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異世界ダンジョン防衛配信中の孤独なオメガ、最強アルファに運命の番だと言われて溺愛される件  作者: 水凪しおん


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第13話「永遠に響く鼓動と極彩色の未来」

 ルピナス遺跡の最深部、かつては死の静寂だけが支配していた「心臓の間」は、今や生命の躍動を伝える柔らかな光と、心地よい魔力の旋律に満たされていた。


 中央に鎮座する巨大な魔導クリスタルは、エリスの清冽な蒼とレオンの情熱的な黄金が混ざり合い、言葉では言い表せないほど美しい琥珀色の輝きを放っている。


 エリスは、そのクリスタルの前に立ち、自身の内側に流れる温かな感覚に意識を向けた。


 結魂の儀式を経てからというもの、彼の魂はレオンの存在を、まるで自分自身の鼓動のように明確に捉えることができるようになっていた。


「……ねえ、レオン。聞こえるかな。遺跡が、歌っているみたいだ」


 エリスが隣に立つレオンを見上げて、穏やかに微笑んだ。


 彼の銀色の髪は、クリスタルの光を反射して虹色に輝き、その瞳にはかつての孤独の影は微塵も残っていない。


 レオンは、エリスの細い肩を引き寄せ、愛おしげにその髪を撫でた。


「ああ、聞こえるぜ。君が幸せを感じているから、この場所もそれに応えてるんだ。ここはもう、ただの石造りの箱じゃない。俺たちの命そのものなんだから」


 レオンの手のひらから伝わってくる、力強く一定な温度。


 それは、エリスが数1000年の時間をかけてようやく手に入れた、何よりも確かな「生」の証明だった。


 今日は、遺跡が「永世中立の聖域」として正式に登録されてから1周年を記念する祭りの日だった。


 遺跡の外縁部には、世界中から集まった人々が色とりどりの旗を掲げ、平和を祝う歌を歌っている。


 エリスは、いつものように魔導パネルを空中に展開し、最後の「防衛配信」を開始した。


 いや、それはもう「防衛」のためのものではない。


 世界中に向けて、幸福を分かち合うための「招待状」だった。


「……皆さん、こんにちは。ルピナス遺跡の守護者、エリスです」


 エリスの声は、魔導ネットワークを通じて世界中の街角、家庭、および人々の心に届けられた。


 画面の向こう側では、何千万という人々が息を呑んで彼の姿を見守っている。


「1年前、私はこの場所で、1人の男に出会いました。彼は私の閉ざされた世界を強引にこじ開け、独りでいることが当たり前だと思っていた私に、誰かと共に歩む喜びを教えてくれました」


 エリスは少し照れくさそうに視線を落としたが、すぐに顔を上げ、カメラの向こう側にいる全ての人に向けて真っすぐな瞳を向けた。


「孤独は、守るための盾にはなりますが、心を満たすことはできません。私はこの遺跡を守り続けることで、自分自身を失っていました。でも、レオンが私を見つけてくれた。および、皆さんが私たちの物語を見守ってくれた。そのおかげで、私は今、こうして笑うことができます」


 エリスの言葉に合わせるように、クリスタルから溢れ出した魔力が、遺跡全体を包み込む巨大な光の輪となった。


 その光は、通信を通じて画面を見ている人々の元にも、微かな温もりとなって届けられた。


 コメント欄には、数え切れないほどの感謝と祝福の言葉が、光の滝となって流れ落ちていく。


 『おめでとう、エリス様!』


 『二人の愛が、世界を変えたんだ』


 『これからもずっと、その笑顔を見せてください!』


 エリスは、流れる文字を一つ一つ大切に読み上げ、隣で誇らしげに胸を張るレオンの手を握った。


「これからのルピナス遺跡は、誰かを拒絶するための場所ではなく、誰もが自分の中の『光』を見つけるための場所にしたいと思っています。知識も、魔法も、およびこの愛も、独占するのではなく、分かち合うことで、未来へ繋いでいきたい」


 レオンが、エリスの言葉を引き継ぐように口を開いた。


「俺からも一つ、言わせてくれ! 世界中のアルファもオメガも、それ以外のみんなも! 運命ってのは、自分で掴み取るもんだ。俺とエリスが証明した。どんなに古くて凍りついた場所でも、情熱一つで春を呼べるんだってな!」


 レオンの力強い宣言に、遺跡の外では地響きのような歓声が上がった。


 それは、古い偏見や差別を打ち破り、新しい時代の幕開けを告げる号砲のようだった。


 配信を終えた後、二人は「心臓の間」の静寂の中で、しばらくの間寄り添い合っていた。


 祭りの喧騒は、分厚い石壁を通じて心地よい振動として伝わってくる。


 エリスは、レオンの胸に耳を当て、その深くて重い鼓動を聴いた。


 (ずっと、ずっと、こうしていたい。この音が止まるその日まで、いや、止まった後も、私たちの魂は一つだ)


 エリスの心の中に溢れる想いは、言葉にする必要さえなかった。


 結魂によって繋がった回路が、彼の愛情をそのままレオンへと伝えていたからだ。


 レオンは、エリスを抱きかかえ、玉座へと座らせた。


 そして、その足元にひざまずき、最初に出会ったあの日と同じように、一輪の青いバラを差し出した。


「エリス。数1000年の孤独を耐え抜いて、俺を待っていてくれてありがとう。これからの数1000年は、俺が君を世界一幸せなオメガにしてやるよ」


「……気が長いね、お前は。でも、悪くない。お前となら、どんなに長い時間も、一瞬のように感じられそうだ」


 エリスはバラを受け取り、その香りを深く吸い込んだ。


 レオンのフェロモンと混ざり合った花の香りは、エリスにとって、この世で最も愛おしい「家」の香りだった。


 二人は、黄金と蒼の光が交差する中で、静かに唇を重ねた。


 古代の遺跡が紡ぎ出した新しい伝説は、今、最高に幸福な結末を迎え、および永遠へと続く物語へと昇華していった。

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