表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しが尊すぎて、気づいたら私もアイドルになってた件  作者: AI子
第1章 陽キャ女子高生、人生初の“推し”に出会うまで

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/17

第12話 運命のステージが始まる

 ステージの奥から、静かなざわめきが広がっていく。

 さっきまで優ちゃんの審査で拍手が起きていたのに、今はまるで別の空気が流れていた。


 張りつめたような、でもどこか期待を含んだ空気。


(……なんだろ、この感じ)


 私は胸の奥がざわざわするのを抑えられなかった。


 控室の扉が開き、黒髪ロングの女の子――あの子が、ゆっくりとステージへ向かっていく。


 歩くたびに、周囲の空気が変わる。

 誰も話さない。

 誰も動かない。


 ただ、彼女の背中を見つめていた。


(……すごい)


 まだ歌ってもいないのに、圧倒される。

 こんな子、見たことがない。


---


「次の審査、始めます!」


 スタッフの声が響く。


 会場の照明が少し落ち、ステージだけが明るくなる。

 黒髪の少女が、マイクの前に立った。


 その姿は、まるで舞台の中心に立つために生まれてきたようだった。


(……綺麗)


 息が止まりそうになる。


 優ちゃんが隣で小さく呟いた。


「ひよりさん……あの子、すごい雰囲気……」


「うん……なんか……ただ者じゃない感じする」


 自分でも驚くほど、声が震えていた。


---


 審査員の一人がマイクを取る。


黒瀬瑠歌くろせ るかさんですね。準備はいいですか?」


(……黒瀬瑠歌)


 名前を聞いた瞬間、胸の奥がきゅっと締めつけられた。


(瑠歌……)


 その名前は、どこか透明で、冷たくて、でも美しい響きだった。


 瑠歌は小さく頷いた。

 その動作ひとつで、空気がまた変わる。


 審査員が合図を送る。


「では、お願いします」


---


 音楽が流れ始めた。


 静かなピアノのイントロ。

 会場の空気が、さらに静まり返る。


 そして――


 **瑠歌が歌い始めた。**


 その瞬間、

 私は息をするのを忘れた。


(……え……)


 声が、綺麗すぎた。


 透明で、まっすぐで、刺さる。

 高音は澄んでいて、低音は柔らかい。

 まるで、心の奥に直接触れてくるような歌声。


 優ちゃんが震える声で呟いた。


「……すご……」


「……うん……」


 私は言葉が出なかった。


 ただ、胸が熱くなって、

 心臓がドクドクと早くなる。


(なにこれ……)


 初めて聞く声なのに、

 ずっと前から知っていたような感覚。


 初めて見る子なのに、

 目が離せない。


 歌声が、心に刺さる。


 痛いくらいに。


---


 瑠歌は一度も笑わなかった。

 表情はずっと無表情のまま。


 でも、その無表情が逆に美しかった。


 歌にすべてを込めているようで、

 その姿が、ただただ尊かった。


(……やばい)


 胸がぎゅっと締めつけられる。


 涙が出そうになる。


(なにこれ……私……どうしたの……)


 自分でもわからない。

 でも、確かに心が動いていた。


 大きく、大きく。


---


 曲が終わると、会場は一瞬の静寂に包まれた。


 そして――

 大きな拍手が起きた。


 審査員たちも驚いたように顔を見合わせている。


 瑠歌は軽く頭を下げ、静かにステージを降りていった。


 その背中を見送りながら、私は胸に手を当てた。


(……すごい……)


 言葉にならない。


 ただ、胸の奥が熱くて、苦しくて、でも幸せだった。


(……私……)


 気づいてしまった。


 この感情の名前を。


(……この子を……“推したい”)


 人生で初めての感覚だった。


 この瞬間、

 私は黒瀬瑠歌に一目惚れした。


 ――これが、私の“推し活”の始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