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秋色のもみじ  作者: 桜華
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【第四章】



【第四章】

不器用でごめん

素直じゃなくてごめん

キツいセリフが

君を傷つけても

生易しいコトバで

君を悩ますよりかは

ずっといい

これが僕の

精一杯の優しさ…


「…くそっ」

俺は拳でベッドを打ちつけた。

素直に許せないもどかしさ

裏切られたことのあっけなさ

きっと沖田夕紀は悪くない。

俺が強く当たったのは何も相談してくれなかったことの寂しさからの八つ当たりかもしれない。


それから…、俺の周りはまた何もなかったように3人の生活に戻った。

コレで良かった。

初めから、何も変わっていない…。

何も…。


―本当に?


は?


―何も変わってない?


ウルサイ…!!


ほんとに何も変わってないんだよ…。



気のせいか最近、瑞樹の口数が少ない。

こうして3人で遊びに来ても、何故か黙りこくっている。

「…どうする?」

葉太がこの気まずい空気に気づいたように口を開いた。

「…」

俺も瑞樹も反応しない。

「俺服買いたい店あるんだけど、そこ…」

「俺さあ」

葉太の精一杯な言葉を遮ったのは瑞樹だった。

俺も葉太も瑞樹の方を見る。

「俺、沖田さんのこと好きなんだけど」

「え…!?」

瑞樹の唐突なセリフに俺らは思わず聞き返す。

「こないだ告った。」

「はあ??」

「いつ??」

「“あの日”。」

あの日…。

やけに胸に刺さるその言葉。

「好きな人いるってフラれたけどね」

「へぇ」

別に興味ないけど。

「へぇってそれだけ??」「は?」

「いい加減卒業したら?俺言ったよね?過去のこと引きずりすぎんのもどうかと思う」

「意味わかんねぇから。お前何が言いたいわけ?」

俺は気づいていた。

瑞樹が何を言っているのか。

でも俺にはどうしようもない。

気づかないフリをして自分をごまかすしかなかった。

「俺、紅輝は気づいてないっていうより、考えようとしてないって気がする…」

「葉太まで何言ってんだよ…。お前ら2人そろって意味わかんねんだよ。」

俺はそのまま家に帰った。



次の日1人の女子が俺らがたまってる席へ来た。

「阪田くん。これ委員会のなんだけど、こないだの委員会来なかったからプリントね。」

「あ、サンキュ」

「…う、ん」

何故かその女子はびっくりしたようだった。

「紅輝が優しくなったからじゃないの?」

「はあ?」

「前に比べてなんか雰囲気柔らかくなったもん。夕紀ちゃんがきてからかな。」

「…!」

俺はその名前を聞くと口を利けなかった。

葉太もハッと気づいたように自分の口を抑える。

何とか仲直りした、というかケンカも何もしていなかった。

「あ、ごめん!!」

「…」

「いいんじゃない?」

やっと喋ったと思った瑞樹は不機嫌だった。

最近ずっと機嫌が悪いようだった。

「紅輝、沖田さんに甘えすぎじゃないの?それに何回言ったらわかるの?過去のことまで引きずりすぎ。」

「あ?」

「沖田さんの気持ちも考えなよ。」

「は?どういう意味だよ」

「ほんとに気づいてないの!?」

「意味わかんねえんだよ!!」

「そこまで鈍感なのも病気だね」

瑞樹はそう冷たく言うと教室を出ていった。

その様子をずっと見ていた葉太も眉をしかめて俺を見た。

「俺は瑞樹みたいにキツく言うつもりないけど、紅輝が変わったのって夕紀ちゃんがそばにいてくれたからでしょ?夕紀ちゃんの気持ちも大切にしなきゃだめじゃないかなあ。」

葉太も教室を出ていってしまった。

「…」

狂い始めた世界が俺の心の傷を広げる。


俺はどうしたい…??

