【第二章】
【第二章】
ガチャッ…
玄関扉の閉まる音がリビングに響いた。
「おかえりー」
母親と姉の声だ。
何やらニタニタしている。
まさか...!!
「ちょっとあんたいつの間に...」
「こら紅羽!」
姉の言葉を母が遮る。
ああ...もう完全にばれてる...。
「そー言えばさー.紅輝はー.彼女とかいんの?」
2人は目だけを横にやり、上目使いをしてくる。
この人たち絶対隠し事向いてない。
「アレ彼女でもなんでもないから。」
俺はそう言い捨てると、階段を上っていった。
背中に母と姉のガッカリした声が聞こえる。
見られてた...
俺はバタッとベッドに倒れ込んだ。
沖田夕紀を後ろに乗せて自転車をこいでいるところを...
俺は何でそのことを考えなかったんだろう。
あの時間は姉が帰ってくるのに。
まあ必死だったから仕方ないか...
俺はむくっと体を起こした。
何で必死だったんだ...??
2ケツするのは初めてでもないし、瑞樹と葉太2人を乗させられたこともある。
女だってあるし...
俺は答えを見つけだすのが怖くなった。
何故か気づいちゃいけない気がしてならなかった。
俺はベッドから下りるとカバンの中を探った。
「あれ?」
思わず声を出していた。
携帯が見つからない。
その上見たことのないモノが入っている。
電気を付けていなかったから部屋は薄暗く、そのモノが何なのかわからない。
俺は電気のスイッチに手を伸ばした。
その不思議なモノは2つ入っていて、1つ開けてみると中から財布が出てきた。
一緒に入ってたカードには
happy birthday
from 不二 山崎
と書いてあった。
不二というのは瑞樹の名字で山崎は葉太だ。
そうか...今日は誕生日だった...。
じゃあこの袋は...??
中を開けると結構な量のキャンディが入っていた。
この袋のカードには、
突然すみません。
今日阪田くんが誕生日だと不二くんたちに聞いたので大したモノじゃないんですが、一応プレゼントです。
今朝は本当にありがとうございました。
沖田夕紀
と書いてあった。
袋やカードが同じところを見ると学校で俺がいない間にやったのだろう。
お礼くらいさせてくれりゃ良かったのに、アイツらも沖田夕紀もー。
よく見ると携帯もカバンの奥にあった。
開いてみると新着メールが24件。
「はあ!?」
俺は叫んでしまった。
イタズラでもない限りこんなにメールが来たのは初めてだ。
というかイタズラでもこんだけ来たことはない。
呆然と携帯の画面を見つめていると、また新着メールが来たようで、手のひらが震えた。
そのメールを見てみるとクラスの女子だった。
他も全部クラスのやつらからだった。
ー誕生日も悪くないかな。
なんて俺はガラにもないことを思ってみた。
やっぱり今日の俺は少しおかしい。
「昨日はサンキューな」
俺は朝一で2人にお礼を言った。
「あれ?珍しいじゃない。紅輝が素直にお礼言うなんて。」
瑞樹にバカにされるのは目に見えていたが、ここまで冷静に茶化されると少し腹が立つ。
「いや、何も言ってないのに買ってきてくれたし。...その...嬉しかった。」
「明日台風でも来るのかな!?」
さりげなく言ったのは葉太だ。
決してイヤミで言ったわけじゃないことは知っている。
葉太は瑞樹と違ってそんなイヤミを言うやつじゃない。
というかコイツは皮肉とかそういうの思いつかないはずだ。
「俺の友達ってさりげ失礼じゃない?」
俺はボソッと言うと、少し笑った。
「おはよー」
「あ!沖田さんおはよー」
沖田夕紀の声に一番早く返事をしたのは葉太だ。「おはよー」
瑞樹も言葉を返す。
瑞樹と沖田夕紀はこっちをチラッと見てくる。
葉太は自分の世界に入っている。
「…はよ」
挨拶なんて慣れない俺は聞こえないようにボソッと言ったが、ちゃんと聞こえていたみたいだ。
2人はニコッとして、葉太はビックリしたようにこっちを見た。
「今、紅輝あいさつした!?」
「したねー」
「しましたねー」
瑞樹と沖田夕紀は葉太の失礼な質問に同時に答えた。
…薄ら笑いを浮かべた同じ表情で。
この時まさかクラス全員がこっちを注目していたなんて、予想も出来なかった。
「そういえば紅輝、お礼は何くれるのかな?」
「はあ!?何でだよ。誕生日に返すじゃダメ!?」
俺は瑞樹の唐突な質問に少し戸惑った。
「それでもいいけど…ねえ」
瑞樹は2人の方を向くと笑って見せた。
2人も笑顔を返す。
「沖田さんにあげるの抵抗あるでしょ」
「う…」
「だから軽くお茶でもおごってもらおうかなって話してたの」
「…そしたらチャラだよな?」
「もちろん!」
3人でハモれるなんてもう完全に仲良くなってるし。
てか葉太は沖田夕紀のこと好きなんだよな…??
