キッシム=エライダム
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キッシム=エライダムは牢の鉄棒を魔法で壊し、近くにいた監視員を始末した。
無惨にも残骸となっている肉片を蹴り飛ばし、それを冷徹な視線で見つめた後、しずかに足を動かし始めた。
さっきの監視員も雑魚というわけでもない。まあ結果を見ればそう思ってもしまうかもしれないが、それは違う。この監視員だった人もセラフィ以上には強かった。だが、その強かった監視員よりもキッシム=エライダムの方が圧倒的に強かっただけなのだ。
キッシムは監獄から出口へと向かう途中、一人の女性が目の前に現れた。
キッシムは一旦足を止めると、女性はすぐに地に片膝をつき、頭を下げ言った。
「英国騎士団内の約九割は連行させました。ですが――」
「ああ、老騎士の奴らは放っておけ。どうせ貴様らでは始末できんだろう。かといって、私が出向く事も出来ない。足止めだけやっておけばいい。隙あらば殺れ。これから私は《やつ》を探しに行く。捕まってはいないんだろう」
その言葉に、女性は「申し訳ございません」と言い、姿を消した。
そして、数秒。キッシムはしばらく考え込んでから、静かに足を進めた。
「まったく、面倒な奴だ。大人しく捕まっていればいいものを。しかし、どこに隠れたというのだ」
困った顔ついになりながらも、キッシムは足を止めない。
出口へと赴くと、そこには惨劇が広がっている。
同じ組織――いや、元同志と裏切り者との戦いが。
ある者は知り合いが暗黒組織である事を嘆きながらも戦い。ある者はその場に崩れ落ちている。
その惨劇の中を、キッシムは悠々と歩く。堂々と、と言ってもいい。
攻撃が来たらそれを軽くあしらい跳ね返す。
ただ、無残なまでにキッシムへの攻撃は当たらない。キッシムにとって、それはただの蟻と同じなのだろう。一生懸命働いていながらも、人間から見たらただの小さい虫、ちょこちょこ動いているただの
それほどまでにひらいているキッシムと英国騎士団の要因との戦闘力の差。
キッシムはその惨劇を一瞬にして通り越す。
そこはもう人が見当たらない場所だった。造りは同じなのだが、違いは人がいないだけ、普段なら別に気にする事もないが、状況が状況だと虚無感を生む。
「さて、どこに逃げたのやら。まあ逃げてはいないだろうな、出入り口は既に封鎖されている。とすると、やはりここの中か。袋のねずみになったというのに踏ん張る奴だ」
いつまで持つかな? と不適な笑みを浮かべ、《やつ》の捜索を開始した。




