が段々気になり始めてきていた。
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