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蛇は、勢いよくフーエンズから離れて飛び出したが、そのまま地面を這ってフーエンズのほうへにじり寄っていた。

「いかん!」

お父さんが叫ぶのと、ミヒャエルが炎でその蛇の方向を変えたのは、同時だった。

「なんなの?!」

「あの蛇は、不死の象徴であるウロボロスだ。命を吹き込んだ者に、永遠の命を約束するとされている。それと、特別な力も」

「特別な力?」

スピカの声が、妙に消えていく。

「君が持っている力だよ」

ミヒャエルが私に笑いかけてきた。

「私が?」

「ああ、君のお父さんから説明を受けてないのか」

ミヒャエルが教えてくれた。

「ここに来た人たちは、この塔の各階層の守護者なんだ」

「守護者?」

「そう。各階層は、各世界へ通じているんだ。その世界に供給される魔力の量は、守護者によって無意識に調整される。その源泉なのがここだ。そして君は、その根元である源泉の湧出量をコントロールする力がある」

「…確か、お父さんの班員達が言ってたっけ」

「源泉の話か。そりゃいい。話を省こう。そこにいる白い蛇は、供給されている向きを変える力を持っているんだ」

「…つまり」

「使い魔は全てここから放出されている魔力によって形作られている。さて、それがなくなると?」

使い魔が消滅するということになることぐらい、私にもすぐに分かった。

「後は分かるだろ。さらに言えば、魔法で成り立っている社会は、全て崩壊するだろうな。それを防ぐためにも、この蛇を捕まえないといけない」

「素手でとれるんじゃ…」

「やってもいいが、火傷するぞ。高圧縮された魔法だからな」

ミヒャエルが言った。

「じゃあどうするの」

「こうするのさ」

ミヒャエルが指先からヒモを出し、蛇に巻きつけた。

「"effigies appareo"」

「うっ…」

言うと、首にひもが巻きついたレオが出てきた。

「レオ!」

私はレオを見た瞬間に飛び出そうとしたが、声に引き戻された。

「いいのか、高濃度の魔力が体に満ちている状態で、不用意に触れるとどうなるのか」

フーエンズがニヤッと笑い言った。

「爆発するんだろ。それぐらい、僕にだってわかってる」

レオが言った。

「ほう…」

片眉をあげ、フーエンズが表情を変える。

その時、空気が一気に波打ち始めた。

「チッ」

ミヒャエルが舌打ちをすると、その場にいた全員に言った。

「来るぞ!」

私には何かさっぱり分からなかったが、次の瞬間に出てきたものを見て、一瞬で理解した。

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