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第2話 次こそは美少女! ……と思ったら、また男!?

「どうしてだよ……俺が望んだのは、美少女たちが集まるハーレムだったはずなのに……」


異世界に召喚されて、はじめて仲間を呼び出した結果、目の前に現れたのは美少女ではなく、屈強な騎士――アルベルトだった。

あまりの衝撃に、頭が真っ白になったまま、俺は立ち尽くしていた。


「どうしたのです、健太郎?」


アルベルトが不思議そうに俺の顔を覗き込む。

いやいや、どうしたじゃないよ!

なんで男が出てくるんだよ!

ていうか何で俺の名前を知ってるんだよ!


「俺は……ハーレムを作りたかったんだ……」


思わずそう呟いたが、もう後戻りはできない。

アルベルトは真剣な顔でこちらを見ているし、ここらで気を取り直さなければならない。

俺は次の召喚に望みをかけることにした。


「まだだ、次がある! 次こそは……!」


再び魔法陣の前に立ち、集中して祈るように願う。


「なあ、次こそは本当に美少女が出てくるよな?」


女神は少しだけ微笑んで、俺の言葉に答える。


「全てはあなた次第よ、健太郎。どんな仲間が現れても、それがあなたにとって必要な存在なのだから」


「健太郎、誰と話しているのです?」


アルベルトが怪訝な顔をして見せる。

何か妙なものを感じたけれど、召喚の祈りをはじめた俺には、見知らぬ屈強な男に構っているヒマはない。


集中して、魔法陣に願いを込める。

女神の描いた召喚の魔法陣が再び輝き始め、次第にその光の中からシルエットが浮かび上がる。

今度こそ、女神が言っていた「必要な存在」が美少女であることを期待して、俺はその姿を凝視した。


「やった!このシルエットは……!」


しかし、光が収まると、そこに立っていたのは……。


「また……男かよ……」


現れたのは、陽気な笑顔を浮かべた魔法使いの青年だった。

彼は豪快に笑いながら俺に手を振ってくる。


「オレはレオナード!お前がオレを召喚したのか、健太郎! 楽しそうなやつじゃねえか!」


俺はまたしても絶望に打ちひしがれた。

なんで、なんでまた男なんだ!

こんなはずじゃなかったんだよ!


「おいおい、そんなにがっかりするなって! オレは魔法使いだぜ? お前の力になれるからさ!」


レオナードは俺の肩をポンと叩き、ニカッと笑う。

いや、そういう問題じゃないんだ……。

俺は「ハーレム」を夢見てたんだぞ……。


女神に目を向けると、彼女はやれやれといった表情で俺を見つめていた。


「健太郎、彼だって立派な仲間じゃない。ハーレムだけがすべてというわけではないでしょう?」


「わかってる……わかってるけど……」


世間体から、そう言ってはみたものの、突然やってきた異世界だ。

ハーレムの他にやりたいことも、やるべきこともわからない。


俺は頭を抱えた。

どうして俺の願いはこうも裏切られるんだろう。

パーティーには、女神を名乗る華奢な少女が一人いるだけだ。

ハーレムにはほど遠い。

そう落胆する俺を、レオナードもまた怪訝な顔で見ている。


「なあ、健太郎、ずいぶんでかい独り言だな」


「?」


「ちなみに健太郎、わたしはあなたにしか見えていないから」


レオナードの他、アルベルトもその場にいるが、俺が見えない誰かに話しかけている様子を不思議そうに見ているだけだ。

女神と名乗る、この少女。

確かに不可思議な存在らしい。


でもそれは、少なくとも一人は生身の女性が仲間にいると考えていた俺の認識を裏切るものだ。

なんだこのパーティー、男だらけじゃないか!


「まだだ、次がある! 次こそは……!」


ガチャと一緒だ。

確率は低いかもしれないが、何度も引いていればいずれ当たるはず。


女神は少しだけ呆れた顔をして、俺の小さな呟きに応じる。


「健太郎、意気込んでるところ悪いけど、召喚にはエネルギーが必要なの。すでに二人を呼び出したいま、すぐに次の仲間を呼ぶことはできないわ」


「えっ……そんな……」


落胆する俺に、女神は続けて話しかけてきた。


「だいたい、召喚がすべてではないのよ。あなたには世界を救う使命がある」


女神はそう言うものの、その使命とやらのことを、俺はまだ詳しく知らない。

突然、この世界に呼び出されただけだ。

そんな不満顔の俺に、女神は一方的に続ける。


「今は、まず目の前の仲間たちと絆を深めるのはどう? なぜ彼らが召喚されたのかがわかれば、それが次の召喚を成功させる鍵にもなるんじゃないの」


女神の言葉が耳に響く。

しばらくは、次の召喚ができないなんて……。

ハーレムが築けないなんて……。


「世界を救う必要があるんだろ……? そんなんでいいのかよ……」


がっかりする俺に、女神はさらに提案してきた。


「今は、目の前の冒険に集中するべきね。近くの村でモンスターが出没しているという噂を聞いているわ。あなたと今の仲間たちがどれだけ力を発揮できるか、試すのにちょうどいい機会よ」


「冒険……」


俺は少しだけ考えた。

なぜだか呼び出された異世界。

女神に与えられた特殊な力でハーレムを築くはずだった俺なのに、女神は世界を救えと強要してくる。

しかもこの世界にはモンスターとやらもいるらしい。

まるでゲームだ。

いや、異世界転生ってそういうものか。


なんて考えながらも、俺すぐに決意を固めた。

確かに、次の召喚ができるまで時間がかかるなら、今できることをやってみてもいいのかも。


しかも現れた仲間たちは、いずれも歴戦の英雄じみた雰囲気を身にまとっている。

穏やかそうだが屈強なアルベルト。

ノリがよくチャラそうだが、魔法には自信ありげなレオナード。

こいつらとなら、この異世界に与えられた使命に立ち向かえるだろう。


まあとりあえず、ハーレムを築くまでの足がかりぐらいは得られるはずだ。


「さあ、健太郎、世界を救うんだろ? オレたち三人で、どれだけやれるか試してみようぜ!」


レオナードの提案に、アルベルトもうなずく。


「健太郎、あなたがリーダーだ。私たちを導いてください」


「リーダー……俺が? 何で?」


「なんだよ、健太郎。オレたちを呼び出したのは、お前だろ?」


レオナードは苦笑しながらそんなことを言う。


いや、違うぞ、とはそのときは言えなかった。

俺は平凡な高校生に過ぎない。

二人を呼び出したのは、この世界の女神だ。

だが二人は俺が特別な存在だと思っているらしい。


すぐに否定は、できなかった。

何より、この世界の事情がわからない。

わからないことは、後でこっそり、女神に聞こう。


しかし、リーダーか。

急にそんな大役を任されて、俺は少し戸惑ったが、しばらくの間だけでも、二人の信頼に応えなければならないと感じた。

しばらくの間、というか、うまいことハーレムを築くまでの間、というか。


「……よし、やってやろうぜ!」


こうして、俺たち三人の冒険がはじまったのだった。

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