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第2層目

第2階層に降りると、急に空気が冷たく感じられた。

「ここは…」

見ると、見回す場所すべてに霜がついている。

「ようこそ、火がない世界へ」

そう言って立っていたのは、長袖のローブに身を包んだローエリの母親のほうだった。

「ローエリ族は、氷系統が大の得意でね。だからこういう風に火を使えなくさせるという結界も発達したんだ」

彼女はそういうと、何も言わずに右腕から氷の筋を私たちに向けて発射した。

それを見た瞬間、思わず鼻で笑い飛ばしたのが、デネボラだ。

「"pereo"」

消えるとか滅びるとかの意味合いで、基礎呪文の一つとされているものだが、デネボラはそれを使って、相手が出したすべての氷や結界を一瞬で消した。

「…どういうことだ」

「どういうも何も、見ての通りだ」

デネボラは自信満々に続けた。

「貴様がこれから出す呪文についての効果もすべて抹消した。ついでに言えば、この場所にいるであろうアースの家族の居場所も(あば)いた」

そう言われてデネボラの視線の先をたどっていくと、氷の直方体に入れられたジェミニが見えた。

その氷は、彼らを包むようにはりついているが、さきほどのデネボラの呪文にも耐えたようだ。

「さすがに基礎呪文では限度があるな」

デネボラはそう言って、アルゴのほうに向きなおった。

「よろしく頼む」

「口調は気に入らないが、しかたがない」

そういうと、落ち着き払ったようにアルゴは唱える。

「"mundus abeo"」

魔法の呪文には、基礎呪文を組み合わせることによって新しい効果を生み出すことがあるらしい。

詳しいことはまだ習っていなかったが、アルゴはそれをしたようだ。

みるみる間にジェミニを凍結させていた氷が蒸発し、数秒の間に彼らは自由の身になった。

「ジェミニ!」

すぐに飛び出したのは、ジェミニの主であるクロだった。

しかし、その道に立ちはだかるかのように、サイバーブは割り込んできた。

「逃がさないよ」

そのとたんに、アンタレスがクロを弾き飛ばしてサイバーブと向かい合い、右人差し指と中指をくっつけ、他は握り、彼女に向けて指した。

「"flamma"」

炎が彼女に向かって突き進む。

「ちっ」

短く舌打ちをすると、着ていたローブを翻し、炎をよけると同時に、その場から消え去った。


「…別のところへ行ったようだな」

彼女がいたあたりの匂いを嗅いでいたアルゴが、はっきりと断言した。

その向こう側では、帰ってきたすっかり冷えているジェミニを抱きかかえているクロがいた。

私たちはクロのところへ歩いて行って、みわがクロの肩に手をかけて言った。

「よかったね」

「ああ、ありがと。でも、まだまだこれからなんだな」

ジェミニの頭をなでながら、クロが立ち上がった。

「行こう」

クロが先頭になって、部屋の隅にあった下に降りる階段をおりだした。

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