【第一章】
【第一章】
この世の中に「運命」なんてあるわけない。
そんな子供だましを信じさせる大人たちは、自分自身がそれに巡り会ったのだろうか。
近頃そんなことを考える。そんな風に醒めてる俺は、今日17の誕生日をむかえる。
正直、誕生日なんてくだらない。
本人以外にはただの日常の一日だし、第一、年をとっていくことがめでたいのかさえ疑問に思う。
今日は朝から何か憂鬱だ。
嫌な予感がする。
俺はそんな予感を振り切ろうとしたが、憂鬱な気分は消えることなく、自然と重い足取りになり学校に向かった。
こういう時ほど嫌な予感は的中する。
遅刻寸前のため近道を使うと、薄暗い路地で女子がからまれている。
俺はそこであることに気づいてしまった。
ーからまれている女子の制服は自分の学校のものー。
それを見て色々めんどくさくなった俺はその場で方向転換をしてみた。
…もちろんそんなことが許されるわけがない。
首ねっこを掴まれ、動きをとめられる。
もともと喧嘩は好きではない方だが(理由:めんどくさいから。)、売られた喧嘩は買っていた。
ただ、今は気分が乗らないので、「すんません」とぶっきらぼうに言って俺の襟を掴んでいる手からすりぬけた。
そいつらは一瞬顔をしかめると俺に向かってくる。
まあ当然のことだが。
「っざけんな!!ナメてんじゃねぇよ!!」
怒鳴り声が路地に響く。
俺は向かってくる拳をかわし、女子の手首を掴む。
そして、ひたすら走ってその路地から抜けた。
その手首を握ったまま…。
路地を抜けるといつもの通りに出た。彼女はうつむいたまま、口を開いた。
「ごめんなさい…」
「いや…別にいいけど…。」
面と向かって謝られると怒りづらい。
「ありがとうございました。」
「今度から気をつけなよ?」
んじゃ、と俺はその空気に耐えきれずその場を後にしようとした。
「名前!!教えて下さい!!」
その声の大きさに驚いて振り返ると初めて彼女の顔が見えた。
白い肌に長い黒髪。大きくクリッとした瞳に真っ赤な唇。すらっと伸びる身長は170cmくらいあるのだろうか。なおかつモデルのようなスタイルだ。ナンパされてもおかしくない。むしろナンパされないなんて方がありえないだろう。
俺が黙っていると彼女は不安そうな顔をして
「ごめんなさい、失礼でした。」
と言う。俺はハッと前を向くと、口を開いた。
「いいんだけど...。そこまで感謝されるほど大したことしてないし...」
「でも、名前くらいは知っておきたいです。私の救世主ですから...」
「だからあ…。」
俺は一旦そこで言葉を切った。それは長引きそうだなと感じたから。まず冷静になろうと一呼吸おいた。
そして、口を開いた。
「阪田...だよ」
めんどくさくなるとヤケクソになるのは俺の癖だ。
―それが2人の出会いだった―
ただ逃げただけ、というなんと悲しい出会いだろう。
ほら、おとぎ話のような「運命」の出会いは現実には存在しない。
そして何故か偶然に偶然が重なった。
9月2日、朝。
俺は転入生と騒ぐ周りそっちのけで寝かけていた。真夏をすぎた爽やかな風が頬をすべり眠気を誘う。
「沖田夕紀です。こっちへは引っ越してきたばっかりなので…。よろしくお願いします。」
声にふと黒板の方を見ると見覚えのある顔があった。
白い肌と長い黒髪。くりっとした瞳に真っ赤な唇。すらっと伸びる長身はモデルのような体型を強調している。
ハッと記憶と一致した。
同時にガタンと音がして座っていた椅子が倒れ、気がついたら立ち上がっていた。
「アンタ!!朝の…!!」
途中で言葉が途切れたのは驚きなのか、混乱なのか。どちらにしても、この状況を把握しきれていないということは自分でもわかっていた。
「紅輝どーした!?」
「一目惚れかあ??」
周りからはもちろん声が飛び交う。
「サ、サカタくん…!?」
