転移
私は突如として目覚めた。そこは見慣れない場所で私は少しの不安の中にいた。するとその部屋の中に1人の男性が入って来た。
???「やっと目覚めたか…お前が新人だな。」
???「新人ってなんのことですか?ここはどこですか?あなたは誰なんですか?」
???「質問が多いな…まずここはテレンディア、いろんな化け物を収容している場所だ。俺は柳雪。お前の先輩にあたる存在だ。で、新人とは何なのか、だな。テレンディアでは常に人手不足だ。そんなときに開発されたのが人造人間を作り出すことができる機械だ。それによって作り出された存在が、お前だ。そしてお前は今日からテレンディアで働くことになる。だから新人ということだ。」
目の前の彼が何を言っているのか私には何も分からなかった。唯一わかったのは私が人間ではないことだけだ。
雪「お前…じゃあ呼びにくいな。自分で名前を付けろ。」
???「え?」
雪「ここにいる奴らはほとんどが自分で名前を付けてる。俺もそうだ。人間は親から名前を付けてもらうらしいが俺たちの親は機械だし、俺たちは人間じゃない。だから自分たちでつけるしかないんだよ。すぐじゃなくてもいいがな…今からこのテレンディアを案内するから、その間に考えとけよ。」
そう言って私は雪さんに連れていかれた。最初に連れていかれたのは管理室だった。
雪「ここは管理室だ。さっき言った危険存在、エンティティと呼ばれる者たちの収容状況を管理している場所だ。道が分からなくなったらここの奴に聞けば一発だ。」
???「あ!雪先輩じゃん!」
管理室にいたとある男の子が雪さんに声をかけてくる。
雪「蒼汰か…元気にしてたか?」
蒼汰「元気元気!超元気だよ!ここは危険なことあんまないし、雪先輩がいる実務チームとか研究チームよりは簡単だよ!で、そこの子は?」
そう言って蒼汰さんは私の方に視線を向ける。
雪「こいつは今日生まれたばかりの新人だ。今はテレンディアの内部を案内している。」
蒼汰「そうなんだね!僕は春風蒼汰!蒼汰って呼んでね!」
???「あ、よ、よろしくお願いします。」
雪「それじゃあ、まだ案内しなきゃいけない場所が多いんだ。それじゃあな。」
蒼汰「うん!たまには一緒にお茶会でもしようねぇ!」
その後、私は研究所と収容所をめぐり、寮にやって来た。
雪「ここが最後だ。この寮にはこれからお前が配属される実務チーム所属の奴らが寝泊まりしている。もちろん俺もな。お前もここで過ごすことになる。お前の部屋は俺の隣だ。隣人としてよろしくな。」
???「は、はい!」
雪「これで一応以上だが、質問はあるか?」
???「はい、ここに来るまで人造人間としか会いませんでした。本物の人間はいないのですか?」
雪「いるにはいるがほとんどここには来ない。ここは人間に対しては危険すぎるってことだ。たまにメンテナンスで来るぐらいじゃないか?物好きな変態女はよく来るがな。」
???「そ、そうなんですね。」
雪「以上か?で、もう名前は決めたか?」
???「はい。その前に1ついいですか?」
雪「なんだ?」
???「雪さんの苗字をお借りしてもよろしいでしょうか?」
雪「そんなことか…別にいいぞ。思い入れがあるとか誰ともかぶりたくないとかはないからな。」
???「それなら、私の名前は柳楓にします!」
【現実】
???「はぁ、今日も雪様かっこよかったなぁ。」
私はVRを外しながらそういう。私の名前は島村楓。このテレンディアというゲームのファンであることを除けば、平凡な女子高生だ。
テレンディア、2034年発売のVR型異世界ゲーム。内容は次々と現れるエンティティと呼ばれる超存在を調査するというもの。VRのため本当に働いているかのような感覚なれるゲームである。難易度は激ムズで、エンティティの情報を知らない状態で作業をすれば即死するレベルだ。そんなときに活躍するのが雪様!このゲームで一番人気のキャラである。ビジュもよく、キャラクター性もよく、なによりもどんなエンティティ(一部は除く)にも負けない実力を持っている。そのためテレンディア内最強キャラクターとも言える。私も数いる雪様推しである。
楓「てか、もうこんな時間じゃん!早く寝ないと!」
時計の針はすでに00:00をまわっていた。私はすぐに布団にくるまり、眠りについた。
・・・
目が覚めると見知らぬ天井があった。いや、違う。何回も何十回も何分も何時間も見続けた天井があった。私が辺りを見渡すと、予想通りの部屋が広がっている。すぐさま自分のほっぺをつねる。とても痛い。その痛覚はこれが夢ではないことを指していて、またVRでもないことを同時に証明していた。次の展開を察した私は全力で深呼吸をする。自分を抑えるために…
???「やっと目覚めたか…お前が新人だな。」
何万回と聞いた声、落ち着きのある男性の声が響き渡る。私は恐る恐るその声の方向を向く。会いたいが会えなかった人。そう声の方向には私の推し、柳雪様がいた。
楓「きゃあああぁぁぁ!」
そんな悲鳴をあげて再び私は気絶した。