こっちの方でも、ご縁がありませんでした。
佐和子と和真はふたつ隣の町に住んでいる。
3週間ほど電話で関係を続けていた。
好きなアニメを共有し合ったりと、毎日平気で2時間ほど長電話をしては、会える日のために肉体改造をするため、筋トレがもはやお互いの趣味と化していた。
「アプリで出会って会いたいと思ったの、佐和子ちゃんが初めて。」
甘い言葉もふんだんに投げかけてくる。
そして、会った当日、カラオケ店で歌っている時に、佐和子の方から痺れを切らして、含み笑いを込めてこう言った。
「和真くんから言う?わたしがキメちゃっていいけど。」
「俺と付き合ってください。」
最愛のあの人を越えられるかもしれない。
「同棲して貯金して結婚も考えている。」
「佐和子ちゃんの全てを愛せる自信しかない。」
付き合っても尚、甘い言葉が揺蕩う。
何度か50分の道なりを運転して逢いに来てくれた。
こころで信頼しきった頃、すれ違いが起きた。
「友達からパチンコ行こうって言われたけど、行ってもいいかな?」
「もちろん。楽しんできて。」
「でも21時頃電話できたら、嬉しいな。」
毎日の日課の電話を支えにして楽しみにしてるといっていた和真。
佐和子も同様に楽しみにしていた。
当たり前に電話はくるものと思っていた。毎日していたのだから。
しかし電話について何の連絡もない。
21時を過ぎても。
来たのは雑談が2、3通だった。
そして、待ちわびた21時にやっと返ってきたのは、いくら勝っただの友人がいくら勝っただの、だ。
佐和子と和真が作った2人の日課が壊れた。
それだけが直接的な原因ではなかったが、佐和子のこころは奈落に落とされた。
「この人になら話してもわかってくれる。」
甘かった。
一日中未読スルーをされ、佐和子のこころはどんどん傷だらけになっていった。
オーヴァードーズを繰り返していた。
「鬱でしんどい」「価値が見いだせない」
送るLINEに既読はつかない。
いつもの時間に少し長めなLINEが届く。
「佐和子ちゃんって依存体質なの?」
「俺は一緒にいる時は全力で楽しむけど一人の時間も楽しみたい」
もちろん、佐和子は友人との時間に行かないでなどいったこともない。
佐和子にとって、毎日の電話は紛れもなく愛情表現であり、こころの安定剤だったことは確かだ。
和真も「電話が楽しみで支えになっている」と言っていた。
「別れよう。」
そう言われてオーヴァードーズで呂律が回らない中別れたくないというが、言葉につまる。
くれた画像もあげる予定だったトマトジュースも、もう無駄だ、あっけなく関係は終わった。
泣いていた。しかし思うことがあった。
数年引きづった、あの元彼。
一生分愛したと思えた、あの元彼。
比較した挙句、「どうでもいい」と思えた。
あんな身を引きちぎるような想いは繰り返したくない。
そして和真はあの人をこえられなかった。それだけが事実。
そっとブロックした。
もうわたしの人生に必要がない。
感謝の言葉すら嘘に思えて何も思うことはない。
また次の運命の人を探すまでだ。