これってチャンスなんじゃ…。
「日曜の十時、23条の駅にしようぜ。」
「あれ?何か珍しく張り切ってない?」
そりゃ…まあ…。
親友(お前)の恋が実るチャンスだし。
「ま、いーや。行きたい店あるから当日はソコで。」
葉太に行きたい店?!
「沖田さん女の子1人だよ?誰か誘っちゃえば?」
「え…大丈夫なんですか?」
はあ!?何を話してんだアイツ!
「俺が破産するからダメ!」
「だってさ」
笑いに包まれた。
今までと違う感覚。
だけど嫌じゃない。
「ヨーくん!!」
何かちっさい女子が教室の入り口で誰かを呼んでる。
俺らのクラスにヨウなんていたっけ??
「はい!」
ガタッと立ち上がった葉太は教室入り口の女子へかけよった。
「えぇ!?」
俺たち3人は思わず大声を出していた。
もちろん周りも気づいている。
「……で…うん…ありがと…そう」
会話は途切れ途切れにしか聞こえない。
「…今の…誰?」
ごめんねー、と戻ってきた葉太に沖田夕紀は恐る恐る聞いた。
すると葉太は照れくさそうに頬を赤らめると
「んー、カノジョ。なっ?」
なっ?って…
「初めて聞いたから…」
俺と瑞樹は声を揃えて言った。
俺はただ、呆然としていた。
「あ!!ごめんごめん。ついこないだ告られてさ、実は俺もあのコきになってたし。」
「へ、え…」
言葉が出てこなかった。
あのちっさいのがヨータのカノジョ…。
てかじゃあ沖田夕紀は!?
「おい!!」
教室に予鈴が響いた。
俺の声は入ってきた教師の声にかき消された。
教室の片隅に固まっている女子の噂話はいつものことだー。
「ねーねー、俺思ったんだけど。」
放課後、瑞樹がハッと思い出したように言った。
「沖田さんと紅輝、家が近いならコレからみんなで一緒に帰れば?」
「はあ?」
「いーじゃん、どーせ帰宅部だし」
「あたしは別にいいよ〜。」
「沖田夕紀!?」
「いいじゃん!決まり〜」
「おいっ待て!」
「しかとー」
瑞樹はそう言って俺に近づいてきた。
「男がいつまでも引きずるモンじゃないよ。」
耳元でそうささやくと、鞄を背負った。
何も言い返せなかった。
俺はもう誰も好きになんねぇ。
女には近寄らねぇ。
俺の時を示す針は止まったままだった。
見える景色もあのころのまま…。
「悪いけど、俺今日ちぃと帰るわ」
葉太の声にハッと我にかえった。
「ちぃ?」
瑞樹と沖田夕紀の声が重なる。
「カノジョでしょ」
「へへっ」
俺が聞くと葉太は照れくさそうにそう言って教室を出ていった。
それを見ていたクラスの女子は何やら小声で相談し、教室を出ていった。
沖田夕紀はそれを見ていた。
俺らも帰るかーと話していると沖田夕紀が
「ちょっと待って」
と遮った。
そして鞄も持たずに教室を出ていった。
俺はその時の険しい沖田夕紀の顔を見て、嫌な予感がした。
「よ-た…くん。」
こんなに走ったのは久しぶりだった。
けど今はそれどころじゃない。
「夕紀ちゃん?!どうしたの!?そんな息切らして…!!」
「…彼女…さんは??」
「まだなんだよね…遅いなあ」
ーヤバい。
あたしはまた走り出した。
「夕紀ちゃん?!」
クラスで固まっていた女子たちの会話。
いつも葉太くん、瑞樹くん、阪田くんの3人の話だった。
今日の朝、あの子がきた途端から急に険しい顔をし始めた。
そんで葉太くんが教室を出た直後にあの人たちは走った。
あの子が危ないー!!
