第5話 専属侍女。
翌朝、目が覚めると、もうカーテンが開けてあって、レースのカーテンが揺れている。夏だが、朝早いうちの風は心地良い。
ベッドわきのサイドテーブルに、ミントの葉が浮かんだ水の入ったグラスと、洗面器にぬるま湯。その隣にタオル。
着替えをしようとしたタイミングで、侍女がやってきて着替えを渡される。
着替えている間に、今日の予定を読み上げている。
「本日、面会の予定は6件です。いずれもハインリヒ様の無事のご帰還のお祝いだそうです。午後にまとめておきました。各家、当主とお嬢様がいらっしゃる予定です。本日は夏用の準正装で用意させていただきました。お客様のお茶は冷たいものを御用意いたします。お坊ちゃまの荷解きが済んでございませんが、特定の方のお土産等ございましたら急いで開封いたしますが?」
「…ない。」
「了解いたしました。それでは、朝食は部屋に運びますか?」
「ああ。」
朝食を済ませて自分の執務室に向かう。昨日のうちにちらりと見たら、おやじがあるだけの書類を山積みにしたらしく、机の上は崩れ落ちんばかりの書類の山だった。今日の午前中は仕分け作業で終わりそうだ。それと…秘書を雇おう。
ひとつため息をついて、ドアを開ける。
「ん??」
山積みだった書類が、きちんと整理されている。見ると、きちんと仕分けがしてある。
通りがかった執事長を呼び止める。
「オットマー?君が整理したのか?」
「いえ。お坊ちゃまの侍女が昨日の夜のうちに片づけたようですよ?何か手伝うことがございますでしょうか?」
「いや…いい。その侍女はどこにいる?」
「はい。そこでございます。先ほどからお坊ちゃまの執務室に日が入りすぎないようにと、日よけを作っています。なかなか掘り出し物の侍女でしたね。ふふっ。」
オットマーの指し示す先に…
見ると、侍女は麦わら帽子をかぶり、中庭に脚立を持ち込んで、濃い色の布地に紐をくくりつけて、日よけを制作している真っ最中のようだ。庭師のベンと何やら話しながら楽しそうに作業をしている。
すらりと伸びた腕を伸ばして、俺の執務室の窓枠の上に紐を結んでいる。