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第9話 逢引き。

王城の回廊を自分の秘書官と打ち合わせしながら歩いていると、返事が返ってこなかった。


ん?


振り返って見ると、書類を抱えた俺の秘書が、立ち止まって何かを眺めているところだった。裏庭ぐらいしか見えないけどな?と思いながら、彼女の視線の先をたどると、木陰でかなり大きな体躯の近衛騎士が、王城の侍女服を着た小娘に何やら貰っているところだった。

…逢引きか?

二人とも微笑みあって何やら話しているようだ。話の内容までは聞こえないが。


微動だにせずに、エミーリエがそれを切なそうに見つめている。


え?どういうこと?


ふうっ、と小さなため息をついて、うつむきながら歩きだしたので、俺は慌てて歩き出す。


…え?


とりあえず、護衛の騎士に、近衛にいる2メートルくらいの男のことを調べるように頼む。



*****


「なあトルデ…」

「?」


何時もなら夕食後はさっさと自分の執務室に引っ込む兄上が、お茶とか飲みながらうだうだしている。珍しいなあ、と思っていたら…

「俺の秘書の、エミーリエの訳アリって言うのは、近衛騎士団にいるクヌート男爵家の次男坊のユルゲンって奴が原因なのか?」


は?


初めて聞く名前ですが?誰?


「そいつ、王城の侍女とできてるみたいなんだけど…そいつの浮気が原因で、その…揉めたとかなのか?」

「全く違うけど…ユルゲンって、誰?」

「近衛にいる2メートルくらいの大男だ。」

「あー。ああ、ユルゲンって言う名前なのね。はいはい。何で兄上がその人の名前まで知ってるわけ?」

「それは…ほら、なんだ…秘書の交友関係は把握しとかないとな。いろいろと支障があるだろう。」

「調べた、のね」

「……」


あら。図星?他人に、というか、女性に興味なんかない人なのかと思っていたわ。遊学の期間を勝手に伸ばして、婚約者にあきれられて逃げられるぐらいの人だったし。先日の舞踏会でだって、あんなに女の子に言い寄られていたのに、にこりともしていなかったし…。愛想笑いぐらいしろ、ってお父様がこぼしてたわ。


あげくに…元婚約者に挨拶がてらワインをぶっかけられたそうじゃないの?エミーが間に入って事なきを得た…というか、エミーがワインをかぶったんだけどね。


へえ…


「エミーリエが侍女に上がったのは、彼女がアライダ侯爵家の嫡男との婚約を一方的に解消されたからよ。気分転換になるかと思って、私が誘ったの」

「…あんなに優秀な人を、なぜ?」

「そう思うわよね。理由は、婚約者だったエーベルハルトより背が高くなったから、だそうよ。あの人は私と同じくらいかな。162センチくらい。エミーリエは今、170センチくらいあるからね。」

「そ…そんな理由で?」

「そう。馬鹿げているわよね。お兄様もエミーリエに身長の話をしちゃだめよ?下手に身長の話をしたらあの子、東洋の端にあるなんとかって国に、旅に出ちゃうからね。」

「は?」

「まあ、とにかく…あの子の今の理想は2メートルくらいの熊みたいな男の子らしいのよ。王城には大きな男の人がうじゃうじゃいるって喜んでたもの。その近衛の人の話も聞いたけど、名前さえ知らなかったみたいよ。」

「……」

「お兄様も良かったじゃないの、常々おっしゃってたでしょう?若い侍女や女中は寝込みを襲われそうで嫌だって。うふふっ。あの子は、普通の身長のお兄様には興味ないから安心してよ。」


「……」


紅茶のカップを持ったまま、兄上がフリーズしている。

やだぁ、悩んでる悩んでる…うふふっ。なんか、面白いことになりそうな予感!!






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