あたしは考えながら走ってたから思わず見落としそうになった。
いた!!
中庭…。靴に履き替えて向かってたんじゃ時間がないっ。
「ねえ!!」
思いっきり叫んだ。
人が通らないここにあたしの声は虚しく響いた。
ガラスの向こうまで届かない。
でも…あの人たちはあたしに背を向けてるから気づいてないけど「ちぃ」はあたしに気づいてる。
ガラス戸が開かないのを確認してあたしはまた走り出した。
そしてすぐに立ち止まり部活組の靴を借りて窓の外へ飛び出した。
あたしに靴を貸してくれた人たちは、ビックリしたように体育館へ向かっていった。
あたしは走ってちぃのトコロヘ行った。
「ねえ葉太くんと別れなよ」
あの人たちの声が届いた。
「嫌…です…」
ちぃの声もする。
ちぃやあの人たちの姿が見えたけどあの人たちはあたしに気づいてない。
「あんたみたいなチビ、ふさわしいと思ってんの!?」
怒鳴り声が響いた。
あたしの足は自然に動いた。
「やめなよ!!」
止めに入ったあたしは自然とちぃをかばっていた。
「そんなん葉太くんが決めることでしょ。葉太くんもこの子のこと好きなんだからいいじゃない。悔しかったら自分で告白すればよかったんじゃないの?」
スラスラと言葉が出てくる。
「はあ!?何しゃしゃってんの!?正義の味方気取り!?」
「黙っておとなしくしてなよ」
「てゆーかあんたもムカつくんだよね。あの3人とベタベタしスギ。」
「あの3人?」
空気読めてないことくらいわかってる。
けど何で別のことでキレられてんの??
「は??知らないのにあんな仲良くしてたの??」
「あのイケメントリオだよ」
イケメン??ますますわからないよ。
「王子さまな瑞樹くん、かわいい弟系な葉太くん、そしてクールなのに3人でいるときの笑顔がたまらない紅輝くん。」
「ええ!?」
「何よ。」
「わかった!?あなたは確かに顔がいいけど、あの3人には近づかないでちょうだい」
「それはイヤ。」
自分でもびっくりした。
「何であんたたちに友達まで制限されなきゃいけないの!?」
声を張り上げていた。
“あの日”と同じ言葉を繰り返した。
「何言ってんの!?」
怒って手を振り上げた。
あたしは背中のちぃをギュッとつかんだ。
ー叩かれる…!!
パシッ。
あれ??
恐る恐る目を開くと誰かがあたしの前にいた。
よく見るとたたこうとしたあの人たちの手を止めている。
「女って怖えー。やめた方がいいよ…。」
あの人たちは顔を真っ赤にして走り去った。
てゆーかこの声は…
「阪田君…??」
今になって腰が抜けた。
「あ、大丈夫だった?てか彼女さんは葉太のトコ行ってあげて。」
コクっとうなずくと涙ぐんでお礼を言った。
そして走ってげた箱まで行ったようだった。
「阪田くん…何で…??」
「んー??気になったから―。」
と言うとあたしの手を引き立ち上がらせてくれた。
鞄も持ってきてくれたみたいだった。
ムチャすんなぁコイツ。
俺はただそう思った。
「帰るぞ。靴返してこい。」
沖田夕紀はビックリしたように問いかけてきた。
「何でわかったの!?」
というと体育館の方へ走っていった。
夕日がすごくきれいで、俺の目に焼きついた。
時計の針は静かに動き出し、止まっていた風景もいつしか変わり、沖田夕紀の笑顔が頭から離れなかった。
ども、連続(?)投稿してみました桜華です。
とりあえず…
受験生だけど頑張ります←




