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こっちの方でも、ご縁がありませんでした。

作者: 香月由良
掲載日:2026/08/05

佐和子と和真はふたつ隣の町に住んでいる。

3週間ほど電話で関係を続けていた。

好きなアニメを共有し合ったりと、毎日平気で2時間ほど長電話をしては、会える日のために肉体改造をするため、筋トレがもはやお互いの趣味と化していた。


「アプリで出会って会いたいと思ったの、佐和子ちゃんが初めて。」


甘い言葉もふんだんに投げかけてくる。


そして、会った当日、カラオケ店で歌っている時に、佐和子の方から痺れを切らして、含み笑いを込めてこう言った。


「和真くんから言う?わたしがキメちゃっていいけど。」


「俺と付き合ってください。」


最愛のあの人を越えられるかもしれない。


「同棲して貯金して結婚も考えている。」

「佐和子ちゃんの全てを愛せる自信しかない。」


付き合っても尚、甘い言葉が揺蕩う。

何度か50分の道なりを運転して逢いに来てくれた。

こころで信頼しきった頃、すれ違いが起きた。


「友達からパチンコ行こうって言われたけど、行ってもいいかな?」

「もちろん。楽しんできて。」

「でも21時頃電話できたら、嬉しいな。」


毎日の日課の電話を支えにして楽しみにしてるといっていた和真。

佐和子も同様に楽しみにしていた。

当たり前に電話はくるものと思っていた。毎日していたのだから。


しかし電話について何の連絡もない。

21時を過ぎても。

来たのは雑談が2、3通だった。


そして、待ちわびた21時にやっと返ってきたのは、いくら勝っただの友人がいくら勝っただの、だ。

佐和子と和真が作った2人の日課が壊れた。


それだけが直接的な原因ではなかったが、佐和子のこころは奈落に落とされた。

「この人になら話してもわかってくれる。」

甘かった。


一日中未読スルーをされ、佐和子のこころはどんどん傷だらけになっていった。

オーヴァードーズを繰り返していた。

「鬱でしんどい」「価値が見いだせない」

送るLINEに既読はつかない。


いつもの時間に少し長めなLINEが届く。

「佐和子ちゃんって依存体質なの?」

「俺は一緒にいる時は全力で楽しむけど一人の時間も楽しみたい」


もちろん、佐和子は友人との時間に行かないでなどいったこともない。

佐和子にとって、毎日の電話は紛れもなく愛情表現であり、こころの安定剤だったことは確かだ。

和真も「電話が楽しみで支えになっている」と言っていた。


「別れよう。」


そう言われてオーヴァードーズで呂律が回らない中別れたくないというが、言葉につまる。


くれた画像もあげる予定だったトマトジュースも、もう無駄だ、あっけなく関係は終わった。


泣いていた。しかし思うことがあった。

数年引きづった、あの元彼。

一生分愛したと思えた、あの元彼。


比較した挙句、「どうでもいい」と思えた。

あんな身を引きちぎるような想いは繰り返したくない。

そして和真はあの人をこえられなかった。それだけが事実。


そっとブロックした。

もうわたしの人生に必要がない。

感謝の言葉すら嘘に思えて何も思うことはない。


また次の運命の人を探すまでだ。

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