紫乃…答えてくれ。

君を守れなかった俺が、あいつの気持ちを考えられるわけない。


「…紅輝くん…」

その様子を見ていた夕紀はぽつりと呟いた。

知南は夕紀が呟いたのを聞いていた。

「夕紀ちゃんは阪田くんのこと好きなんだよね?」

「え!?何で!?」

「何でって違うの??」

知南はびっくりしたように問い返す。

「ちぃちゃんは鋭いなァ…」

夕紀苦笑いを浮かべながら、知南の方を見た。

「いつから?」

知南が問いかけると、夕紀は首をかしげてみせた。

「結構始めから好きだった気がする。」

「悩む必要ないんじゃない?好きでいていいと思う。」

「でも、紅輝くんが…」

「今阪田くんの気持ちは関係ないよ。夕紀ちゃんは阪田くんのこと好きなんだよね。そんなコト誰かに何か言われて取り消せるかなあ?」

「たぶんムリ。」

「でしょ。阪田くんがどう思おうと人を好きになるのはどうしようもないことなんだから、気にしなくていいと思う。そこまで脈ナシに思えないし。」

「え…?」

夕紀は驚いたように知南の顔を見た。

「普通、あんま興味ない人にあそこまで怒らないよ。阪田くんなんて特に感情表現がヘタクソだってヨーくん言ってたよ。それに裏切られたと思うのは夕紀ちゃんのことをそれだけ信じてたからじゃないかなあ。何にしても悩んでるヒマはないよ。ガンバレ。」

「…アリガト。そうだよね。行ってくる。」

知南は夕紀の背中を笑って見送った。

気づいたら知南の隣には葉太がいて、「ありがと」と知南に伝えていた。



俺は珍しく怒っている瑞樹を見て、少し気まずくなった。

葉太もあまり元気がない。

俺はその空気に耐えられずに、教室を出た。

「紅輝くん」

今最も聞きたくない声が俺の耳に届いた。

「何?」

そう言った俺の目は前の誰も寄せつけることのないものになっていた。

自分でもわかっている冷たい声も沖田夕紀を涙目にさせた。

「あ…あたしっ」

俺はストップをかけた。

そこで大声で話されても困る。


そして廊下よりはあまり人のいない休憩所へ行った。

俺は自動販売機のボタンを押しながら、沖田夕紀に問いかけた。

「で、何?」

「…」

確かにあんな勢いで来たのを止めてしまったら言いづらいだろ。

「んじゃ、また今度でいい?」

「待って!!」

その声に振り返らずに足を止めた。

「あたしっ本当に紅輝くんたちを騙してたわけじゃないの…―。ただ、言いそびれちゃって…。」

沖田夕紀もずっとそのことで悩んでいた…。

俺が考えていたよりずっと…―。

「そんなの知ってる。」

思わずぽつりと言ってしまった。

「え?」

当然のごとく聞き返される。

「沖田夕紀がっ、俺らを騙してないってことくらいわかってる。ただ納得いかなかったんだよ…」

めんどくさくなるとヤケになるのは俺のクセだ…。


初めて会った日から、ヤケになるほどめんどくさいヤツ。

でもいやじゃない。

これが自然になるほど大事なヤツだった。


沖田夕紀は何故かこっちを見ている。

「ん?何?欲しいの?ストロー開けちゃったけど。」

物欲しそうな顔をしている沖田夕紀に買った飲み物を差し出した。

「違うよっ」

「あ、いらないんだ。てかそろそろ戻りたいんだけど。」

「いるっ欲しいっ。」

沖田夕紀は手を出した。


俺はレモンティーのパックと外したストローをわたした。

沖田夕紀は受け取ったものの飲もうとはしなかった。

「あ.沖田夕紀に言おうと思ったことがあるんだけど。」

「え…?」

「俺もう沖田夕紀と仲良くできねぇから」

ジュースの落ちる音が耳に届いた。


これが俺の答え…。

沖田夕紀を泣かすことになっても取り消さないと決めた。

これで良かった。

これで…良かったんだよな、紫乃…。

俺は静かにその場を後にしようとした。



時計の針を逆の向きへムリに進めてしまった。

このまま進めてしまったら俺は、またコイツと仲良くなる。

俺はもう決めたんだよ…。

女とは仲良くならねぇって。


「あたしっ!!紅輝くんと仲良くなりたいんですっ」

「は…??」

いつも俺を呼ぶ沖田夕紀の声は大きすぎて、俺を引き止める。

「前からずっと…。」

俺がそれを拒否する権利はない。

だけど、

「ごめん…」

拒絶しなければ俺は壊れてしまう。

大切なものを失うのはもう嫌だった。


俺の時計の針はまたあの時の時刻をさしたまま止まってしまった。




次回、最終章です。




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