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第3話 丸薬。

「ねえねえ、トルデ?今日図書館で見つけたんだけどね…」


と、古めかしい蔵書を抱えてエミーが話しかけてきた。この子はあの後、部屋からは出てきたが学院には来ていない。元々、婚約していたエーベルハルトの家に勧められて通っていた貴族用の学院だったから、必要性を感じないんだろう。


私は学院の帰りにこうして時折、エミーを訪ねてはお茶を一緒にしている。

彼女の兄と婚約したのは本当に小さいころ。その頃から行ったり来たりしている。伯爵家の門番も家令も顔パスである。


「ここよ、ここ。いい?」


しおりを挟んでいたところを開いて、エミーが楽しそうに読んでくれる。


「東洋の端にある島国に伝わる伝説でね?ドクターテヅカ、という人が赤い丸薬と青い丸薬を作り出してね、青を飲むと大きく、赤を飲むと小さくなるんですって!」


伝説、でしょう?


「背が高いから気に入らないと言われても、足を切るわけにはいかないでしょう?どうかしら、この薬を探す旅に出ようかしら?」

「その話…小さくなるって言っても、幼くなるっていうか…若返りの薬の話なんじゃなかった?育ったら、また一緒じゃないの?根本が間違っているわよ、エミー?」


出された紅茶を飲みながら、この子の思考が変な方向に向いていることにあきれる。


「そうかしら?」

「そうよ。私ならそうね…私を振ったことを後悔させるほど女を磨いて、もう一度相手を跪かせてから、振るわね。」

「え?考えたことなかったなあ。」

「もしくは…貴女の身長をまったく気にしないほど貴女を愛してくれる人を見つけるか…どうしても気になるって言うなら、熊みたいな大男を見つけたらどう?」

「熊?熊ねえ!!いいかも!熊男!!」


エミーの顔がキラキラしている。またこの子は…変な方向に思考が飛んでいかないようにしないとね…。

「要は貴女、暇なんでしょう?うちで侍女をやらない?嫁入り修行だと思って。学院に戻る気ないんでしょう?」

「ん?」

本をしまって、クッキーをもさもさ食べていたエミーが顔をあげる。

「兄が遊学からようやく帰って来るのよ。5年もいなかったから、侍女が足りないのよ。5年よ?5年。婚約者の子がいたんだけど、待ちきれなくて他所に嫁いでしまったし、いないもんだと思っていたから侍女が足りないの。夏の休暇になるしね。」

「公爵家の侍女ねえ…私に務まるかしら?」


エミーの考え方は変わっているが…礼儀作法や教養は十分なのを知っている。

侯爵家の夫人になるべく教育されてきたから、たいがいのことはできる。まあ、人に仕えるのも新鮮に違いない。気分転換にもなる。


「どう?やってみない?」





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