彼女の驚いた顔がなんとなく目に焼き付いた。
「で、どういう関係なわけ??あの沖田さんと。」
当然あれだけ目立てば取り調べを受けるわけで…。
「朝、あの子がからまれてたんだよ。だから一緒に逃げたの。」
「なんだと!?お前はどうしてそうモテるんだァ!!」
素直に答えても、この反応だし。
「いや別に今の話題モテるとか関係ねぇよ。てかそんなにモテてねえよ。」
「いーやっ、断然トップだろ!」
「何のだよ。てか何で競ってんだよ」
こいつのテンションにはついていけない…。
こうやっていつもツッコまされる。
別にイヤじゃないのだけど。
「クスッ、つまり紅輝は運命の出会いをしちゃったわけだ。」
「バーロ…。瑞樹、そんなんありえねえよ。ただ偶然に偶然が重なっただけだ。」
「でも、偶然って何回も続くもんじゃないでしょ。何回もあったら偶然って言わなくない?」
うっ...。確かに...。
返す言葉が見つからない。俺の親友の瑞樹は揚げ足を取るのがとても上手い上に的確なツッコミを入れてくる。
俺の唯一の天敵だ。
スキを見せられない。
だが俺と瑞樹の他に最初に話していた葉太は3人の中で一番バカだ。
だからスキを見せても問題ない。
「俺沖田さんトコ行ってくる!!」
急に立ち上がった葉太に、俺らはひらひらと手を振った。
「行ってらっしゃーい」
葉太は彼女のトコに走って向かった。
周りは女子ばかりだ。
沖田夕紀は楽しそうにしている反面、少し戸惑った様子でもあった。
葉太がその中に入ると女子たちも一層盛り上がった。
葉太は結構女子からも好かれている。
沖田夕紀は葉太を見て笑っていた。
「俺やばいっ!沖田さんとめちゃ仲良くなったわ!」
「ヨータ見て笑ってくれてたもんね」
「そーそー!笑い方がカワイくてさあ。」
帰り道、いつも通り自転車に乗りながらくだらない話をしていた。
ただいつもと違うのは話の内容が女のコトだった。
俺はそういう話は好きじゃない。だから
「じゃあな」
と言うといつもの曲がり角をまっすぐ進んだ。
「あれ?紅輝こっちじゃないの?」
もちろんそんな瑞樹の声が聞こえないわけじゃない。
ただ、こっちじゃなきゃいけないような気がして。
惹きつけられるように勝手に足が進んでいっただけ。
なぜかわからないけど…。
あの黒髪が風になびいている。
その長い髪がサラサラしているのは遠くから見てもわかる気がする。
彼女は何故か立ち往生している。
あまり関わりたくないというのが本心だが、困ってるヤツをほっとけるほど情がないわけじゃない。
俺は勇気をだして声をかけた。
「沖田...さん??」
「あっ!サカタくん!?」
その笑顔はやっぱり憎めない。大人っぽい綺麗な顔立ちなのに、笑うとどこか幼さを残した無邪気な笑顔になる。
昔大好きだった女の子を思い出した。その子もそんな笑顔だった。
「どうしたの?」
「道に...迷っちゃった。」
「...どこ??」
少しため息まじりに言ってみせた。
その声の冷たさに自分でも驚いた。
すると彼女は涙目になって
「いいよいいよ!1人で行くから!」
すごくあせった様子になった。
「怒ってないから言って?」
俺は軽く深呼吸して冷静になり、静かな声で聞いた。
涙ぐまれると俺が悪いみたいだ。
「西町の夕陽ヶ丘...」
俺んちの方だ。
てかすぐ近くだ。
「でもやっぱり悪いし、いいよ!」
「いいから黙ってついてこいって!」
今思うとよくもまぁあんなこっぱずかしいことをやったもんだ。
そして俺は、沖田夕紀を後ろに乗せて自転車をこいだ。
沈みかけた夕日の方へ...。
赤く染まった町の中で、彼女の頬もまた赤く染まっていたことに俺は気づかなかった。
初めまして、桜華と申します。
私自身運命の出会いとかないので最早これは夢…ですかね(笑)
これから頑張って投稿していこうと思います!!
感想などよろしくお願いします(^-^)/




