意外だった光景NO.2
もう10年以上前のことである。
わたしは《卑弥呼》と命名したグループを結成した。
同士は自分を入れて三名。
運動をすることが目的だったので、運動着を着て行ったのは勿論のことである。
目的地を選ぶのと車の運転はわたしが受け持つことにして、目が少し不自由な友人を手助けしながら歩くのはもう一人の友人の役目だった。目の悪い友人はいわば特待生で、会を盛り上げてくれる人格円満な人物である。
自然豊かな地方なので、或るときは山の農道を歩き、また或るときははるか向こうに海の見える山の公園までの長距離ドライブなどを計画した。
今回の話は山合いのコースを選んだ時のこと。
いつもは計画した通りに事を進めるのだが、その時は途中で見かけた標識に惹かれて別の道を行くことになった。
道幅が狭くて、でこぼこした山道をくねくねと曲がりながら相当の距離を走った。
まだか、まだか、という程、走りに走った。
「いったいどこへ出るのかしらね?」
三人は狐につままれたまま、それでも車は、走るに走った。
数十分走ると、先行きに少し見通しがついてきたような気がした。
「これは何かありそうよね……」
わたしたち三人は何となくワクワクしてきた。
やっと、広場に出た。
「あ~、着いたね」と、ほっとする間もなく、三人はあっ!と声を上げた。
「まじ?これって、これって」
やっぱり……、わたし達は狐に騙されていた。
三人はみんな、そう思った。
じらすのはやめましょう。
それは、お城の国だったのです。
わたし達が目にしたのは、半端じゃないほど広い領域に、お城、お城、お城の建物がずらり……。しかも、人家のない山の奥に……。
資料館、食堂、宿舎、トイレ、その他がすべてお城の作りになっていた。
石段を下りると、そこにもまるで城内に来た錯覚をする設備が完備されていた。
わたし達は、そろそろお腹もすいてきたので城の食堂に入った。
定食を注文したら、城の前の生け簀に泳いでいた虹鱒の焼いたのが出てきた。
散々舌鼓を打った後、城郭巡りをして、最上段の石段を上がった。
これも意外!
なんと、ミニ八十八か所霊場がずらりと並んでいた。
四国に住む者にとって霊場は珍しいことでもないが、このミニ八十八か所には驚いた。
お城に逗留したければ、城を一ついただいて宿泊することができる。
時には城主になって、しばしくつろぐのもいいだろう。
わたし達も満足して、化かされたまま家路に着いたのはいうまでもない。
次話をお楽しみに。




