第7話 候補生たちのオーラに圧倒される
受付を終えた優ちゃんは、番号札を胸に貼りながら、控室へ向かっていった。
私は付き添い用の待機スペースに座り、会場の様子を眺めていた。
――と、そのとき。
「すみません、通ります!」
スタッフに誘導されて、数人の候補生が横を通り過ぎた。
その瞬間、空気が変わった。
まるでステージのライトを浴びているかのような、強い存在感。
背筋が伸びていて、歩き方も綺麗。
髪もメイクも完璧で、まるでアイドルそのもの。
「……すご……」
思わず声が漏れた。
その中の一人が、ちらりとこちらを見た。
目が合った瞬間、私は息を呑んだ。
(え、なにこのオーラ……)
その子はすぐに視線を戻して歩いていったけど、残った余韻がすごい。
「ひよりちゃん、びっくりしてる?」
隣に座っていたギャルっぽい付き添いのお姉さんが笑った。
「え、はい……。なんか、みんな……プロみたいで……」
「でしょ? あの子たち、たぶんダンススクールの上位組だよ。
毎年こういう子が受けに来るの」
「へぇ……」
私は思わず優ちゃんの方を見た。
控室の奥で、優ちゃんは縮こまって座っていた。
(優ちゃん、大丈夫かな……)
心配になって立ち上がろうとしたとき――
「次のグループ、準備お願いします!」
スタッフの声が響いた。
控室の扉が開き、数人の候補生が出てくる。
その中に、優ちゃんの姿もあった。
「優ちゃん……!」
私は思わず声をかけた。
優ちゃんは、ぎゅっと唇を噛みしめながら私を見た。
「……ひよりさん……」
「大丈夫! 落ち着いて!」
「……うん……」
優ちゃんは小さく頷いたけど、顔は真っ青だった。
そのとき、後ろから別の候補生が声をかけてきた。
「大丈夫? 緊張してるの?」
振り返ると、ふわっとした雰囲気の女の子が立っていた。
大きな瞳に、柔らかい笑顔。
まるでお人形みたいに可愛い。
「あ……はい……」
「私も緊張してるよ。でも、一緒に頑張ろ?」
その子は優ちゃんに優しく微笑んだ。
(あ、この子……いい子だ)
胸の奥が少し温かくなった。
「桐生心愛って言います。よろしくね」
「白石……優です……」
「優ちゃん、可愛い名前だね!」
心愛ちゃんは、自然に優ちゃんの緊張をほぐしていた。
(すご……。この子、癒し系だ……)
私は感心しながら二人を見ていた。
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そのとき――
控室の奥から、ひときわ強い視線を感じた。
振り返ると、一人の女の子が壁にもたれて立っていた。
黒髪のロング。
無表情で、静かに周囲を観察している。
誰とも話さず、ただ一人でいるのに、存在感が圧倒的だった。
(……あの子、なんか……すごい)
胸の奥がざわついた。
でも、このときの私はまだ知らなかった。
**その子こそが、後に私の“推し”になる存在――黒瀬瑠歌だということを。**
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「白石優さん、どうぞー!」
スタッフに呼ばれ、優ちゃんがステージへ向かう。
「優ちゃん、頑張れー!」
「……うん!」
優ちゃんは震える足で歩きながら、最後に私へ小さく手を振った。
私は胸に手を当てた。
(大丈夫。優ちゃんはできる)
そう信じていた。
――でも、このあと。
優ちゃんの審査よりも、私の人生を変える“出会い”が待っているなんて。




