6話
誰かの声が頭に響く。
嫌ほど聞いたあの声だ。
「夕希、お腹すいたから目覚ましてよ。」
目を開くと、炎天下の空ではなく無機質な天井が見えた。
「夕希が起きた!先生!」
「天海さん、気分はどう?」
気分もなにも何があったのか分からない。
なんでここに居るのだろう、と疑問に思う。
「部活中に倒れたのよ。軽度の熱中症だったからまだよかったけど無理はしないように。」
すっかり暗くなった空とお腹が空いたと嘆くなのは。
早く帰らなければいけないが身体が重い。
色々考えていると顧問が保健室に入ってきた。
「天海、調子はどうだ?帰れそうか?」
まだしんどいです。そう答える。
「先生今から帰るから駅まで着いていくよ。」
「霜田先生ー、お腹すきましたー!」
なのは、お詫びになにか奢るから静かにして。
「花咲、食べ過ぎるなよ?ほら、早く帰ろう。」
なのはと顧問に支えてもらいながら駅へ向かう。
霜田先生、今日はすみません。これからも頑張ります。
「無理したらダメだよ。大丈夫、って言ったのに倒れるなんて。」
顧問は口調も体育会系、という感じだが実はとても優しい人だ。
「霜田せんせーは彼氏とか居るの?」
なのはが突拍子もないことを言い出す。
なのは、やめなよ。先生困るでしょ。
「そうだなー、今も過去も居ないな。独身貴族っていうやつだね。」
先生、答えなくて良かったんですよ。そう慌てて言う。
「私はね、夕希のことが好きなんですー!」
「そうだろうな笑見ていたら分かるよ」
なのは、先生やめてください…。
そんな他愛もない話ができる時間がとても幸せだ。
幸せだと思える時間もそう長くは続かない。
これが現実らしい。
「ちゃんとまっすぐ帰れよ!また明日な。」
ありがとうございました。おやすみなさい。
「またねー!」
最寄り駅に着き先生と別れる。
なのは、どうする?ご飯食べてから…
「どうしよっか。帰りたくないしな。」
沈黙が流れるまま、電車が来た。
このままどこかへ行けるなら
このまま―