私の体
地面が割れ、粘液状の物質が溢れ出してきた。
「始まってしまったか」
フーエンズが、残念そうに言った。
その粘液状の中央に、透明な箱にいれられた私の体がいた。
「私だ!」
「だめだ、触るな!」
粘液条の物質が出てくると同時に、お父さんたちと隔てていた壁も崩れたようだ。
「残念だが、始まってしまったものは、もう戻せない。我々は、歴史を目撃するのだよ」
フーエンズはそう言って、レオの元へ行こうとする。
それを阻止するため、腕を伸ばしただけで炎の壁を作り、ミヒャエルはフーエンズを遮る。
「蛇を捕まえるんだ!君たちなら、選ばれた者たちなら素手であっても捕まえられる!」
一番レオに近いのは私だ。
使い魔の姿はであるから、さらにすばやく移動できた。
「レオ!」
私はレオに叫んだ。
「姉ちゃん、大丈夫だから。それよりも、姉ちゃんの体を拾わないと」
「案ずるな。すでに策はある」
ミヒャエルが一言いう。
「教師と呼ばれてたな。本名を聞かせてもらおう」
「…フーエンズだ」
「フーエンズか、いい感じの名前だ。わが師にもフーエンズと呼ばれていた人が1人いた。ここにくる1か月ほど前に行方不明になり、その後、死体で発見された。もう一度聞く、お前の真名はなんだ」
二人がやり取りをしている、その横で私はお父さんたちと合流した。
他の守護者たちとも一緒だ。
「君たち全員で、同じことをするんだ」
風が徐々に強くなり始めた塔の中で、お父さんがまとめて指示を出す。
「フーエンズは、ミヒャエルに任せることにして、我々はあの源泉を調整する必要がある」
「あれが、すべての魔力の源泉なんだ…」
私の体が浮き沈みを繰り返しているが、あれが栓の役割を果たしているらしい。
「私の体をとると、もしかして、源泉が暴走して…」
「魔力は非常に普遍的なものになるが、一方ですべてのものに干渉を及ぼしてしまう。その結果は、世界はすべての層を巻き込んで破壊される。我々は、至近距離にいるんだ。人間の器では、あれほどの魔力を吸収して、維持することはできないだろう」
お父さんが、淡々と話す。
「みんな、協力してくれるか」
その場にいる全員に、再び聞く。
誰も何も言わない瞬間をはさみ、私が真っ先に言った。
「やるよ、私はやるよ。何があっても」
私の言葉を聞いて、誰しもうなづき始めた。
「では、そのやり方を教えよう。非常に簡単なことだが、1つでも間違えたとたんに、すべては失敗する」
そういって、お父さんは、それぞれの位置と何をするのかを教えてくれた。
たしかに、単純なものではあった。