第5話 当日朝、陽キャはテンション高め
オーディション当日の朝。
私は目覚ましが鳴る前に、ぱちっと目を開けた。
「よっし! 今日も元気にいきましょー!」
いつも通りのテンション。
いや、いつもよりちょっと高いかもしれない。
だって今日は――
**優ちゃんの夢の第一歩の日**なのだ。
私は制服に着替えながら、鏡の前で髪を整えた。
別に私が審査されるわけじゃないけど、付き添いとして失礼のないようにしたい。
「よし、完璧!」
軽くポーズを決めてから、家を出た。
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駅前で待ち合わせしていた優ちゃんは、すでに来ていた。
でも――
「……おはよう、ひよりさん……」
顔色が真っ白だった。
「優ちゃん!? 大丈夫!? 寝た?」
「……ほとんど……」
「緊張しすぎて眠れなかったやつだ!」
私は優ちゃんの肩を軽く叩いた。
「大丈夫大丈夫! 私がついてるから!」
「……ひよりさんは、なんでそんなに元気なんですか……?」
「え? 朝だから?」
「……意味がわからない……」
優ちゃんは呆れたようにため息をついたけど、その表情は少しだけ緩んでいた。
(よし、ちょっとは落ち着いたかな)
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電車に揺られながら、私は優ちゃんに話しかけた。
「ねえねえ、今日って何するの?」
「……一次審査は、歌とダンスの基礎チェック……」
「歌とダンスかぁ。優ちゃんはダンス得意だもんね!」
「……うん。でも、歌は……普通」
「普通なら十分だよ!」
「……ひよりさんは、なんでそんなにポジティブなんですか……?」
「え? ポジティブじゃないと人生損するじゃん?」
「……ひよりさんみたいになりたい……」
優ちゃんがぽつりと呟いた。
私は少し驚いて、優ちゃんを見た。
「優ちゃんは優ちゃんでいいんだよ。無理に変わらなくていい」
「……でも……」
「優ちゃんの良さは、優ちゃんの中にあるんだから!」
優ちゃんは目を丸くしたあと、ふっと笑った。
「……ありがとう」
「任せて!」
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会場の最寄り駅に着くと、すでに人が多かった。
駅前には、同じオーディションに向かうであろう女の子たちが集まっている。
みんな可愛い。
みんなオーラがある。
「……ひよりさん……」
優ちゃんが不安そうに私の袖を掴んだ。
「大丈夫! 優ちゃんも可愛いから!」
「……ひよりさん、そういうの軽く言う……」
「本気だよ?」
優ちゃんは顔を赤くして俯いた。
(かわいい……!)
私は心の中で叫んだ。
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会場に近づくにつれて、空気が変わっていく。
緊張と期待が混ざったような、独特の雰囲気。
「ここが……オーディション会場……」
優ちゃんは息を呑んだ。
私は深呼吸して、優ちゃんの手をそっと握った。
「行こっか」
「……うん」
その瞬間、優ちゃんの手が少しだけ震えた。
(大丈夫。私がついてる)
私はそう思いながら、会場の扉を開けた。




