第5層目
階段を下りて、最後の階層のところへくると、急に風を感じた。
「きゃ…っ」
目を守るために無意識で、目の部分を覆っていたが、ふと周りを見ると、私だけだった。
「あれ…」
「俺たちはここからしか見ることができないようだな」
声に振り返ると、透明な壁の向こう側にお父さんたちが立っていた。
私以外の人たちは、通ることができないようになっているらしいが、声は聞こえてきた。
「第5階層は、アースだけが行かなきゃいけないらしい…っと、それだけでもなさそうだな」
壁の向こう側には、私が見知った顔以外の人たちも来ていた。
「どうやら別世界の人たちも合流したようだな」
アルゴが、その人たちを見ながら言った。
「なんで、落とし穴の先がここにつながってるのよ!」
「仕方ないじゃん、あそこではここしか道が無かったんだし」
「えっと、どなたでしょうか」
いろんな人が、一気にこっち側に来ていた。
「ああ、ごめんなさい。私は早田桜。この塔では、どうやら第3階層って言われているところから来たわ。それで、私の横でこけているのが、下から順に鈴木珠子、伊予葎、生井幺子。よろしく」
「こちらこそ」
私が手を伸ばして握手をしようとしたが、スピカの手では、なんだか腕を動かしているだけにしか見えなかった。
「それで…」
私は握手をあきらめて、別の人たちへ聞いた。
「ああ、俺たちは第5階層から来た。俺は、晴足正和だ。こっちは、俺の彼女で伊地隼子、その双子の妹の伊地澤子。父さんと一緒に来たんだが、どうやら、ここじゃなくてあの壁の向こう側へ飛ばされてきたらしい」
晴足が指さしたところは、私のお父さんと名刺交換をしている人がいた。
「なるほどね」
「で、自分は第4階層から来た。ミヒャエル・エルグランドンだ。火を使った攻撃魔法を得意としている」
「ほんと、私と一緒の力だ!」
喜んでいるのは、早田だ。
「そうか、それはよかった。同じ力の者がいると、その力は増幅しやすくなる」
「よろしくお願いします」
早田はミヒャエルのお辞儀をした。
「ああ、いろいろ教えてやろう」
そして、最後にもう一人、壁のところへへばりついて、ここから出たがっている少女がいた。
私は、その少女のところへ行って聞いてみた。
「あなたは?」
「わっ、私は、霧島鹿野子。魔法使いの見習いで、なんで私がこんな所へ飛ばされてきたのか……」
「それは、君たちにしかできないことがあるからだ」
その声は、一番聞きたくない人だった。
「師匠…」
私がつぶやくと、その人は、私に言った。
「ほかにも名前はあるぞ。各階層でいろいろとしてたからな。だが、ここに来る直前の階層で手に入れた、これこそ、最も儂が必要としていたものだ」
「教師、何をしているんだ!」
「なんだ、お前も来てしまったのか。まあ仕方ないだろう。この井戸を守る5階層の長の直系だ。力は十二部にあるだろう」
そう言って、フーエンズは、ポケットをまさぐり、白い蛇を取り出した。
「…汝、我が望みを叶え、世界を再び一つにせよ。全ての階層を統一し、何人たりとも我が命に叛く事の無き様にせよ!」
いうと、蛇に命が吹き込まれ、動き出した。