三国志漫画といえば?
『蒼天航路』
作・原案:李學仁 画・作:王欣太
ここに来て、どメジャー作品である。
日本で三国志といえば、長らく横山光輝・三国志の一強時代があったが、それまでのイメージを破壊する、曹孟徳が主人公の物語が登場した。
李學仁が、連載でもかなり早い段階(5~6巻のあったりだったか)で急逝し、その後は、原案を下敷きに、王欣太が試行錯誤しながら描き上げた長編漫画(全36巻)。
序盤は、神掛かった魅力で読者を惹きつけたが、それ以降は王欣太の他作品と同様に、男くさいヒューマン・ドラマに仕上がっている。ちなみに王欣太は連載前、劉備や曹操の名をも知らぬレベルからの連載開始。そこに、原作者の死なのだから、当時の心境は如何ばかりか。それでも、きちんと最後まで執念で描きあげた王欣太には、素直に敬意を表したい。
三国志でいえば、ウェブトゥーンの回でも紹介したが『呂布の三国シミュレーター』なども派生で面白い。
ところで、筆者が冒頭で、曹操孟徳とせず、曹孟徳とした理由。これは陳舜臣が書いた『秘本 三国志』などからの影響。実際の中国では、名と字は同時には名乗らず、姓と字で呼ぶのが一般だという(フルで呼ぶことはまずない)。
名は誕生と同時に付けられ、字は元服の際に付けられる大人としての名前。名と字は、一般的に意味が繋がっているものが採用される。例えば、諸葛亮孔明。「亮」は明るいを意味し、「孔明」もまた明るいイメージの名前。関羽雲長なら、羽が空を想起させ、雲長もやはり空である。
これらを踏まえると、張飛は益徳ではなく、翼徳とするのが通常の流れ。これが彼の字にふたつの説がある理由とも言える。
そもそも、(現在ではどうなってるか知らんが)中華圏の文化では、本当の名前(真名)を他人に知られると、呪術などにも使われ、生命を脅かされる危険性があるので、親に付けられた名は、近しいひとにしか教えないともいう。
マナカナ。
真の名と仮の名からのインスパイア系の名だとすれば、親はカナに対して、どういうノリだったのだろうか(なにそのオチ)?
ちなみに本作における曹操の幼名は、阿瞞。
「阿」は、中国では「~ちゃん」の意味だそうなので、「瞞ちゃん」と言ったところか。
「呉下の阿蒙に非ず」は、この前文に魯粛の「士別れて三日ならば、即ち更に刮目して相待つべし」があるわけだが、蒙はバカを意味するので「もう呉のおバカちゃんとは呼べないね」と訳すのが正解か。
だとすれば、呂蒙は、ひょっとすると実名ではないのかもしれない。とかなんとか、本エピソードを書きながら、ふと。
余談②)
『三国志演義』は、ほぼ完全にフィクション。実在しない人物もわんさか出てくる。『水滸伝』に至っては、完全なるフィクション。意外と史実と思って読んでいるひともいるらしいので、念のため。




