5話
鞄を持ち、なのはの席へ向かう。
課題とかやばいよねー、絶対終わらないよ。
「絶対やらない。絶対嫌だ。」
やらないと三者面談だよ?
「やめて、言わないでー!」
まぁ、頑張ろ!一緒にやればいいじゃん。
「そうだね。ところで今日は部活?」
うん、なのはも部活でしょ?頑張ってね。
「じゃあまた部活終わりに。」
そんな会話をして各々部活に行く。
私は陸上部、なのはは吹奏楽部。
お互いにハードだ。
部室に行き、体操服に着替える。
まだ濡れている髪が体操服に滲む。
ベリーショートでよかったと思う。髪が長かったら濡れすぎて体操服が透けそうだ。
軽くウォーミングアップをして、グラウンドを一周走る。
暑く照り返す日差しはいつもより体力を蝕んでくる。
「天海ー、しっかりしろよー」
顧問の声が聞こえる。顧問はあの体育の先生だ。
言われなくてもしっかりやってます。そんなことを思いながら走りきった。
「天海、大丈夫か?いつももっと早く走れてただろう。体調でも悪いか?」
顧問にそう聞かれる。
確かにいつもより息切れが激しい。だがそんなことは関係ない。
走る、ただそれだけが私にできることなのだから。
大丈夫です。そう顧問に告げ、練習に向かった。
走って、走って。もっと早く走れ。
自分に追い打ちをかける。
長距離を走るのは少ししんどい。だが、走りきったときの達成感は自分を成長させてくれる。
吹奏楽の練習が聞こえてくる。
なのはのクラリネットの音色。
あれほど綺麗な音色は他にないだろう。
音が頭の中でこだまする。綺麗な音が電流かのように流れる。
「天海!」
「夕希?大丈夫?!」
誰かの声が私の名を呼ぶ。
その声もすぐに聞こえなくなってしまった。