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第11話 地雷を踏む。

「なあ、おま…エミーリエ?」

「はい。なんでしょうお坊ちゃま?」


俺の部屋でベッドを整えて、俺の寝間着を揃えていたエミーリエに、やっとのことで話しかける。

明日は…日曜日だし。今話さないと、こいつは実家のお茶会に出かけてしまう。


「その…トルデリーゼに聞いたのだが、お前の理想は2メートルの大男だと。」

「え?ああ、まあ…そうですね。」

「俺は178センチしかない。」

「お坊ちゃまは標準ですよ?」


そう言いながら、エミーは羽枕を膨らませている。

ふっくらと整えられたベッドに腰を下ろす。


「俺は、お前に他所に嫁に行ってもらいたくない。」

「ええ。私、仕事が楽しいですし、皆さん良い人ですし、仕事を続けたいと思っていますよ。お嫁に行く予定もございませんし。まあ、私のこの身長ではいろいろと難しいですしね。」

「何がだ?お前はすらっとして、綺麗だ。気遣いもできて、頭の回転も速い。そのくせ、ケーキを食べているときなどは幸せそうに美味しそうに食べる。知的美人なのに笑うと幼子のように無防備だ。素敵な女性だと思う。」

「…お坊ちゃま?」

「俺は…お前がいてくれればいい。」

「え?」

「…エミーリエ、俺と結婚してくれないか?」

「…お坊ちゃま?」

「ハインリヒ、だ。エミーリエ。」

「…そうはおっしゃっても、私のこの身長にハイヒールを履いて、髪を結い上げたら、とんでもない大女になってしまいます。ハインリヒ様も、ご自分に釣り合う女性と…」

「釣り合うってなんだ?それでお前は2メートルの大男と結婚する気なのか?そんな理由で?」

「そんな理由って…実際そんな理由で婚約解消されましたので。」

「それで?同じ理由で俺の申し出を断るわけか?」

「え?」

「俺は確かに178センチしかない。でも、例えば150センチしかなかったとしても、お前がいい。そう言っている。そう言ったら、お前は自分と釣り合わないと断るのかと聞いている。俺は人生の伴侶は身長では選ばないぞ?」

「ハインリヒ様?」

「どこにもいかないでほしい。ここに…俺のところにいてほしい。」


エミーリエの腕まくりしたブラウスから伸びる腕をそっと引き寄せる。


「返事は?もらえないのか?」





*****


「うまくいってしまいましたね、デイー。」

「ああ…まさかエミーリエが公爵夫人になるとはね。」


私たちは踊る二人を眺めながら、シャンパンで小さく乾杯をした。チンッ、という小さい音に二人で顔を見合わせて笑う。


今日の舞踏会の注目は、なかなか婚約者の決まらなかった我がレオナルト公爵家嫡男ハインリヒと、彼と踊っているシンプルな流れるような青いドレスの良く似合う長身の女性。エミーリエ。


会場からため息が聞こえる。


兄上があんな風に笑うなんて、妹の私も知らなかったわ。






本編 完です。番外編が続きます。

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