倫理漫画といえば?
『ここは今から倫理です。』
作:雨瀬シオリ
これに関しては、正直オススメしない。
けど、珍しいジャンルなので、心意気だけは買って、紹介する(いよいよ、ネタ切れなの?)。
高校倫理の教諭・高瀬が、おそらくは底辺の高校の悩みを抱える生徒たちに、哲学の偉人たちの借り物の言葉で、能書きを垂れる漫画(倫理引用漫画だから仕方ないわけだが)。
主人公は、女子生徒に受けるルックスの設定のようだが、画が追いついていないので、その「マジック」も無効化されている。
この漫画の失敗点は、登場人物全員「言葉が通じる」が前提となっていること。言語化出来ない情念の問題こそが、そういった高校では核となるわけだが、皆がけっこう聞き分けがよく、「何だ、それ?」となる。
高瀬に、何かひとつ設定を付け足すものがあるとすれば、「催眠」の能力あたりか。言葉のリズム、トーンを操って、心に沁み込ませる方法も高瀬が知っていて、それで生徒たちを半洗脳していく、くらいなら、しっくりとくる。
NHKで全8話のドラマ化もしたようだが、正直、この原作そのままだったとしたら、どうしたNHKともなる内容。倫理というと、深い内容と勘違いしがちだが、借り物のままなら、それは哲学でも何でもない。
この作品を絶賛しているひとたちは、当事者レベルでの悩みの経験はなく、「深い」と言っている浅さを感じてしまうのだが、これは筆者だけの感覚だろうか?
―― と、ボロカス書いてしまったが、なぜ紹介したのか。
それは、読者に「ほかにオススメの倫理(哲学)漫画、なんか知らん?」という問いかけである。特殊設定なので、類似漫画はないだろうけど(『あっかんべェ一休』や『ヴィンランド・サガ』とか、そういうことでなく、教師漫画としてね)。
ドラマでいえば『伝説の教師』の方が、まだチャレンジしていたか。間違っていても、借り物じゃなく、自分たちの言葉で、能書きを垂れていただけ、意味はあった。主演が、松本と中居という、今では特級呪物となったふたりなので、今後お目にかかる機会も永遠にないだろうが(あっても見ないけど)。




