第16話 陽キャ女子高生、覚醒する
二次審査の控室に移動すると、空気が一気に変わった。
一次審査とは比べものにならない緊張感。
候補生たちの目つきも、姿勢も、呼吸すらも違う。
「……ひよりさん……」
優ちゃんが不安そうに私の袖を掴む。
「大丈夫。優ちゃんはここまで来たんだよ。胸張って!」
「……うん……!」
優ちゃんは小さく頷いたけど、手はまだ震えていた。
(そりゃそうだよね……)
二次審査は“面談+表現力チェック”。
歌やダンスよりも、内面や魅力を見られる。
優ちゃんにとっては、ここが本当の勝負だ。
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そのとき。
控室の奥で、黒瀬瑠歌が立ち上がった。
静かに、ゆっくりと。
まるで空気を切り裂くような存在感で。
(……っ)
胸が跳ねる。
瑠歌はスタッフに呼ばれ、二次審査の部屋へ向かっていく。
その背中を見た瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられた。
(……また見たい)
(……もっと知りたい)
(……もっと近づきたい)
さっきまで“付き添い”として優ちゃんのことだけ考えていたのに、
今は瑠歌の姿が頭から離れない。
(……私、どうしちゃったの)
自分でもわからない。
でも、確かに心が動いていた。
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「白石優さん、準備お願いします」
スタッフの声が響いた。
「……っ……!」
優ちゃんの肩が跳ねる。
「優ちゃん、大丈夫。深呼吸!」
「すー……はー……」
「よし、行こ!」
私は優ちゃんの背中を軽く押した。
でも――
その瞬間、優ちゃんが私の手をぎゅっと握った。
「……ひよりさん」
「ん?」
「……ひよりさんがいてくれて……よかった……」
「……!」
胸が熱くなった。
(……そうだ)
私は優ちゃんのために来たんだ。
でも――
それだけじゃない。
瑠歌の歌声を聞いて、
瑠歌の姿を見て、
胸の奥が勝手に動き出した。
(……私、もう“ただの付き添い”じゃいられない)
優ちゃんを応援したい。
瑠歌をもっと知りたい。
この世界をもっと見たい。
その気持ちが、胸の奥で大きく膨らんでいく。
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優ちゃんが審査室へ入っていく。
扉が閉まる。
私は深呼吸した。
(……よし)
(……覚悟決めた)
胸の奥が熱くなる。
陽キャとしての“ノリ”じゃない。
誰かのために本気で動きたいという、初めての衝動。
(……私、もっとこの世界を知りたい)
(……優ちゃんの夢を支えたい)
(……そして――)
(……瑠歌ちゃんを推したい)
その瞬間、
胸の奥で“何か”がカチッと音を立てて動いた気がした。
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「……よしっ!」
私は思わず拳を握った。
隣にいた付き添いのお姉さんが驚いた顔でこちらを見る。
「ど、どうしたの?」
「いや……なんか……覚醒した!」
「えっ……?」
「私、もっと頑張る! 優ちゃんのためにも、推しのためにも!」
「推し……?」
「うん! 推し!!」
自分で言って、顔が熱くなる。
(……でも、もう隠せない)
私は今日、人生で初めて“推し”に出会った。
そして、初めて“誰かの夢を本気で応援したい”と思った。
(……ここからだ)
陽キャ女子高生・天野日和。
ただの付き添いから――
**推し活に全力を注ぐ“覚醒モード”へ。**
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こうして、
私の“推し活”と“優ちゃんの夢”の物語が本格的に動き出した。
まだ何も知らないまま、
私は新しい世界へ足を踏み入れたのだった。




